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自己再生なんて、ぜんぜんギフトじゃない!  作者: 氷見野仁
第2章 『ドライアドの秘密』
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第53話 地球

「喚くな!」


 パァンと、頬を叩く小気味良い音が響く。ゼータは逃げられないことを悟る。


 ここで死にたくない。絶対に死にたくない。嫌だ、嫌だ、今まで洗脳されても、組織のために頑張ってきたのに。ドライアドと対峙しても生き残っていたのに。嫌だ。嫌だ。助けて、助けて。誰か。誰か。


「では、行ってらっしゃい」


 シャオロンは嫌らしい笑みを浮かべ、装置に発生した渦へ、ゼータを投げ込む。


「シャオ、絶対に、絶対に殺してやる! 殺してや……」


 シュウウウと渦に吸い込まれ、声は聞こえなくなる。長官は、装置を止めた。


「最後、なにか言っておりましたな、長官。殺してやる、とかなんとか」


「ははは、そうだな。是非生き残って殺してほしいものだ。いやあ、海の中、血の匂いで寄ってきた獰猛な生物や獣に生きながら食われるところも見てみたかったところだが」


「それは求めすぎでしょう、ホホホ、ホホホホホホ」


 ウィンと、ふたりは装置のある部屋から退出する。部屋は何も起こらなかったかのように静けさを取り戻す。彼らの後、清掃用アンドロイドだけが、黙々と仕事をしていた。


 ◆◆◆


「ジェイドとゼータが、殉死……!?」


 アルファは長官から一報で報告を受ける。ドガァ、目の前のテーブルが爆ぜた。


「ッッックソがぁぁぁぁぁぁぁ!!!! オリエストラ、許せねえ。絶対に潰してやる……!」


 アルファの拳から、煙が出る。


「次の遠征は、俺単体で行くことを真面目に考えるか……」


 ◆◆◆


「……てやる! 殺してやるああああああああああああ!」


 ここは、オリエストラの東の海、遠洋。オリエストラ沿岸から、距離にしておよそ5000キロメートル。


 島もなにもない。ゼータは浮遊感を感じ、(のち)ドボンと海へ入水する。傷口に海水がしみるはずだが、もはやそれ以上の痛みなのでなにも感じない。


「がほっ、ごほっ、がっは!」


 なんとか海面から顔を出し、その場に浮く。空が暗く、正確な時間はわからないが夜であることはわかる。血が、自身のいる場所の周囲を赤く染め上げる。その匂いに反応して、どう猛な肉食哺乳類や、魚類、そして獣が近寄ってくる気配を感じる。


 【自縄他縛(テイム・タイム)】を使っても、操れるのは獣のみ。しかも時間制限もある。カテゴリー4や5が来たらひとたまりもない。ゼータは命を諦め、仰向けになり空を見上げる。


「あー、綺麗だ……空気が澄んでるんだな、ハハッ」


 星を見て、生きたまま食われるであろう自分から現実逃避をする。そうやって空を眺めていると、ある星が目に入った。その星は、そこにあるはずのない星だった。


「なんで……?」


 さまざまな要素が、彼の中で繋がる。


「ははは、はは、そっか、ここ……」


 彼は、泣き笑いながら、自身のいる場所を、オリエストラのある場所を、(つぶさ)に感じ取った。



「ここ……月だったのか……」



 夜空には、昔なにかの本で見た姿そのままの、青々とした地球が威風堂々と、佇んでいた。


 そして。


 彼は地球を眺めていて気づかない。周囲に寄ってきていた海洋生物や獣が、すべていなくなっていることを。海から顔を出した巨大な海蛇が、中空から彼を見下ろしていたことを。彼は、気づかない。


 第2章 『ドライアドの秘密(むすめ)』 完

現在、同時連載中のVRMMOコメディ作品『俺だけ持ってるゴースト特攻!? 〜最強退魔師(自称)はゲームでもゴーストから逃れられない〜』が伸びており、しばらくこちらに注力する+3章を書き溜める必要があるので、二週間から一ヶ月ほどお休みをいただきます。その後、3章を再開という形にさせてください。期間がかなり開くので、一旦完結済にします。こちらの都合でお待たせして申し訳ありません。


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