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自己再生なんて、ぜんぜんギフトじゃない!  作者: 氷見野仁
第1章 『交わる世界』
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第12話 逆神隠し

「おうフロウ、初めての受付業務はどうだ」

 

 エリックは今日の業務も終わろうとしているころ受付へと顔を出す。フロウを観察したいがために。


「おや、ボス。どうしたんですかわざわざ」


「なに、仕事ぶりを見てやろうとちょっと顔だしただけじゃねえか。部下の仕事ぶりが気になるのが社長ってもんだろ?」


 エリックがぬけぬけと思ってもないことを言うと、フロウもそれがわかっているのだろう、軽く笑いながらエリックと会話する。


「ハハハ、あっしは大丈夫ですよ。あっしはね。......あっしのことを知らない人はただの受付だと思ってましたけど、あっしのこと知ってる人たちはビビリちらしてましたよ。それはそれは面白かったですね」


「それはなによりだ。なにか変わったことは?」


「特には。正直一日中ここに座っているのはキツイです。いくら外に出たくなかったからってここに座って訪問者や会社の人間を相手にするのは相当骨が折れる。ラビ嬢を尊敬しますよ」


「そうだな、自分の娘ながらよくやってる。そのよくやってる、を外界へ向けてくれると父親としてはありがたいわけだが」


 そうエリックは言いながらため息をつく。父親なりに娘の心配をしての今回の行動である。クロンに興味を持ったのは当然だが、渡りに船だと娘を焚きつけて外へ向かわせたのも事実だ。同年代の人間が入ってくる。それなら娘は世話焼きだから、必ずそいつの世話を焼くだろう。行きたくない外界にもしぶしぶ着いていくくらいには。


 できれば今回の遠出でもう一度昔のような熱量を取り戻してくれれば、そう思いつつ、エリックはクロンの話へと話題を転換させた。


「ところで、クロンのことだが……」


「例の彼ですか?」


「ああ、一通り調べたんだが、どうにも記録がないんだ」


「記録、ですか」


「出生記録だ。外区だから記録を残さない人間も多いが、彼が【自己再生】を持っているということは母親がおそらく、20年前の……」


「そうですね。逆神(さかがみ)隠しの被害者ということになる。......なるほど、ならばその親と子供は出生登録を義務付けられているはず。あの時は当時エリックさんがいた会社も何人か保護したと聞いてますよ、あっしはまだ子供でしたから、そんなことがあったなんて知りませんでした。冒険者になってから知ったくらいですからね」


 20年前、街中に突然複数の男女が現れた。そして、そのすべての人間が特定の記憶を失っていた。人間はエピソード記憶と知識記憶があると言われるが、その時に現れた男女はエピソード記憶すべてと一部の知識記憶が欠損しており、残った知識にもオリエストラの学者さえ悩ます内容のものが多数含まれていた。結果として研究者は集団催眠かなにかだと結論づけ、国はその事件をなかったこととした。


 奇妙なことに、断片的に残った知識記憶には多数の戦闘技能が含まれており、その力を使えると判断した都市はその者たちに戸籍を与え、独り立ちするまで冒険者に面倒を見させることとした。エリックはその時駆り出された冒険者のひとりで、当時の状況を知る数少ない冒険者でもあった。その時世話した者は、全員ではないが今エリックの会社で冒険者をやっている。そういったことから、エリックは今回の出来事を奇妙だと結論づける。


「19年前から【自己再生】を持った子供がちらほら出てきた。冒険者と結婚した逆神(さかがみ)隠し被害者も多く結果として彼らの子供達の多くが7歳までに凄惨な死を迎えることになった。その話が伝わって【自己再生】は呪い、だという論調はこの業界では未だ根強いが……話が逸れたな、とにかくその祝福(ギフト)を持って生まれた子供の母親は、全員逆神(さかがみ)隠しで現れた女だ。これは偶然だと思うか? 政府は偶然だと言うが、俺はそうは思わねえ。そうなると、」


「クロンの母親は逆神(さかがみ)隠しの被害者、そういうことですね?」


「ああ、だから戸籍があるはずなんだ。あいつにも、母親にも。だが、それがない。これがなにを意味するかわかるか?」


「はあ、あっしには、なんとも」


逆神(さかがみ)隠しは都市外でも起きていた、というのはどうだ?」


「まさか!」


 フロウは驚愕する。都市内に現れた人数でも相当なものだ。これが外界にも及び、そのほとんどが認知されていないとしたら……。これは怖いことだ。エリックはさらに続ける。


「クロンの父親が冒険者だったというのは聞いたな? ゲートを通る際、冒険者さえ同行していれば他の身元は調べられないし、出た時と帰ってきた時の人数差などゲート管理局の奴らはロクに気にしてない。そうなると、」


「外界に現れた女性を都市内まで連れて帰った人がいて、しかもその世話をした冒険者が存在する? 誰です、それは」


「そこまでわかったら苦労はしない。兎も角あいつはなにかある。もう子供じゃないから大丈夫だと思うが可能な範囲でいい、目を離すな。ただ、このテストに合格すればあいつは晴れて所属冒険者になる。詰めたりせず他と同等に扱え。道を踏み外さないようにしっかり冒険者のいろはを教育するんだ。これは社長命令だ、いいな」


「御意。しっかりと育成しますよ。新しい光輝く若い芽だ。摘むのではなく、育てて大きくするのが我々の役目、ですよね?」


「そうだ。フロウ、お前は若くして俺の右腕になるほどに強いが、しかしお前自身もまだまだ青い。彼を育てると同時になにかを彼から得て、お前自身がもう一皮剥けることも俺は期待してるぞ」


「ははは、善処しますよ」


「頼むぞ。あのふたりが帰ってきたら報告してくれ。よっぽど変なことに巻き込まれていなければ、そろそろ帰ってくるはずだ」


「わかりました。では業務に戻ります」


 フロウの受付業務は、まだまだ続く。


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