煙突掃除をしてみよう
今日は午後から職安で紹介されたお仕事の第1弾、煙突掃除に行きます。
ルナもお手伝いすると言って、一緒に来ています。
私もルナも昨日は遅くまで食堂の手伝いをしていたので、今朝は10時まで寝ていました。まあ良く寝たので体調は万全の状態で、お仕事先に向かっています。
「マヒナお姉ちゃん、このお山にのぼるの?」
「う〜ん、ルナにはちょっと大変かも。飛んで行っちゃおうか?」
「とびたい、とびたい、お姉ちゃん、とんでいっちゃおうよ」
ルナの目がキラキラしてる。素直な子に育ってるなぁ。
私はウサちゃんリュックの中から、霊体感応素材のバスタオルを取り出した。
ルナがウサちゃんリュックを背負って、私の背中にバスタオルをかけ、それ越しに私におぶさる。
バスタオルの端をしっかりと私の首に絡めて準備OKだ。
「しっかりと掴まっててね、ルナ」
「うん、だいじょうぶ、お姉ちゃんレッツゴー」
レッツゴーなんて、どこで覚えてきたんだ? マウニおばさんかな?
「いっくよ〜!」
ヒュウウゥーーーーーーン
「すごいよ、マヒナお姉ちゃん、たかい! はやい!」
ルナ、大興奮だね。
「あっというまについちゃったね」
もっと飛んでたかったんだろう、ルナはちょっと残念そうだ。でも、命綱がバスタオル1枚だけだからね。何か他の方法も考えてみよう。
ともあれ、目的地には到着した。
「しかし大きなお屋敷だね、ルナ」
ルナは私の言葉には答えずに、唖然とした顔でそのお屋敷を見上げている。
それもそのはずで、ここはモーント街の御領主様のお屋敷なのだ。モーント街一のお金持ちの豪邸なのである。
チュプさんも最初のお仕事から、思い切った事をしてくれたもんである。
そのクンネチュプさんから、話しかけられた。
「こんにちわ、マヒナさん、ルーさんも一緒にいらしたんですね」
「こんにちわ、チュプさん。チュプさんも来てくれたんですね」
「ええ、気になってしまって、今日は終わるまでご一緒しますよ」
「こんにちわ、チュプさん、ルーもおてつだいするんだよ」
「それは凄いですね。頑張って下さい、ルーさん」
ルナが得意満面な様子で胸を張る。やる気スイッチマックス状態だ。
門の呼鈴を鳴らすと、門のすぐ近くの門番小屋から一人の若い門番が出てきて来訪の理由を尋ねた。チュプさんが、丁寧な対応で仕事にきた旨を伝えると、門番は予定を確認し、門を開いて屋敷まで案内してくれた。
門から屋敷までもかなりの距離がある。
庭には二人の庭師が仕事をしている。手入れの行き届いている庭は大変美しく、屋敷の主人のこだわりが感じられた。
屋敷の呼鈴を鳴らすと、一人の老執事が出てきて、門番の男と案内を代わった。
門番は門の方に戻っていき、老執事の案内で屋敷内に通されるところだったが、それよりも早く身なりの良い貴族服を纏った男性が玄関まで出てきた。
「旦那様、煙突掃除の方が参られました」
老執事に旦那様と呼ばれた男、年は確か40代の後半だったと記憶していたが、30代と言っても通用するような生気に満ちた顔だ。
髪は金髪で、ビシッと撫で付けられたオールバック。身長は180センチを超える、私でも知っている男。
このモーント街の領主、セイアッド=ムーン子爵だ。
「いやあ、よく来てくれたね。暖炉から嫌な臭いがして困っていたんだ。今日はよろしくお願いするよ」
物腰が柔らかい。貴族は大抵嫌な奴が多いので身構えて来たんだけど、ちょっと拍子抜けした。
「お父様、わたくしもえんとつそうじが見たいと言っていたでしょう。ぬけがけはズルイですわ」
屋敷の奥から、パタパタと可愛らしい女の子が小走りで現れた。領主をお父様と呼ぶのだから子爵令嬢だろう。金髪の巻髪で如何にもなお嬢様だ。
「あれ、ミーちゃん? ここ、ミーちゃんのおうちなの?」
「「えっ!」」
私とチュプさんが同時にルナを見ながら驚いた。
「あら、ルーじゃなくて、まさかルーがそうじするわけではないでしょうね」
「ルーはおてつだいだよ、おそうじはね、マヒナお姉ちゃんがするんだよ」
「ルナ、あんた領主様のお嬢様のこと知ってるの?」
「がっこうのお友だちだよ、ミーちゃん」
領主様に話しを聞くと、特別な育て方をしたくないので、普通に庶民の学校に通わせているらしい。思っていたよりもずっと庶民派の領主だった。
娘さんの名前はミーシャッィ=ムーン。
ルナとミーシャの学校は今は夏休み中なので、ミーシャも家にいたのだった。
妹と娘が友達だった事で、仕事の前に領主と少し話しをすることになった。
話してみると、本当に貴族らしくない気さくな人で、堅苦しい話し方も嫌いだという事なので、私も失礼にならない程度で普通に話す事にした。
領主は、私がウィルオウィスプになった経緯が気になったみたいなので、話せる範囲でその経緯も説明した。ルナとミーシャ、チュプさんも話しに加わって和やかな雰囲気で話しは続いていた。
「おっと、私達はそろそろ煙突の掃除を始めないと」
「そうだったな、マヒナから色んな話しを聞けて楽しかったよ。私達親子も煙突掃除を見学したいのだが、大丈夫かな?」
「ええ、全然構いませんよ、見ていて面白いかはわかりませんけど」
私達は先ず最初に裏庭に移動した。庭師の親方とも相談して決めた場所に、土魔法で大きな穴を掘った。
そして屋敷の暖炉のある居間に移動する。
チュプさんも手伝ってくれるというので、5つのバケツに水を汲んでおいてもらった。
ルナもそれを手伝っていたけど、何故かミーシャも手伝っていた。
私も風魔法でバランスを取りながら、バケツを移動する。
領主の屋敷にはバケツが沢山あったので、最終的には合計で10個のバケツとタライを1つ用意出来た。これだけあれば準備万端だ。
最後にルナがウサちゃんリュックから、古い毛布を取り出して準備は終了する。
「じゃあ、ルナはしっかりと毛布で暖炉の口を、塞いでおいてね」
「はい!」
うん、相変わらずの良いお返事だ。
「領主たちは、庭からみていた方が面白いかもしれませんよ」
私のその言葉で、ルナ以外はみんな庭に移動した。
私は暖炉の煉瓦を通り抜けて、中に入る。
「じゃあ始めるよ、ルナ、しっかり押さえててね」
「わかった〜、おさえたよ〜」
良し、先ずは風魔法でホコリを吹き飛ばす。竜巻のような風を発生させて、ホコリを吹き飛ばしていく。
「「「おお〜」」」
暖炉の煙突からホコリの竜巻が吹き上がり、庭から歓声が上がる。
次は拭き掃除だ。ルナに5個のバケツと食堂掃除でも使ったルナお手製モップを2つ、暖炉の中に入れてもらった。チュプさんもいつのまにか庭から戻って手伝ってくれる。
「次いくよ〜、ルナ、押さえてて〜」
「おさえたよ〜、お姉ちゃん〜」
私は水魔法で水の渦を作り、煙突の内側を掃除していく、それを追いかけるように同時に風魔法でお手製モップを回転させて、煤を削ぎ落としていく。
煙突の煤が落ちたら濯ぎに取り掛かる。
残りのタライとバケツを暖炉の中に入れてもらって準備OK。
「ルナ〜、もう一回いくよ〜」
「だいじょうぶ〜、おさえてるよ〜、お姉ちゃん〜」
最初と同じような竜巻を今度は水で発生させる、水魔法と風魔法を同時に使った水竜巻だ。水竜巻の上昇に合わせて、私も一緒に上昇していく。
「「「おお〜!」」」
再び庭から歓声が上がる。
水竜巻と共に上昇していく私の進路に、鳥避けの金網があるが、そんなもので私の進路は塞げない。私は全ての物質をすり抜ける事が出来るのだから。
煙突掃除を始めてから、私はずっと煙突の内側にいるが、少しも汚れていない。
ホコリや煤も私の身体をすり抜けているのだ。
水竜巻と共に屋敷の上に出た私は、水魔法をコントロールして真っ黒になった水を、最初に掘った裏庭の穴に捨てる。
そして土魔法でその穴を埋めた。
後は乾燥だけである。
「ルナ、後はもう大丈夫だから、バケツを片付けてくれる?」
「はい、ルーはおかたずけするね」
本当にルナは素直で良い子だね。
私は仕上げに火魔法と風魔法を複合させた、熱風の竜巻で、煙突内を乾燥させた。
このところの魔法の練習の成果を発揮して、煙突掃除は滞りなく終了した。
「いやあ、凄いもんだな。こんなに魔力のコントロールに長けた魔法使いは、私も見たことがないよ」
領主がしきりに感心していた。
「またお願いするよ、いや、冬場には定期的にお願いしたい。今後ともよろしく頼むよ」
「喜んでいただけて、良かったです。またよろしくお願いします」
「マヒナさん、わたくしにもまた、まほうを見せて下さいね」
「うんいいよ、いつでも見せてあげるよ」
ミーシャにも気に入ってもらったみたいだ。この子も一見ツンケンしてそうだけど、実際には素直な良い子だな。
チュプさんにもお礼を言って、私とルナは家に帰った。ルナはまた飛んで帰りたがったけど、ちゃんと歩いて帰りましたよ。
ーーーーー[次回予告]ーーーーー
死んじゃったけど魔物に転生して蘇った私。
幽霊じゃないですよ、ウィルオウィスプなんです!
煙突掃除で知り合いになった、この街の領主に清掃の仕事を頼まれました。その仕事はなんと、池の水を抜いて池を清掃するという一大プロジェクトだったのです。
次回[池の水を全部抜いてみよう[前編]]
ちょっと大丈夫、この池大き過ぎない!
誕生日投稿スペシャル、14時台の投稿です。
この作品としては本日9回目の投稿となります。
活動報告に書いた投稿予定まで何とか時間内に間に合いました。疲れたのでちょっとだけ休憩しようと思います。
15時までに次の投稿分、書き上がるかな?
【作者からのお願いです】
読者様からの反応を何よりの励みとしています。
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お手数だとは思いますが、何卒宜しくお願いします。