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8/17

食堂を手伝ってみよう

 昨日はセレネの奴に付き合わされて、2日連続で森に連れて行かれてしまった。

 途中で、初心者パーティーが仲間にヒールをかけているところに出くわしてしまって、危うく召されそうになってしまった。

 魔法の練習にはなったけど、当分森には行きたくない。


 今日はマウニおばさんに頼まれて、下の食堂を手伝う事になっている。

 お昼から団体の予約が入ってるらしく、出来ることだけでいいからと頼まれたのだ。


 ハンカチ越しに物を掴むことにも大分慣れてきたので、手伝えることはあるだろうからね。


「よ〜し、ルーもがんばるよ〜!」


 で、隣でルナが気合いを入れている。

 私がマウニおばさんに頼まれるのを聞いていたルナは「ルーもおばちゃんのおてつだいする」と直訴したからだ。

 ちょっと気合いが入り過ぎてて心配だけどね。



「マウニおばさん、フロアーの掃除は私とルナがやるから、バケツだけ用意してくれる?」


「おいおいマヒちゃん、おめえ物が掴めねえのに掃除なんて出来んのかい?」


 マウニおばさんは何故か男性みたいな言葉使いで話す。一人称もオレって言うし、今はもう慣れたけど初めて聞いた時には驚いた。


「こういう客席みたいに、物が少ないところならね。ルナはこないだ作ったお手製モップを持ってきてくれる?」


「わかった、ルー、もってくるね」


 お手製モップとは、私が指示しながらルナに作ってもらった物で、いくつかのモップの棒を外して、それを紐で結んで纏めた物だ。


 ルナは自分が作ったお手製モップの出番とあって、喜んで取りに行った。



「もってきたよ、ルーの作ったモップ、もってきた〜」


「じゃあおばさん、二つのバケツに水を入れてフロアーに置いてくれる」


「おうよ」


 水の入ったバケツ二つとお手製モップ三つがフロアーに置かれた。


「これで準備はOKかな、あ、リュンヌもちょっと手伝ってくれる?」


「了解だっぺよ」


 リュンヌの言葉使いも相変わらず変だ。変わった母娘である。


「じゃあね、ルナはお手製モップを水に浸けてから、そのままバシャっと床に置いちゃって。

お手製モップが動き出したら、たまにモップの前に水をかけるんだよ」


「わかった。ルーは水をかけるかかりだね」


「そうそう、水は少しづつかけてね」

「リュンヌは水を絞ったモップを床に置いて。それで汚れてきたら濯いでの繰り返しでお願い」


「了解だっぺよ、よくわからんけんどやればわかんだべ?」


「うん、やればわかるよ。じゃあ始めるね」


 私は複数の風魔法を同時に使って、机と椅子を宙に浮かせる。そして天井近くまで上昇させてそれをキープする。

 続いて3つの風魔法を発動すると3つのお手製モップが回転を始める。

 一つ目のびちゃびちゃのモップが汚れを落とす。ルナがそれについて歩いて水を足していく。


「ルナ、ちょっと水が多いよ、もう少しゆっくりかけて」


「わかった〜」


 二つ目のモップは水拭き用だ。


「マヒナはん、絞るから回転止めて」


「了解!」


 それらの後ろから三つ目のモップで乾拭きしていく。床がみるみる内に綺麗になっていく。


「おお〜、器用なもんだな〜、マヒちゃん」


「ごめん、おばさん、集中してるから話しかけないで」


 集中が切れたら机と椅子が落ちてしまう。なんとか集中を保って、10分後には床が見違える程に綺麗になった。机と椅子を着陸させて、無事にフロアーの掃除が終了した。


「いや〜、凄いもんだな、マヒちゃん。あっという間に綺麗になったぜ」


「水魔法も同時に使えたら、一人で出来るんだけどね。まだ、そこまでは難しいのよ」


「いやいや、大したもんだ、オレこんなの初めて見たわ、またお願いしていいかい?」


「いつでも言ってよ、手伝うから」


「マウニおばちゃん、ルーは?」


 モップを片付けながら、ルナがおばさんの目を見る。褒めてもらえると思って、その目はキラキラしている。


「おう、ルナちゃんも大したもんだ。そんだけお手伝い出来ればもう立派なお姉ちゃんだな」


「えへへへ〜」


 ルナがニコニコしてる。嬉しくってしょうがないって顔だな。


「それじゃ、マヒちゃんとルナちゃんはちょっと休憩しててくれ、オレとリュンネは料理の準備するからよ」


 今の私とルナでは、料理に関しては大した手伝いは出来ない。ちょっと疲れたし、お言葉に甘えて休憩することにした。


 休憩を始めて直ぐにルナは寝てしまった。張り切り過ぎちゃったかな。



 休憩の間の約1時間、ルナは一度も起きて来なかった。そろそろ休憩時間は終わりの筈だ。


「マヒルナ〜、そろそろお客さん来るから、降りてこ〜い」


「名前を繋げないでよ、おばさ〜ん」


 2階から大声でツッコンでしまった。

 マヒルナって、なんか昼間っからダラっとしてそうな響きがあるな。


「ルナ、ルナ」


「うう〜ん、マヒナお姉ちゃんどうしたの?」


 う〜ん、ちょっと寝ぼけてるな。


「どうするルナ、まだ寝てる?」


「う、う〜ん、・・・うん、そうだ! おてつだいだ! ダメ! おきる!」


 ルナがカッと目を見開いた。まだまだやる気充分みたいだね。

 覚醒したルナと一緒に食堂に降りると、すっかり開店準備は整っていた。あと5分で開店である。


「奥のテーブルを繋げてあるとこが予約席だ。まあ予約は1時からだからそれまでは普通に営業するだけだがな」

「フロアーは二人に任すから、上手いことやれよ」


「任しといてよ、マウニおばさん」


「ルーもがんばるもん」


 そして開店時間の12時になった。


「「いらっしゃいませ〜」」


 そこからは姉妹の素晴らし連携プレーが続いた。


 お客さんが来ると、私が注文を聞きに行き、ルナはメモ帳を持ってついてくる。

 ルナがテーブルの上に置いたメモ帳に、私がお客さんの注文を霊体感応素材のペンで書くと、ルナがそのメモを厨房に持っていって渡す。


 料理が出来上がれば、私が霊体感応素材のハンカチを使って、テーブルまで運ぶ。私の身体はなんでもすり抜けるので、料理さえぶつけなければどこでも通れるし、空を飛んでるので、自由自在に動けるのだ。


 お客さんの食事が終われば、ルナが空いた食器を下げに行く。ルナも小さいので、割とどこでも通れる。


 下げられた食器は、隙を見つけて私が風魔法と水魔法を駆使して洗う。時間があれば火魔法で乾燥まで終わらせてしまう。


 お会計はルナが受け取り、私が計算して、ルナがお釣りを渡す。


 一連の作業が流れるように進み、またそれを繰り返す。


 姉妹ながら、絶妙な連携プレーだった。


「ふう、一息ついたな。やるじゃねえかマヒルナ、大したしたもんだ」


「だから、名前を、くっつけないでよ」


「後は予約のお客さんだけだな、ルナちゃんは疲れたんじゃねえか?」


「つかれてない、ルーはまだおてつだいする」


「そうか、ならもうちょっとだから頑張れ」


「うん!」



「「「こんちわ〜!」」」


「来たようだな「「いらっしゃいませ」」」


「おや、マヒナさんにルナちゃんも、今日はお手伝いかい?」


「うん、ルー、おてつだいだよ、おっちゃん」


 予約のお客さんは、近所の商店街の面々で全員顔見知りだった。


 予約なので、特別な注文などはない。私は料理を運ぶことに集中した。ルナはおっちゃん、おばちゃん達にアイドル並みの人気で、終始場を和ませていた。


「「「ありがとうございました〜」」」


 商店街の人達も帰り、後片付けをしていると、ルナがテーブルにつっ伏して寝てしまった。


「ごめん、リュンネ、ルナを上まで運んでくれる?」


「あらら、寝ちゃったねや、ルーも頑張っとったねやね、わらすが運んだるっぺよ」


「マヒちゃんも上がっていいぜ、オレらは夜の仕込みがあるからな」


 これからまだ仕込みか、おばさんも、リュンネもタフだな〜。

 この店は夜には冒険者相手の居酒屋のようになる。閉店時間は夜の10時だ。


「ついでだから夜も手伝うよ、マウニおばさん」


「わりいけど、甘えて手伝ってもらおうかな」


 結局、今日は最後まで手伝うことにした。最後にはルナも起きてきて、ちょっとだけ夜も手伝いました。


ーーーーー[次回予告]ーーーーー


 死んじゃったけど魔物に転生して蘇った私。

 幽霊じゃないですよ、ウィルオウィスプなんです!


 職安に仕事を紹介してもらった。職安経由の初仕事に気合いを入れて向かったら、着いたのはなんと大きなお屋敷だった。

 最初っからハードル高くないか!


 次回[煙突掃除をしてみよう]


 お姉ちゃん、ルーもおてつだいがんばるよ!




 誕生日投稿スペシャル、13時台の投稿です。

 この作品としては本日8回目の投稿となります。

 やっと午後、先は長いなあ



 【作者からのお願いです】


 読者様からの反応を何よりの励みとしています。

 ポイント評価、ブクマ登録、感想、レビュー、誤字報告を頂けますと、創作意欲のより一層の向上に繋がります。

 お手数だとは思いますが、何卒宜しくお願いします。

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