素材採取をしてみよう
今日は水魔法の練習をする予定だったんだけど、セレネが来て「家の中じゃ出来ないんだから、どうせなら街の外まで行こう」というのでやって来ました森の中。
「え〜と、セレネさん、なんで森まで来てるのかな?」
「いいじゃない、どうせ暇なんでしょ。あたいの魔物討伐に付き合ってよ」
「暇じゃないわ!」
まったくコイツはいつも、いつも。
「どうせあんたは無敵なんだから大丈夫でしょ」
「無敵じゃないわ、聖属性魔法で簡単に召されちゃうわよ!」
「聖属性使う魔物なんて滅多にいないやん、聖属性使いのいないパーティーなら無敵やん」
「やんってなんだ、やんって!」
セレネの言い分もわかるけど、聖属性で即終了って怖いんだよね。
戦闘系の事は、ゲッカに頼んでる[霊体感応素材]で作った対聖属性防御特化服を手に入れてからにして欲しかった。
カタログには載ってたんだけど、在庫がなかったんだよね。100万ゴールドもする品だけど、背に腹はかえられないので注文しました。
まあいいか、街の外で試してみたい事もあったしね。そんなわけで条件を出してみる。
「私の素材採取を優先してくれるなら、手伝ってもいいわよ」
「へ、素材採取? あんた採取する素材に触れないでしょ」
「霊体感応素材で作られたハンカチと万能ナイフを買ったのよ。だからハンカチ越しになら掴めるはずよ」
「それに、最近練習している魔法出力のコントロールで魔力調整が上手くなったんだけど、いっしょにマナの感知能力も上がってるの」
「それってどういうこと? マナ感知能力が上がると何かいいことあるの?」
「セレネみたいな脳筋にはわかんないだろうけど、大抵の素材って特殊なマナを出してるのよ。だから、感知したマナから特殊なの探していけば素材がみつかんのよ」
「脳筋って何よ? 何かの能力? やっぱあたいって凄いのか!」
う〜ん、馬鹿だ馬鹿だとは思ってたけどね。まさかの大馬鹿だったよ、セレネ。
「あ〜、はいはい、これって特定の魔物の指定討伐依頼じゃないんでしょ?」
「うん、ただの小遣い稼ぎ。適当に倒してギルドに売るだけだけど」
「だったら魔物も私のマナ感知で探してあげるわよ、どうせ情報のない魔物討伐なんて、1日に5体も狩れれば良い方でしょ。3体は確実に狩らせてあげるから」
「えっ、魔物も探せんの? マナ感知って随分便利ね。あたいにもおせ〜て」
「はいはい、そんじゃ行くわよ」
「ちょっと待って、教えてよ〜」
歩きだした私の後をセレネがついてくる。
魔物のマナも特殊だ。なので感知した移動しているマナの中で特殊なのが魔物、それ以外は普通の動物か昆虫ということになる。
その事をセレネに教えてやらせてみたけど、魔法の苦手なセレネは一向に上手く出来ない。
まあ予想してた通りね。脳筋だからね、セレネは」
「ねえ〜、何かあった〜?」
「ゴエダがあったよ〜、採取してみるから、ちょっと待ってて〜」
私は隠密の職業冊子にあったスキル《鑑定》を使用してみた。
ゴエダ。
バドーヂープルの木の枝が特異に変化したもので、頭痛、腹痛に効く薬になる。
高所に有る為に少し厄介だが、特殊な採取方法はなく、ナイフで枝を切るだけで簡単に採取出来る。という説明が私の頭の中に浮んだ。
スキル《鑑定》。非常に便利なスキルだな。
空を飛べる私は、高い所にあるゴエダを見つけてハンカチで包む、それを左手で掴んでおいて右手のナイフで枝を切断する。
バキバキボギバキ
あちゃ〜、バキバキに折れちゃったよ。
掴めるといっても私にはあくまでハンカチの感触しかないので、力加減が難しい。
「うひゃひゃひゃひゃ、あんたこれ、バッキバキじゃん、あははは」
「笑い過ぎよ! ゴエダはどうせ粉にして使うんだからいいのよ!」
売る時には間違いなく買い叩かれるだろうけどね。脳筋のセレネにはわかるまい。
「どしたのマヒナ。急に止まって?」
「この下に素材があるわ、多分ブリッツ芋だと思う」
「素材があったってスコップとかの掘れるものがないじゃん」
「いいからちょっと離れててよ」
私は土魔法で、ブリッツ芋の回りの土ごと地上まで持ち上げる。
地上に土の柱が立ち上がった。土魔法を調整して、その柱からブリッツ芋以外のものを取り除いていく。
あった。やっぱりブリッツ芋だ!
ブリッツ芋
食用としても人気の高い食材で、すりおろした粘り気のある芋をご飯にかけると絶品だ。魔力回復薬の原料にもなる。
スコップ等で回りの土を掘って採取する。傷つける事なく採取された1メートル以上の品は高級品として高値で取引される。
ちょっと折れちゃったけど、ここからは手作業だ。万能ナイフで芋の回りの土や絡んだ木の根を取り除く。
私にはナイフの感覚しかなく、ナイフが木の根や土に接触した感覚がないので、意外と難しい作業だ。油断すると肝心な芋を傷つけてしまう。
「きゃはははひは、ポロポロじゃんこれ、ブリッツ芋じゃなくてズタボロ芋じゃん、あはは」
「笑うな! どうせすりおろすでしょ、この芋は」
人が一所懸命にやってんのに、コイツは。
「マヒナ、あれってガール草じゃない」
「え、あ、ほんとだ、よく見つけたわねセレネ」
ガール草
ポーションは勿論、大抵の回復薬にはこの草の成分が含まれている万能な薬草だ。
真っ直ぐに伸びた細い根が特徴で、その根も回復薬の材料となる。
草と根とは切り離さずに採取するが、根は非常に細い為に注意が必要。また、根の1メートル以上下の部分には毒性が有る為、そこから先を切り落として採取する。
私は土魔法で土ごと根を引き上げる。
ズボンッ
あ、今度は上手くいった。細い根に土は薄っすらと付いているだけで、これなら軽く払うだけで土は取れそうだ。
ガール草の根は1メートル以上下から先には毒素が含まれているので、後はその部分を切り離すだけだ。
やり方は草の部分を柔らかく握って、ナイフで根を切断するだけ。
私はガール草にハンカチを巻きつけて優しく握る。
グシャ
「あっ」
「ひゃあっははは、うひゃあひゃひゃ、グシャっていった、今、グシャっていったよあんた、ひ〜ひひひゃひゃ」
「それにあんた、ひゃひゃひゃ、あって言った、あって言っちゃったよあんた、あひゃひゃひゃ」
殺してやろうかしら、この女!
この日は一日中、素材採取に明け暮れた。魔物もホーンラビット2体にビッグベアー1体、スライムも3体倒した。その場で魔物の解体をするのは面倒だったので、私が風魔法でギルドまで運びました。風魔法の練習にもなるしね。
聖属性魔法の使えない魔物との戦闘では、私は確かに無敵だった。攻撃されても一切ダメージないし、一方的に攻撃するだけの無双状態でした。
最後の方は素材採取も上手くなりましたよ。
冒険者ギルドで換金したら18000ゴールドでした。一人当たり9000ゴールドで1日の稼ぎとしては悪くなかった。
冒険者の仕事もたまにやる分には悪くないかもしれない。
聖属性対策が出来たらの話だけどね
ーーーーー[次回予告]ーーーーー
死んじゃったけど魔物に転生して蘇った私。
幽霊じゃないですよ、ウィルオウィスプなんです!
お世話になっているマウニおばさんの食堂に団体予約が入った。忙しくなりそうで私も妹と一緒に手伝う事になりました。
次回[食堂を手伝ってみよう]
妹に作って貰った新兵器、発進!
誕生日投稿スペシャル、12時台の投稿です。
この作品としては本日7回目の投稿となります。
通算で本日13回目の投稿、このペースだと24回は絶対無理っすね。
【作者からのお願いです】
読者様からの反応を何よりの励みとしています。
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お手数だとは思いますが、何卒宜しくお願いします。