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買い物に行ってみよう

 今日は妹のルナと、冒険者ギルドが非番だと言うのでサクちゃんも一緒に買い物に出ています。


 ルナは元々人見知りをしない子だけど、サクちゃんのことは特にお気に入りで、朝からウキウキでした。

 サクちゃんもルナを可愛いがっていて、面倒も見てくれるので、私も楽が出来て助かります。


「今日は何を買いに行くんですか? マヒナさん」


「なんかね、[霊体感応素材]ってのがあってね、それで作られてる物があるのよ。先にそれを扱ってるお店の場所を知りたいんで、魔物省に寄ってもいい?」


「もちろんです。今日は一日、マヒナさんにお付き合いしますから」


「サクお姉ちゃん、お手手つないでもいい?」


「いいよ、ルーちゃん、はいどうぞ」


「やった〜、ありがとうサクお姉ちゃん!」


「もう片方のお手手は、マヒナお姉ちゃんに繋いでもらったら?」


「う〜ん、マヒナお姉ちゃんとはお手手つなげなくなっちゃったから」


「あっ!」


「そんなにしまったって顔しないでいいよ、サクちゃん。ルナはこんな私も受け入れてくれてるからね」


「ごめんなさい」


「だから気にしないでいいって」


 あまり気にされると、かえってこっちが悪い事した気になるのよね。セレネには少しは気にして欲しいけどね。


 先ずは3人で魔物省本役所の生活環境課の窓口に行き、お店の場所を聞いた。


 ルナは「いろんなまものさんが、いっぱいだ〜」って走り回ってたけど、サクちゃんが付いていてくれた。

 サクちゃんは気配りのできる人で本当に助かる。

 これがセレネだったら、ルナと一緒に走り回ってそうだ。


 窓口で聞いた話だと、この近くに[霊体感応素材]の専門店があるらしいので、行ってみる事にする。


 窓口では、前に私がサインをした時に使った[霊体感応素材]で作られたペンもいただいた。

 窓口の人曰く「もう使う人はいないでしょうし、生活環境課の経費で買った物ですから、遠慮なくどうぞ」だって。

 そんな事でいいのか、お役所さん!

 貰える物は貰いますけどね。


 ともあれ、私達は[霊体感応素材]の専門店に場所を移した。こじんまりとした可愛いらしいお店で、何処と無くファンシーショップみたいな感じの店だ。


カランコロンカラン


 入り口を開けると、来客を告げる鐘の音が聞こえる。こんなとこも、ファンシーショップっぽい。


「いらっしゃいませ、ゆっくりご覧になっていって下さいね」


 店員さんも若くて可愛い女の店員さんだ。

 んっ、あれ、若いのか?

 よく見ると足がない。ゴーストの店員さんだった。


「ちょっと、聞いてもいいですか?」


 私はその店員さんに声をかけた。気になった事を聞いてみたくなったのだ。


「はい、何かお探しですか?」


「あ、探してる物もあるんですけど、その前にちょっと聞きたいんだけど、ゴーストは物質を掴めるって聞いたんだけど[霊体感応素材]って必要なの?」


「ああ、その事ですか。確かに物質を掴めることは掴めるんですけど、意識して集中しないと掴めないんですよ。だから[霊体感応素材]を使う方もいますね。あたしは余り使いませんけど」


「へ〜、そういう事かぁ、でも店員さんは使わないんですか? 意識せずに掴めれば便利じゃないですか」


「お客さんは、このお店は初めてですよね。その辺の商品をちょっと見てもらえばわかると思いますよ」


 店員さんに言われて、私は商品の棚に目を移した。商品は種類も豊富で、用途に応じて棚毎に区分けもされていて探しやすい。

 何よりも、手にとって見れるというのは、今の私には嬉しいことだ。


「こなハンカチなんか良さそうじゃない、柄も可愛いし、えっと、いくらかな?」

「げっ! 高っ! マジで! ハンカチ1枚で7万ゴールド!」


「そうなんですよ、べらぼうに高いんです。[霊体感応素材]で作られた物って」


 店員さんが呆れ顔でツッコんできた。確かに高い。べらぼうに高い。大きめのバスタオルなんて、安いのでも18万ゴールドだ!


「ここだけの話ですけどね、[霊体感応素材]の製法って秘密にされちゃってるんですよ。だからあたしはここで働いて、その製法を盗んでやろうと思ってるわけなんです」


 店員さんに小声で耳打ちされて、私は静かに頷いた。製法を店員が盗むというのは良くない事に聞こえるが、これだけの暴利な商品だと私も頷くしかない。


 だけど、全く物が掴めない現状の私には、製法の秘密を待っている余裕などあるわけがない。


「ところでさ、手袋ってある?」


[霊体感応素材]の手袋をしていれば、他の物を掴むことも出来る筈なので、是非ともゲットしたいと考えている。


「手袋ですか、欲しいですよね。手袋は注文生産なんですよ。カタログ見ます?」


 店員さんが差し出したカタログに、私は驚愕することになる。


「一番安いので5000万ゴールド! 豪邸が建つわ!」


 モーントの街は大きな街の割に土地の価格が安い。普通の土地付きの新築の家で1200万ゴールドから1500万ゴールドで建てられる。5000万ゴールドは豪邸の値段だ。


「マヒナお姉ちゃん、このウサちゃんのついたペンかわいいよ」


「マヒナさん、このウサギの耳のついたバッグも良いと思います」


「二人とも、値札を見てみて」


 サクちゃんが価格を知って、目を見開いたまま固まってる。ルナはキョトンとしてるわね。値段の事はまだわからないか。


「マヒナお姉ちゃん、かわないの?」


「うん、どれも高いから、ペンとバッグは買わないよ。貰ったペンとウサちゃんリュックがあるでしょ。買う物は必要最低限の物だけにするわね」


「かえしてくる?」


「ごめんね、元のところに戻してくれる」


 ルナが残念そうに元の場所に戻しに行く。

 買ってあげたいけど、高すぎるので仕方がない。


ドンッ


「あ、ごめんなさい、ルー、ぶつかっちゃった」


「大丈夫よ、おばちゃんこそ、ごめんなさいね」


「おばちゃんじゃないよ、お姉ちゃんだよ」


「あら、嬉しいわ、可愛い子ね」


 ルナが誰かとぶつかったみたいだ。私は慌ててルナの元に向かう。


「すいません、妹がぶつかったみたいで」


「あら、マヒナさん」


「え、あれ、チュプさん?」


「偶然ですねぇ、あ、でも、ここの物はマヒナさんに必要な物ですものね」


 ルナがぶつかったのは、職安の職員でスケルトンのクンネチュプさんだった。


 話をすると、チュプさんも今日は非番で、私の仕事に使える物がないか、この店まで見に来てくれたらしい。本当に良い人だな、チュプさんは。


 それにこの人は思った通りのお洒落さんだ。

 私服もメチャクチャ可愛い。ちょっとゴスロリっぽいけどね。


 しかし、何でリボンの棚を見ていたのかは謎だ。髪の毛ないのに、何故か髪関係の物に反応する人だな。


 私はこの店で、ハンカチ3枚とバスタオル1枚、それに小さな万能ナイフを1つ買った。


 ハンカチは手袋の代わりに使う予定でいる。ハンカチでくるんで小物を掴むのだ。


 因みにこのお店に縫製する前の布地は売っていない。店員さんの話では、ハンカチを生地として別の形に縫製、例えば手袋の形に縫製すると霊体感応機能は失われてしまうのだと言う。

 一体どういう理屈でそうなるのかはサッパリわからないので、製法自体を解明する決意をしたのだとか。店員さんの気持ちはすごくわかるな。

 そんなわけでハンカチ3枚で代用する事にしたのだ。バスタオルも同じ理由で、こちらは大物用ということである。

 万能ナイフは有ると便利だと店員さんが教えてくれたので付け加えた。

 

 結構な出費となってしまったけど、仕方がないと割り切るしかない。


 店員さんは買った物と一緒に、この店の商品カタログもウサちゃんリュックに入れてくれた。

 この商品カタログも[霊体感応素材]で出来ているけど、無料で配ってるらしい。

 価格の基準が全くわからん。


 ゴーストの店員さんはゲッカという名前だった。良い商品(霊体感応素材の製法も)が入荷したら、魔通で教えてくれると言ってくれたので、魔通番号を交換した。


 帰り際に、さっき魔物省で頂いたペンと同じ物が売っていたので価格をチェックしてみる。ご、5万ゴールド・・・。

 こんな高価な物を私のサインを貰う為だけに経費で購入したのか! お役所恐るべしである。


 この後は、チュプさんも合流して、4人で普通のショッピングを楽しみました。

[霊体感応素材]専門店で見つけたのと同じようなデザインのウサちゃんペンを発見したのでルナに買ってあげました。価格は150ゴールドでしたよ。

ーーーーー[次回予告]ーーーーー


 死んじゃったけど魔物に転生して蘇った私。

 幽霊じゃないですよ、ウィルオウィスプなんです!


 冒険者で家を空ける事の多かった私は、家では妹と遊んであげるようにしていた。ウィルオウィスプになって妹に触れなくなった最近は、余り妹を構ってあげていなかったなぁ。


 次回[妹と遊んでみよう]


 う〜ん、魔力の繊細なコントロールって難しいな。




 誕生日投稿スペシャル、10時台の投稿です。

 この作品としては本日5回目の投稿となります。

 くそ、眠いなぁ。やっぱり寝ちゃおうかな。



 【作者からのお願いです】


 読者様からの反応を何よりの励みとしています。

 ポイント評価、ブクマ登録、感想、レビュー、誤字報告を頂けますと、創作意欲のより一層の向上に繋がります。

 お手数だとは思いますが、何卒宜しくお願いします

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