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魔国のお土産を買いに行こう

 昨夜は魔王さんが、王城近くの宿を取ってくれたので、ご厚意に甘えてその宿で一夜を過ごした。


 ぶっちゃけ私には睡眠も食事も必要ないのだけど、長旅の後だったので宿でゆったりとした時間を過ごしたかったのだ。


 プラは生意気にもベッドを占拠し『中々良いベッドやな』と、偉そうなことを言いながらペニョ〜ンと寝ていた。


 朝になってプラを起こし、王都ディッパーを見物しながらお土産を買いに出かけようとしていた時、泊まっていた部屋のドアが「バタン!」と大きな音を立てて乱暴に開かれた。


「おはよう、マヒナ! さあ、行くわよ!」


 けたたましく部屋に入って来たのは魔王さんのご息女様だった。


「おはようメグレズ、で、行くって何処へ?」


「決まってるでしょう、王都見物よ。妾が案内してあげるわ」


 決まってるって、一体いつ決まったんだか。


「案内するって、メグレズはこの国の王女でしょ。気楽に出歩ける身分じゃないでしょうが」


「アルカイドが一緒だから問題ないわ。そんなことよりも、メグレズって呼ばれるのはなんか嫌だわ。メグって呼びなさい」


 ドアの奥を覗くと、綺麗系メイドのアルカイドさんが控えていた。私の視線に気がつくと、軽く会釈をしてくれた。


「本当にいいんですか?」


「本当は駄目ですよ。しかし言っても聞き分けるお嬢様ではありませんので、黙認してます」


「黙認かよ! 駄目じゃん!」


「駄目じゃない! ほら、早く行くわよ」


 結局はメグに押し切られ、王都を案内してもらう事になった。


 宿屋のフロントでチェックアウト(支払いは魔王国持ち)して宿屋を出たら。


「あねうえ、きょうはぼくたちとあそんでくれるやくそくです」

「メグねえちゃま、やくしょく〜」


 う〜ん、何かちっこいのが二人いるね。


「あ、あちゃ〜、忘れてたわ。ごめんねアリ、ミザ」


 見た目からしてメグにソックリだから、一目でメグの弟と妹だということはわかる。しっかし可愛いなぁ、この二人。


「アルカイドさん、この二人は?」


「メグレズお嬢様の双子の弟君と妹君、アリオト様とミザール様。御年齢は5歳です」


 やっぱりね、って事は。


「どう見てもお付きの人がいないんだけど、近くとはいえ5歳の王子様と姫様が、お城を出て街に来るって」


「絶対に駄目ですね。有り得ません」


 食い気味に答えたなぁ、アルカイドさん。


 その後、メグと双子ちゃんの主張は平行線を辿る。

 約束を忘れていた事は謝ったけど、今日は城に帰るように説得するメグと、あくまでも今日遊んで貰いたい、出掛けるなら付いて行くと主張する双子ちゃん。


 う〜ん、埒が明かないので、私も参戦する事にした。


「ねえ双子ちゃん、変わった乗り物があるんだけど、ちょっと見てみたくない?」


「え、かわったのりもの?」

「なになに?」


 良し、双子ちゃんが興味を示した。


『プラ、お願い』


『ウチの出番やね!』


ピョン、ポヨヨン


 プラがウサちゃんリュックから勢いよく飛び出して、地面に着地する。


「うわ、ぷよぷよだ!」

「しゃわると、ぽよぽよだよ!」


 プラの登場に、双子ちゃんのテンションが爆上がりする。


「ちょっと乗ってみる?」


『プラ、変形してみて』


『はいよ!』


 二人が乗りやすいように、長く変形するプラ。


「のっていいの?」

「のりゅ〜!」


 双子ちゃんが跨ると、ウニョウニョと移動し出すプラ。まるで陸上のバナナボートだ。


「うわ、うごいた〜!」

「ぽよぽよ〜!」


『プラ、王城までお願いね』


『了解や!』


 移動するプラの体から、二本の触手がウニョ〜ンと伸びる。その先には飴ちゃんがくっついている。


「飴ちゃんあげるってさ」


 私の顔を見ながら「いいの?」と聞く双子ちゃんに、小さく頷く。

 双子ちゃんは、確認するようにアルカイドさんの方も見ると、アルカイドさんも頷く。


「ありがとう、ぷよぷよ」

「ありがとう〜」


『スピードは出さないでよね』


『わかってますって』


 そのまま王城へと向かう。朝の街の喧騒の中を進むと「なんだ、なんだ?」と道行く人々が振り返る。


 王城に到着し城門を抜けた。門兵は一瞬驚いた顔をしたが、王族達の姿を確認して直ぐに跪いた。

 問題なく城門は通れたのだが、双子ちゃんの脱出を許していた門兵達は、アルカイドさんのお説教を受けていた。


 王城に到着すると、メグが「塔からの眺めは絶景だよ」と勧められ、一番高い塔に登る事になった。


『プラ、そのまま階段って登れる?』


『楽勝や!』


 双子ちゃんを乗せたまま、ウニョウニョと階段を登っていくプラ。その上ではしゃいでいる双子ちゃんと、羨ましそうに見ているメグ。


「メグも乗りたいの?」


「べ、別に乗りたくなんかないわよ、ちょっ、ちょっと興味が湧いただけよ!」


 わかりやすい反応だなぁ。


『プラ、いける?』


『当然や!』


 プラの体がちょっと大きくなり、後ろ側が伸びてメグの席分が確保された。


「乗っけてくれるってさ」


「じゃ、じゃあ、折角だから」


 恐る恐る乗っかったメグから「うわ、ふにょふにょだ!」と声が漏れる。

 ルナ曰く、プラの乗り心地は最高らしい。


「おお、これは凄いね。正に絶景だよ」


 塔の頂上に到達すると、その景色に圧倒されてしまった。


 王都ディッパーを一望出来る。その人間の街とはまた違った独特の街並みは、モーントの街とは異なる趣きがある。


 塔の頂上をぐるりぐるりと二周ほど回った。

 その途中に、私が高く飛んで、更に高い所からの景色を楽しんでいると、「ズルイ!」と王族の三人から非難されてしまった。


 塔からの眺めをゆっくりと楽しんで、地上へと戻ってきた頃には、はしゃぎ疲れた双子ちゃんは、プラの上でスヤスヤと寝てしまった。

 ルナ曰く、ぷによぷによとしたプラの感触は、眠気を誘うらしい。


 アルカイドさんが双子ちゃんの専属メイドを呼び、脱出の件のお説教をした後に、二人をお部屋までお連れするように要請した。


 二人を起こさないように、慎重に抱き抱えた二人のメイドが、双子ちゃんをそれぞれの部屋へと連れて行く。

 二人の寝顔は実に可愛いかった。



 双子ちゃん達と別れた、私、メグ、アルカイドさんの三人は新ためて王都見物へと繰り出した。


 プラが、お気に入りの場所であるウサちゃんリュックの中に入っていった時には、メグが少し残念そうな顔をした。

 プラは目立つので仕方がない。まあ、私も目立つんだけどね。


 メグに案内されて、王都の至る所を見物していった。


 特に美術館や博物館は、魔族特有の感性や、文化の違いが強く感じられて、大変に面白かった。


 まあ、行くとこ行くとこで、ウィルオウィスプだ! レア魔物だ! ウィスパーだ! あ、足がふにょんってなってる! とか言っている人がいてウザったかったけどね(ウィスパーって言った奴と足の事を言った奴の顔は覚えたので、今度会ったら潰す!)。


 王都ディッパーは広い。とてもじゃないが一日では回り切れないので、観光は切り上げて、お土産物屋さんへと移動した。


「ねえマヒナ、ミーシャへの返礼品なんだけど、これかこれなんかどうかな?」


「・・・・・・う〜ん、良いとは思うけど、衝動買いしないで、色々と見てから決めた方が良いと思うよ」


 メグが持ってきたのは、ディッパーと縦に書かれた赤い提灯と、黒地に赤い太文字でZaplawと書かれた細長い三角形のテナントだ。


「そうね、これはキープで、他にも探してみるわね」


 キープなんだ・・・。


 私はこういう買い物で迷うことはない。自分のセンスの無さは自覚してるので、無難に銘菓やその地元特産の食べ物なんかを買うことにしている。


 今回買ったのは、箱入りの魔王城まんじゅうと魔王城クッキーの詰め合わせ、ディッパー街銘菓のディッパーの月。

 そして魔王国の特産品である地コカトリスの炭火焼セットと魔界蟲の佃煮。

 私の知り合いは女性ばかりなので、キラービーの幼虫のエキスを配合した乳液と化粧水のセット等を買い込んだ。

 最後にルナ用に、木製のいくつかのパーツに分かれた魔王と小さなハンマーがセットになっている、民芸品の玩具の魔王落としを買って、お土産選びは終了した。


 自分の買い物を済ませ、メグに声をかける。


「どう、メグ、買うものは決まった?」


「良いのが見つかったわ、これよ!」


 自信満々でメグが持ってきたのは、金色に輝く魔王城の置物だった。


「良いでしょうこれ! 忠実に再現された魔王城にゴージャスな金色の取り合わせが最高よ!」


 持ち上げてみるとメチャメチャ軽い。金色も変にキラキラしていて重厚さは感じないけど、本人が喜んでいるのだから、口出しは野暮というものだ。


 納得顔でレジへと持っていったメグだったが、レジ前で動きが止まる。

 その視線は、レジ前に置かれた一つの商品に釘付けとなっていた。


「こ、これは、かつて大ヒットした魔道玩具の魔物っち! しかも幻とまで言われた超レアカラーの白黒限定モデルだ!」

「店員さん、こっちにします! こっちを下さい!」


 贈り物用に綺麗に包装された、魔物っちなる魔道玩具を持って、満足げな笑顔でメグが戻ってきた。


 納得の逸品が買えたようで、良かった、良かった。

ーーーーー[次回予告]ーーーーー


 死んじゃったけど魔物に転生して蘇った私。

 幽霊じゃないですよ、ウィルオウィスプなんです!


 領主の依頼も無事に終わり、モーントの街に帰ってきてみれば、コルビート20の感染者が増加していて、街は自粛ムード一色となっていた。


 次回[不要不急の外出を避けよう]


 え? 画像送信機能付き魔導遠距離通信具(通称、画魔通)って、何?




 【作者からのお願いです】


 読者様からの反応を何よりの励みとしています。

 ポイント評価、ブクマ登録、感想、レビュー、誤字報告を頂けますと、創作意欲のより一層の向上に繋がります。

 お手数だとは思いますが、何卒宜しくお願いします。

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