誕生日祝いを届けよう[後編]
魔王国に向かう途中、なんだかんだで、私は不死鳥と出会った。
そして、なんだかんだで不死鳥は私の従魔となり、その直後には、なんだかんだで玉子となったのである。
そんな感じで、なんだかんだで3話目に突入するのだ!
玉子となった不死鳥をプラが飲み込む。
そしてプラはウサちゃんリュックを吐き出して、今やプラの指定席となっている、そのリュックの中に収まった。
ウサちゃんリュックを背負った私は、魔王国への旅を再開した。
街道沿いに進んで山脈を越える。
そこから魔王国の王都までの道程は、馬車で3日程の距離であるが、空を飛べて、疲労もしないので昼夜問わずに移動出来る私なら、1日ちょっとで到着することが出来る。
その後の旅路は順調だった。何事もなく魔王国王都の西門に到着した。
ただし、到着した時間が夜中だった為、朝になって門が開くまで待つ事にした。
ウィルオウィスプの特性を使えば、街壁を越える事も可能だけど、夜中に魔王城に向かうのも失礼だし、コルビート20の影響で、国家間の移動に神経質な時期でもあるので、自重する事にした。
朝になって西門が開いた。
入街の手続きを経て王都へと入った。
魔王国では、まだコルビート20の影響は少ないみたいで、特別な処置もなく入街する事が出来た。
まだ早朝で、余り早く魔王城に向かうのも失礼なので、街並みを見学しながらノンビリと歩く事にする。
ザプラウ魔王国の王都ディッパー。
3000年の歴史を持つ古い街なのだが、新しい物好きの魔族の影響からか、革新的な建物も多く見られる。
近代的な建物と伝統的な建物が混在する、独特の街並みは訪れる者を飽きさせない。
早朝ということもあり人通りは少ないが、人間の姿もちらほら見受けられる。魔族と人間の交流が、活発に行われている証拠だろう。
市場や冒険者ギルド等に立ち寄って、時間を潰しながら王城へと到着した。
大きな外堀に架かる橋を渡って城門に到着。
街門から連絡が来ていたらしく、城門は直ぐに通ることが出来た。
城門を潜って城壁内に入ると、一人の衛兵が待っていて、王城へと案内してくれた。
クネクネと曲がる道を通って王城の正門まで来ると、案内役が衛兵から老執事へと交代した。
老執事の案内で正門を潜ると、謁見の間の前まで通された。
謁見の間の扉は、非常に巨大な両開きの扉で、豪華な装飾が施されていて、アルコル魔王家の紋章も描かれていた。
通常、この巨大な扉は使用されていないようで、巨大な扉の脇に設置されている、小さな方の扉に案内された。
まあ、小さなと言っても、この扉も充分に大きな扉で、この扉にも紋章は描かれている。
「この扉を通ると衛兵が二人待機していますので、それに付いて魔王様に謁見して下さい」
老執事からの説明と同時に扉が開かれる。
目線を下に向けながら、二人の衛兵の後に続くと、椅子の脚だけで豪華とわかる玉座とそれに座る魔王様の足が見えた。
「魔王様、ルンブゥラン王国モーント街の領主、セイアッド=ムーン子爵より御使者が参・」
「あ〜、堅苦しいのはいらん。顔を上げて、こっちに来んか!」
はい? なんて? 私が戸惑っていると、二人の衛兵はそれが慣れているかのように、スッと後ろに下がった。
「何してる、早く来んか。セイアッドの書状で要件はわかっとるから、早くせい!」
なんかセッカチな人だなぁ、この人。偉い人特有の物々しい雰囲気もないし。
「え〜と、はい。領主様をはじめ国王様や公爵様等からも、魔王様の御息女様のお誕生祝いの品々を・」
「おい、堅苦しいのはいらんと言ったろ。マヒナといったか、セイアッドの書状には、お前さんも謙譲語が苦手だと書いてあったぞ。普通に話せ」
「はあ、んじゃあまあ、魔王さん。祝いの品々はこの辺に纏めて出しちゃっていいんですか?」
「おう、構わんぞ。出してくれ」
この魔王さんも領主さんと一緒で、堅苦しいのが嫌いみたいで、普通に話せるのは有難いけどね。ここまでセッカチだと、逆にウザイし面倒くさいな。
「それじゃあプラ、よろしくね」
『あいよ、まかしとき』
背中のウサちゃんリュックの蓋が開いて、勢いよくプラが飛び出した。
「お、おいおい、ちょっとまて! 何だ、そのスライムは?」
「私の従魔の豹柄スラ・」
バタン、スタスタ
「ちょっと父様! モーントから使者の方が、!、って、何、そのスライム?」
私の説明を遮るように、小さな人影が姿を現した、って、忙しないなぁ、全く!
「お嬢様、お行儀が悪いですよ」
小さな影の後について、メイド服を纏った長身の綺麗な女性が現れ、小さな影を窘める。
「こら、メグレズ。お客さんの前ではしたないぞ、おまえは本当に」
魔王様もその小さな影、自分の娘に対して注意した。
「え〜、妾の誕生日プレゼントを持ってきてくれた方ですもの問題ないでしょ。それよりも、このスライムは何?」
「私の従魔の豹柄スライムですよ。名前はプラチャンです」
親子二人から、豹柄スライムの事について矢継ぎ早に質問されたので、私は一つ一つその質問に答えていく。全く、親子揃って忙しない。
私は質問に答えながら、改めて二人のことをジックリと観察した。
先ずは父親、魔王ドゥベ・アルコル。種族は魔人族である。
第一印象としては兎に角デカイ。そして若い。
身長は250センチくらいかな。胸板が厚く筋骨隆々で見るからに強そうだし、手足が長い。
年齢は39歳と聞いていたが、見た目では20代半ばくらいにしか見えない。
黒髪短髪の側頭部には羊の様な角が生え、金色の瞳を持った精悍な顔つきのイケメンマッチョだ。
次に娘のメグレズ・アルコル。種族は魔人と吸血鬼のダブル。
誕生日を迎えて12歳になったばかりらしいのだが、享年18歳の私と同じくらいの身長だ。
いやいや、足がふにょんってなってる分、私が不利なだけで、ちゃんとした足があれば私の方が高い筈だよ、私はチビじゃないよ。
髪は銀髪ロングで、ポニーテールを二本に分けたようなツインテール。
側頭部に父親と同じような角を持ち、背中には蝙蝠のような翼がある。
金色の瞳のクリクリとした目をした、可愛い系美少女だ。
「それで、祝いの品々は本当にここに出しちゃっていいの? かなり量が多いんだけど」
「大丈夫よ、問題ないわよね、アル」
メグレズが、一緒にやって来た綺麗系のメイドさんに確認する。
「どうせ駄目と言っても、メグレズお嬢様はお聞きにならないでしょう。アイテム袋を用意してありますので、問題はありませんよ」
そう言って、メイド服のポケットから多量のアイテム袋を取り出すメイドさん。
メイド服のポケット自体がアイテム袋になっているのも驚きだけど、前もってアイテム袋を用意してあったのも驚きだね。実に用意がいい。
「全くセッカチな娘で、いつもすまんなアルカイド」
「いえ、いつもの事ですから。それにセッカチなのは魔王様譲りでしょう、魔王様も似たようなものですから」
メイドさんの言葉に、魔王が頭を掻きながら苦笑いを浮かべた。
こ、このアルカイドってメイドさん、一々毒舌を挟んでくるな、ちょっと怖いかも。
「じゃ、じゃあ出していきますね。私が説明するから、プラはその通りに出していってよ」
『了解や、まかしとき』
「じゃあ最初に国王様からのお祝いの品から・・・」
プラが次々とお祝いの品々を出していくが、メグレズはそれらに何の反応も示さない。
出された品々は、メイドさんが次々とアイテム袋へと仕舞っていく。
「あの、マヒナ。ミーシャからの品は? 先にミーシャからのプレゼントを出してくれないかな」
「いいですよ、プラ、お願い」
『はいよ』
プラがミーシャからのプレゼントを吐き出した。それは子供が選んだ物なだけあって、それまでの品々よりも小さな物であったが、メグレズの目は、それを見た途端に輝き出した。
なるほどね、ミーシャからのプレゼントだけを楽しみにしていたんだね。
「父様、アル、開けてもいい?」
「ああ、構わないよ」
「本来ならお部屋に戻ってからですが、まあ仕方ないですね」
二人の了承を得て、メグレズは丁寧に包みを開け始めた。本当に嬉しそうだ。
そしていよいよ、ミーシャからのプレゼントの正体が明らかになった。これは!
・・・・・・
これは・・・く、熊の置物?
包みの中から出現したのは、木彫りの熊の置物だった。鮭を咥えて雄々しく四本の足で立つ木彫りの熊さん。
メグレズの目が点になっている。
ミーシャも12歳になる女の子に、なんて物を贈ってんのよ!
「・・・い、良い!」
「え?」
「これは良いわ、最高よ! 流石ねミーシャ、素晴らしいセンスだわ!」
い、一瞬耳を疑ったけど、メグレズは木彫りの熊さんを気に入ったようだ。本当に心の底から喜んでる。
ま、まあ、私にはわからないセンスだけど、運んできた身としては、喜んでもらえて何よりだよね。
こおして領主さんからの依頼は、無事に終了したのだった。
ーーーーー[次回予告]ーーーーー
魔王国の第一王女として生まれた妾。
メグレズ・アルコルです。
マヒナが魔国土産を買いに行くというので、妾が案内をかって出ます。
ついでに妾もミーシャに返礼の品を買うことに決めました。
次回[魔国のお土産を買いに行こう]
妾のセンスを魅せつけてあげます。センス爆発ですわ!
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