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池の水を全部抜いてみよう[中編]

 ヘプルバーン大池のほとりに集まった沢山の人達は、モーント街の治安維持部隊である玄武騎士団の騎士達に誘導されて、中央公園総合運動場へと移動した。


 総合運動場では水抜き後に始動される池の生物の大救出作戦の為に担当区域分けが行われている。

 ボランティアの街民の人達もA班〜E班の5つに班分けされて集合している途中である。その中から私はE班の集合場所を選んで移動した。なぜならばE班にはルナの通っているモーント街立モーント南幼年学校も振り分けられているからだ。


「みててねマヒナお姉ちゃん。ルーがいちばんたくさんのお魚さんたちつかまえちゃうからね!」


「さっきも言ったけどね、頑張るのはいいけどハリキリ過ぎて怪我しないでよ、ルナ」


「しんぱいいりませんわマヒナさん、ルーにはわたくしがついていますからね」


「いやいや、ミーシャもだよ。何が潜んでるかわからないんだから、気をつけなきゃ駄目だよ」


「大丈夫よマヒナ、あたいもこのE班に付いて行く事にしたからね。子供達は心配ないよ」


「あんたが一番心配なんだよ!」


 ギルマスに掛け合って、セレネを他の班に回してもらった方が良いかもしれないな。


「あ、あ、あの、す、すい、すいません。る、ルナさんの、お、お姉さん、の、方、か、かたがたかたかた、方ですか?」


 肩を叩かれて振り向くと、緑色の皮膚をした長身の女性が、背中を丸め小さくなってカタカタ言っていた。


「わたわた、私は、あの、その、ルナさんの、た、たんたたん、担任で、でたい、体育、いくいく、担当、とんととん、の、る、るる、るーるるる、ルアと、とっとろ、も、申し、しま、しましま、す」


「ルアちゃん先生、おちついて、いい子だから。マヒナお姉ちゃんはおこったりしないから、だいじょうぶだからね」


 何言ってるかよくわかんなかったけど、先生だったのか、この人。

 滅茶苦茶頼りない先生だな、今もルナに頭を撫でられてるし、大丈夫かな。


 身体的な特徴をみると種族はゴブリナだと思う。よくよく観察して見てみると無茶苦茶美人な女教師さんだ。スタイルも抜群でハイパーボンキュッボンなダイナマイトボディーの持ち主だ。でもまあ、顔は下を向いちゃってるし、背中は丸めちゃってるしで宝の持ち腐れ感満載で台無しなんだけど。

 そんなルア先生の丸まった背中を、一人のエルフがバシッと叩いた。


「ほら、教師なんだからシャキッとするんだ、ルア君」


 ルア先生とは対照的にシャキッとした印象のエルフ女性は、私に向かって1歩近づく。

 エルフらしい美形、クールビューティーという言葉が相応しい。胸は控えめだがピシッと伸びた背筋はルア先生より小さい身長をルア先生以上に高く魅せている。


「はじめまして、僕はトゥングル、ルナ君のクラスの副担任で担当教科は魔法だ。宜しく頼むよ」


「ルナの姉のマヒナです。妹がお世話になっております、こちらこそよろしく」


 頼りになりそうな先生だ。ルア先生とは全てが対照的だな。


「さて、そろそろ始まるようだぞ。ルナ君、君も集中して説明を聞きたまえ」


「はい! トゥンくん先生!」


「ルア君、君もだ。ほら、背筋を伸ばしたまえ」


「ひ、ひゃ、ひゃい、トゥングルしぇん生!」


 なんだかなあ、と思いつつも、トゥングル先生の言うとおり、いよいよ本格的に[池の水抜き大作戦]が始動する。



 領主のセイアッド=ムーン子爵、冒険者ギルドのギルドマスターロウゲツと挨拶が続き、水抜きプロジェクトの責任者である保健所所長チャーンドさんから、作業工程と注意事項の説明を受ける。

 騎士団の魔道士部隊を先頭に総合運動場から再びヘプルバーン大池へと移動した。


「マヒナさん、水抜きのオープニングセレモニーをお願いするっすよ」


「え、はあ? 何ですかオープニングセレモニーって、私は何も聞いてないですよ、チャーンドさん」


「水抜きの口火を切ってもらうだけで、何も難しい事はないっす。マヒナさんの水抜きを合図に、水抜き部隊が一斉に作業を開始しするっすから」


「特別な事をしなくていいのなら、まあいいですけどね、何で私なんですか?」


「一番多くの水量を抜くと予想されるマヒナさんが務めるのが派手で良いだろうという、領主様の一言で決まったっす」


 私に相談もなしに勝手に決めないで欲しいなあ、あの庶民派領主め。


「まあいいじゃないか、僕も手伝うし頑張ろうマヒナ君」


「あれ、トゥングル先生。先生が私のサポートをしてくれるの」


「ああ、先程チャーンド君に頼まれてね。僕は魔力支援が使えるから、君の魔力の供給役としてお手伝いさせてもらうよ」


 魔力支援能力! 確か自分の魔力を他人に送り込むことが出来るっていう超レア能力だ。聞いたことはあったけど、出来る人には初めて会ったな。


「マヒナさんが注文していた特製ホースは所定の位置に設置してあるっす。あたしの合図で作業を開始して下さいっすね」


「わかったわよ」


 しょうがないと覚悟を決めて、私はヘプルバーン大池の中に移動する。トゥングル先生も風魔法で遅れずについて来た。飛ぶの上手いな、この人。


 所定の場所に到着し特製ホースを確認する。

 事前に私が準備した、水性生物を巻き込まないように杭を打ち、その杭に網が設置されている場所がある。その場所に直径1メートルもある巨大なホースが池に設置されていた。ホースの出水口はオドリー川に設置されている筈である。

 ホースを通せば細かな魔力コントロールの必要がない。水をホースに送り込む事だけに集中出来るのだ。


「それじゃあいよいよ水抜きを開始するっすよ〜!」


 私がホースの確認をして、トゥングル先生が片手を挙げて合図をすると、チャーンドさんが魔導拡声器で叫び始めた。


「カウントダウンいくっすよ〜、水抜きまで後、5・4」


 チャーンドさんの声に合わせて、子供達のカウントダウンの大きなが聞こえてくる。


「3・2・1、水抜きスタートっす!」


 私は魔力の放出を始めた。池の水が特製ホースに送り込まれ、潰れていたホースが大きく膨らみ、その膨らみがオドリー川へと進んでいく。


ドッパアアァァドザザザァァァァ!


「「「「「「おお〜!」」」」」」


 特製ホースの出水口から大量の水が放出された。それに合わせて大歓声が上がった。


「水抜き部隊のみなさん、各自作業を開始するっすよ〜、ゴ〜ゴ〜!」


 チャーンドさんノリノリだな。


 各所で水抜き作業が本格的に開始される。斜めに吹き上げられた水柱が何本も上がり、オドリー川へと水が放出されていく。

 各々で工夫しているのだろう、水の抜き方は様々で、池の水で作られた水の巨人が列をなしてオドリー川へと歩いていたり、上空高く吹き上げられた池の水が雲となり、オドリー川の下流で雨を降らせるなんて光景も見られる。

 どう見ても魔力効率の悪い方法で、目立ちたがりが派手な演出をしているとしか思えないけどね。


 私は私でやるべき事をやるだけなので、魔力出力を無駄のないように調整し、一定に保つことに集中する。


「どうだいマヒナ君、魔力の供給量はこれくらいで良いかな?」


「もう少し制限しても大丈夫です。長丁場になりますから省エネでいきましょう」


「了解した。足りない時は遠慮なく言ってくれよ」


 トゥングル先生の魔力供給は安定していて無駄がない。超希少能力の持ち主だし、只の幼年学校の先生とは思えない。何者なんだろう。


「それではこれより、生き物救出部隊のみなさんには班毎に集まっていただき、担当区域の確認と注意事項の最終確認を行なっていただくっす。水抜き部隊のみなさん、引き続き頑張って下さいっす〜」




☆(1時間後)




「ぷっは〜、疲れた〜。もう当分水魔法は使いたくないわ」


「いやあ、マヒナ君はタフだなあ。休憩せずに続けた魔法使いは君だけじゃないか」


「トゥングル先生のお陰ですよ。適切な量の魔力を供給してもらいましたからね」


「いや、大したもんだよ、僕も1度は休憩させてもらったからね」


「マヒナお姉ちゃん、トゥンくん先生、おつかれさま、すごかったよ。ね、ミーちゃん」


「ええ、お二人の水ぬきりょうが一ばんとうかがいましたわ。ほんとうにすごかったです」


「次はルナやミーシャの番だからね、二人とも頑張るんだよ」


「うむ、ルナ君もミーシャッィ君も、ルア君の言う事を聞いて怪我のないようにな」


「はい「うん頑張る」ります」


 水抜きが終わり私の役目は終了。ここからはルナとミーシャのサポートに徹する事にする。


ーーーーー[次回予告]ーーーーー


 死んじゃったけど魔物に転生して蘇った私。

 幽霊じゃないですよ、ウィルオウィスプなんです!


 水抜きも終わり、いよいよ生き物救出部隊の登場です。ってまた長〜〜い。

 前回の次回予告で私が文句言ったのに、後編で更に長くなってんじゃないの! 2話分くらいあるわよ、これ。

 そんなわけで次回は長いわよ、覚悟しなさい!


 次回[池の水を全部抜いてみよう[後編]]


 何このぷにょっとしたの、え、新種、もしかして新種なの?




 誕生日投稿スペシャル

 本日通算19回目

 この作品で本日11回目の投稿です。



 【作者からのお願いです】


 読者様からの反応を何よりの励みとしています。

 ポイント評価、ブクマ登録、感想、レビュー、誤字報告を頂けますと、創作意欲のより一層の向上に繋がります。

 お手数だとは思いますが、何卒宜しくお願いします。

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