ひとりぼっち
今日、水城と喧嘩した。
理由はどんなことだったか覚えていない。
でも、くだらない理由だったと思う。
あぁ、イライラする。
ー水城なんて消えちゃえば良いのに…ー
「消してあげようか?」
ポンッ、と可愛らしい音を立てて現れたのは宙に浮く女の子…?
「誰っ…?」
「そんなに怯えないでよ。私は妖精。貴方の願いを叶えに来たの。」
「妖精…?」
綺麗なブロンドの髪を風になびかせながらニコニコと笑う妖精。
願いを叶えに来たって…どういうこと?
「その水城って子、消してあげようか?」
「え…?」
「だから、消してあげようか?」
訳のわからないこと口走る妖精。
消すってそんなこと出来るわけないじゃん。
でも…やれるのなら…
「消して。あんな奴。」
「分かった。じゃあ明日楽しみにしておいてね!」
一瞬怪しい笑顔を浮かべて、消え去る妖精。
「変なの。」
ふざけて言ったのに。
私は帰ってベットに飛び込んだ。
翌日、学校へ行ったら水城の席がなくなっていた。
なのに皆いつも通りにお話ししている。
誰も疑問を持っていない。
水城の存在が忘れさられているみたいに誰も…。
「ねぇ花、水城は?」
「誰?その子…空の知り合い?」
私の親友の花に訪ねるが、覚えていなかった。
クラス全員に聞いて回ったが誰も覚えていない。
帰りの会が終わった途端、私は妖精と出会った場所に走った。
「妖精!ねぇ、妖精!!」
「なぁに?」
昨日のようにポンッ、と音を立てて現れる。
焦っていた私は妖精に向かって声を荒げ、質問攻めにする。
「ねぇアレどういうこと?!なんで本当に消えてるの?!」
「え〜?君が望んだことでしょ?別に誰も覚えてないんだし大丈夫でしょ。誰も君が人を消したなんて思わないでしょ?」
ニヤニヤと嫌な笑顔を浮かべ、私の肩を掴む。
「君が望めば誰でも消せる…君は世界の支配者なんだよ。」
「支配者…」
悪魔のようなささやかに誘われる。
その言葉によって私の中の何かが壊れる。
「そっか。いらない人は皆消しちゃえば良いんだ。」
ムカついたから消す、逆らったから消す、邪魔だったから消す、気に食わなかったから消す、嫌いになったから消す、なんとなく消す。
消して消して消して消して消して消して消して消して消して消して消して消して消して消して消して消して消して消して消して消して消して消して消して消して消して消して消して消して消して消して消して消して消して消して消して消して消して消して消して消して消して消して消して消して消して消して消して消して消して消して消して消して消して消して消して消して消して…
毎日些細な理由で私は人を消した。
身の回りの人をほとんど消した頃、親友の花に呼び出される。
「ねぇ、空最近おかしいよ。何かあったの?」
「ふふっ、だってイイコトあったから。」
「イイコト…?」
花の不思議そうな顔に気分が良くなり、ペラペラと自分が今までおこなってきた事を話す。
「私、望んだ人を消せるんだ。ムカついたら、邪魔だって思ったら消せば良い。」
「そ、そんなの…そんなの今すぐやめて!!元の空に戻って!!」
肩をガッチリと掴んで必死に訴えてくる花。
その姿にスーッと感情が消えていく。
ああ、ウルサイなぁ…
「消えて、花。」
絶望した顔をしながら花は消えた。
キラキラとした水を目から零しながら…
ー誰もいないー
誰もいない世界。
私だけの世界…
急に胸の奥が苦しくなる。
「ねぇ、妖精…皆を戻して…」
気がついたら口が勝手に動いていた。
「え?君が望んだんでしょ?戻ってなんか来ないよ。君が皆を消したんでしょ?」
嘲笑いながら私を見下す。
その目に光はない。
「何?今更…人間って自分勝手だよねぇ?自分でやったくせにさぁ、寂しいからって『元に戻して』?甘ったれんなよ。自分でやった事ぐらい自分で償え。」
冷たく言い放って妖精は消えた。
「自分で償う…」
皆を消すつもりなんてなかったんだ。
ただ、ちょっと良い気になっちゃって…
ひとりぼっち。
この世界にひとりぼっち…
胸の奥がキュッと締まる。寂しくて苦しくて嫌になる。
人の優しさが、温もりが恋しくなる。
「ああ、そうだ。」
私が皆のところへ行けば良いんだ。
思い立った瞬間、私の足は勝手に動いた。
そのまま屋上へと走る。
「さようなら。私が壊した世界…」
飛び降りていくのを見つめる妖精。
「あーあ、つまんない。皆死んじゃうんだもん。」
人間は自分が幸せなのに気付かない。
喧嘩してくれる友達がいて、迎えてくれる親がいて、一緒に笑ってくれる親友がいる。
それなのに自分は不幸せと言う。
「あぁ、哀れだなぁ…だから面白いんだ。」
はい!はじめての短編小説です!
家庭科の幼稚園児に向けて絵本を書いたらこんなのが出来ました!
友達の大切さを伝えようと思ったのですが…
こんなの書くなんて頭おかしいですね!あははは!
…頭がおかしいの自分やん。