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チェリー Sec―66

チェリー Sec―66


そんな緊迫した状況と、制限のかかった分娩の中、

敏江医師の結論は、この施設での分娩が最善適切と判断した。

何故なら、他に施設に搬送する余裕が無かった!


こんな状況で、他の施設が受け入れ等出来ない事は、

百も承知していた。

 微かなつてで他の医師に応援依頼のTELをするも、

時間的にも状況的にも、間に合わない事も確認した。


結果として敏江は、選択の余地のないその1つの決断をした!

敏江は、産婦人科医師一人と助産婦、看護師で、

帝王切開の手術を開始した。

 麻酔は脊椎麻酔で・・・・・

帝切で何とか無事女児を出産した。


 その後に、子宮収縮剤をダイレクトに筋肉注射して、

胎盤を剥離するべく臍帯を牽引した。

 が、胎盤剥離がなかなか上手く行かない!

焦りを感じながら必死に最善策を探る。


 その場に緊張が走る!

子宮をマッサージ、牽引を繰り返す!

が・・・・・胎盤剥離が出来ない状態!

 敏江はクーパーを手に持ち、何度も胎盤剥離を試みた。


その間の出血は想定内で、やっと剥離を行った。

敏江の判断では、この程度の出血は圧迫、薬品等で止血が、

カバー出来る範囲内であったと・・・・・

 が・・・・事態は突然急変する!


 胎盤を剥離するにあたって敏江医師は、

頭の隅に癒着胎盤が敏江の脳裏を過ぎった。

胎盤剥離中に徐々に出血が増加した。

羊水との混ざった出血量は2200mlに達した。


やっとの事で、麻酔医が駆けつけ、

大動脈内バルーンパンピングを施行。

・・・・・・

・・・・・


バルーンパンピング:

心筋梗塞などで心臓が十分機能しなくなった時に、

大動脈内に風船のようなものを入れて大きくしたり、

小さくすることにより、弱った心臓(心不全)の働きを補助する方法。


やっとの事で、敏江医師は胎盤を摘出した。

それは、今後の重要な事態を・・・

生死の明暗を分ける大きな結果に・・・・


胎盤娩出後子宮収縮剤を再び使用するも、

依然と出血が継続!

 勿論、ガーゼによる圧迫止血や、出血点にZ縫合を試みるも、

依然と止血が収まらない。


Z縫合:


脆弱な組織や実質臓器からの出血部位に縫合によって止血します。

2カ所で糸を通して組織を縫い縮めるZ縫合は、

比較的広い範囲の止血に効果的!


が、新たな事態が・・・・

その後僅か20分の間に、2,500mlであった総出血量が、

3倍以上の7700mlに達してしまった。

 

それは・・・・・非常事態!

昇圧剤でも血圧をコントロール出来ない非常事態に!


急遽敏江医師は、濃厚赤血球6単位の輸血を開始。

その後看護師に、10単位の濃厚赤血球を大至急オーダーした。

なおも,追加で10単位を追加指示した。


僅か2時間以内に濃厚血小板20単位、

その後新鮮凍結血漿80 mlを、10パック発注した。

 この状況で,敏江自身おそらくパニックに・・・・

目の前がきっと真っ暗と推察する。


 それは,いつもの敏江医師の正常な判断を奪う程の事象が!

その少し後で、看護師長の呼びかけで病院の職員から新鮮血を、

かき集めて2000ml程採血したものが手術室へ運ばれた!


が、敏江医師は移植片対宿主病(GVH)の危険性を考え、

その新鮮血は使わなかった。


さらに20分後血液センターから濃厚赤血球20単位が到着。

その血液を輸血終了と共に敏江医師は子宮摘出に移行した。

およそ、1時間かけて子宮摘出を完了した。


これは・・・・・当初の患者との約束が反故になる。

だか・・・命には変えられないと実行した。

 摘出中に、輸血直後は一時的に血圧上昇するも、

収縮期血圧は30~60 mmHgという低値を推移していた。


敏江は子宮摘出を完了したその後、

膀胱損傷部を修復して、それを確認しようとした所 、

急に機器で測定できなくなり、血圧が触れない。


明らかに、それは心室頻拍が出現!

これまでの総出血量は羊水込みで2200mlであった。

電気ショック(AED)急遽施行するも、モニターはフラットのまま!


2度目!

3度目!  

4度目・・・・・

 周りの看護師が・・・・・

もう・・・・・無理!


それでやっと現実を・・・・

我に帰りそれが無理と知り・・・・・、

敏江医師は非情にも、死亡確認を!

 認めたくなかった!


少しして、産婦死亡について、

敏江医師はありのままを院長に報告!


敏江は医療準則に反する行為は無く通常の病死であり、

異状死には当てはまらないと判断した!

 その為に、警察署への24時間以内の届け出は、

勿論行わなかった。


 少し日時が過ぎた!

敏江は荒れた、二日程は!

 診察も平常通り開始した!

が・・・・オペは避けた!

 医局内もそんな雰囲気で日々は流れた。


 被害者の夫も少しずつ医師の説明に疑問を感じ、

他所からの中傷もあり、被害者の夫は動いた。 

それに便乗して、マスコミも嗅ぎつけ、

結果として事故調査委員会が、発足した。


産婦死亡について、再び敏江医師は、

ありのままを院長に報告!

敏江は医療準則に反する行為は、

無く通常の病死であると信じた!


異状死には当てはまらないと判断して、

前述した様に、警察署への24時間以内の届け出は、

行わなかった。


医院の産婦人科医はその時敏江医師一人だったので・・・・・、


”院外の専門家による検証が必要!”

とする判断から県が、事故調査委員会を設置した。


別の県立病院と民間病院の部長、xx県立医大講師の

産婦人科医三人が、委員となった。


 敏江は沈み込んだ!

何も悪い事・・・・・法に触れる医療行為はしていない!

 なのに・・・・何よ・・・・この仕打!

落ち込んだ!


 暫く診療を休んだ!


CB&D・Cup  Cap-66 Fin    IKAROS


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