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チェリー Sec―65

チェリー Sec―65


季実子は親の仕事を見て育った。

いつの間にか、目の前で命を削りながらも必死で働く母敏江、

その姿が当たり前の様に思われてしまった。

そして何の抵抗も無く医学部に進学した。


 それは・・・・決して簡単な事では無かった。

しかし、一人で過ごす時間を季実子は、書斎にある医学書に、

手を伸ばすように・・・

 それが、いつの間にか何の抵抗も無く広げていた。


 勿論そこに書かれている内容など解るはずはない。

勿論日本語等少なく、多くが英語、ドイツ語の羅列!

 何故かその言語が解らなくても、意外に図解が多かった。

敏江は産婦人科医、当然女性器の図表や解説が多い。

 時には男性器の写真図解も多い。


 その事に季実子は何の抵抗も感じ無かった。

そして、思春期には自らの身体を調べてみたり・・・・

 それ以上に季実子は、患者さんの処置を、

看護師のいない時などに、手伝うこともあった。


 そして、季実子が一番感激したのは、

やはり何と言っても出産だ。

 それは幼い少女にとって、最高最大の衝撃と感激だった。


 真剣にそのシーンを何度も胸に焼き付けて、

季実子は決断した。

 医者に成る!

産婦人科医になると・・・・・


 そんな季実子の成長を敏江は何も言わなかった。

そんな感じで敏江は、教育らしい教育は言葉に出さなかった。

 目の前の敏江の仕事が・・・・

それを見せる事が、教育だと思ったと思う!


 季実子は小・中・高校と文句なく主席で卒業して、

都心の某国立大学に現役合格した。

 それからは、大学に残り医局暫く居たが、僻地の実情を知り、

その僻地に自ら志願して向かった。

 地域医療は想像以上に大変だった。


 医局でのその僻地医療を無事こなして、

ある病院で、産婦人科医として働いていた。

その病院も医師不足で、産婦人科医の多忙は半端なものでは無く、

そんな状況を知りつつも、季実子は必死で頑張った。


 それから数年して、何故か母は四国のある病院へ勤務した。

お互い忙しい身なので親子で会うこともままならず、

母敏江が四国に出向いた利用も知らない。

 

 その後数年して、母は今の季実子の事務所としている場所に、

産婦人科医院を改築して新たに開業した。

 それは順調で,患者さんの評判も良かった。


身を粉にして働けば、医者という職業は間違いなくその地で、

大きな信頼と名誉を保証される。

 そんな年月が十数年続いた。


が、たった一つの事件が全てを失う!

敏江は頑張りすぎたのだ!

 近隣の産婦人科医、総合病院が次々と産婦人科の、

看板を下ろす事に。


 それでも、母敏江は頑張り続けた!

そんな事情は季実子は知らなかった。

 せめて・・・・・せめて帰って来れないかと!

一度でも良いから・・・・・、弱音を吐いて欲しかった!


 おそらく、母敏江は季実子が産婦人科医になった事で、

自分と同じように頑張り、自分と同じようにその地域で欲する医師で・・・、

 そんな季実子に、助けて欲しいとは言えなかったはず・・・・・。

決して!


 医師一人の力が、どんな小さな力でしか無いことを、

知っている敏江。

そんな敏江の苦労、大変さを少しでも解消しようと厚生省に入局して、

若き燃える男が直談判していた。

その男性が敏子の恋人であり・・・・

季実子の父親であった若き男性医師、大森英世だった。

 しかし大森英世は、若くあまりにもまっすぐ過ぎた!

役人の頑強で、固執した古き悪しき慣習に負けてしまった。


 悪く言えば、医学部・医局悪しき慣習と、

厚生省の狂信に殺された様な物だ。

 それでも敏江は、現場を捨てずに頑張り続けた。 


 そして、悪いことは続いた!

ある晩一人の産婦が山本産婦人科医院に、

緊急搬送された。

その日医師は奇しくも敏江一人だった。

 

その事件は幕が下ろされた!

それは、・・・・その妊婦をいつもの様に、

救急隊は搬送してきた。

全くの飛び込み妊婦で、完全に出産段階で、

有無を言えない状況だった。


 ある一部の病院では、運ばれて来た患者を追い返すとか、

連絡を受けた段階で拒否する産婦人科病院が、

圧倒的に多かった。

 それは現在、多くの地方都市では日常茶飯事に近く、

大都市も例外でないのが現状だ!


 そしてそれは、多くは妊婦側にも原因が・・・・

いいや、行政・・・・・も間違いなく加害者となってるのが現状だ!

世の中の不況が続き、失業する人が増え、

定職に就けなかったりで、若い夫婦が妊娠しても、


産婦人科へ受診出来ず、定期健診も金銭面で怠る妊婦が多い!

 その為に妊婦の経過がわからないまま、突然出産に・・・・

そんな現状が多々あり過ぎる。


 妊婦は前置胎盤であった事が検査で判明した。

そして、それは出産時の危険性を説明して、より設備の整った、

病院施設を勧めるも、患者の状況から敏江医師は、

判断を患者に確認しつつ、それは強要出来ないと・・・・・


 それに場合によっては、子宮摘出する事も、

考慮に入れておく事を患者に説明した。

それなのに妊婦は、もう一人子供が欲しいので、

子宮摘出は困ると強く拒んだ!


CB&D・Cup  Cap-65 Fin    IKAROS


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