チェリー Sec―60
チェリー Sec―60
「ネェ・・・・今夜一緒にいたい!」
「・・・・・それは・・・・・」
相変わらず心が揺れる大河!
「それは駄目ですよ!」
その声は季実子だった!
熱く燃えてる佳苗・・・・・そしてマッチに日がつきそうになった大河には、
季実子がスッーと忍び寄った事など気づくはず等・・・・まるで無かった!
季実子は、無理して早めに先の相手との話を終えて、
この場に駆けつけた!
何となく、いやな予感がした!
「佳苗さん! 今夜は契約の話だけにしましょう!」
「・・・・・・・・ん!」
酔った勢いで、季実子をきつく睨みつけるも、
季実子の毅然とした喋りに圧倒されて、反撃の手だけも見つからない!
今の季実子の気迫はあの時の気迫、迫力に似ていた。
それは・・・・・手術室に立ち、今まさに執刀する時の気迫、迫力に!
「大河、今夜・・・・この後は私が・・・・・・」
季実子は、先程のそのままの気迫で大河に帰る様に促す!
「はい! すいません!」
佳苗とぐっと距離を空けて、大河は居住まいを正し一礼して
「失礼します!」
流石の佳苗も、一気にアルコールが冷めて今は、
先程までの乱れた様子は既に無い!
少しわれに返り、何処まで聞かれたのかが気になる。
「佳苗さん! 今度大河を口説くときは・・・・・」
「仕事抜きで・・・ね!」
「はい・・・・そうします!」
救われた思いの佳苗、今捨て台詞を吐こうとしていたのだ!
それは・・・“なら・・今度の契約・・・・・・”
ほんのタッチの差だった!
それを言っては・・・・後が大変面倒になる事を自ら気づいた!
佳苗も、その両親も祖母もこの地で育ち、
山本家には大変世話になった。
そう、山本産婦人科、病院・・・山本季実子にも・・・・
「さぁ・・・佳苗さん、今夜は 私が送るわ!」
「はい!」
季実子は車で来ており、佳苗を促して直ぐ隣の駐車場に、
まるで親子のように肩を並べて・・・そのまま車の中に!
少しして季実子の車は走り去った。
大河はあの瞬間に、季実子が来てくれて救われたと思った。
あのまま佳苗に押されたら、きっと2人でホテルか佳苗の家に、
行ってしまった事だろう。
自制心は効いているつもりだが、あれ程好きだと言われると、
男は成す術がない。
それに、無下に断ると彼女のプライドも・・・
そして、契約もオジャンに成っていた事だろう。
季実子さんに感謝、感謝だ!
大河はあの居酒屋を逃げるように出て行った。
そして、携帯を取り出しコールした。
相手は勿論・・・・・あずさ!
「ゴメン! いま居酒屋の前に!」
「何処の居酒屋?」
「**駅前の居酒屋・・・・・」
「迎えに行くわ!」
「有難う・・・・ゴメンね!」
大河携帯に向かって頭を下げる。
「大丈夫よ! 私・・・今日は飲んでいないから・・・」
「本当にゴメン!」
「実は・・・・俺・・・・・・・」
「いいわ! それ以上何も言わなくて!」
「ゴメン!」
「だから・・・・・いいわよ!」
季実子が佳苗を連れて、車に乗る姿を大河は遠目で、
ボーっと眺めていた。
どうして・・・・こんな風になってしまうのだろう・・・
そんな事を考えていると、あずさの高級車がスーッと近づいて来た。
その車に近づき、外から頭を下げる大河!
「大河君・・・・・男はそう気安く頭を下げないの!」
「でも・・・・俺・・・・」
「俺って・・・・あずささんを、裏切ろうと・・・・」
「接待で・・・・でしょ?」
「えぇ・・・・・えっ、どうして?」
大河はあずさのその言葉がとてもショックだった。
どうして、その事があずさの耳に・・・・・
「それは・・・・ね! 内緒!」
「はぁ・・・・・・・・!?」
「ほら・・・早く乗って!」
「はい!」
「大分・・・・・・飲まされたのね!」
「えぇ・・・・仕事のために・・・・・」
「本当に・・・本当に仕事だけのため!?」
大河はあせった!
何だかあずささんは、全てお見通し・・・って感じ!
下手な嘘は・・・・あずささんには通用しないことが、
段々理解して来た。
うん、嘘はやめよう!
「お客さんの接待で、若い女性幹事さんと食事しました!」
「そう! でも食事だけじゃ無いでしょ!」
明らかにまだ酔っているので、
「はい、お酒も飲みました!」
「それで・・・・その若い幹事に言い寄られたのね!」
「付き合わないと・・・・契約しない! って!」
大河は更に驚いた!
「・・・・・はい!」
「それで・・・その女性・・・・私よりも好き?」
「いいえ! 全然そんな事ありません!」
「今は、貴方 あずささん だけです!」
「そう・・・・嬉しい!」
CB&D・Cup Cap-60 Fin IKAROS




