チェリー Sec―54
チェリー Sec―54
悟の病状は生死の境目からは脱した様だが、
その後の病状は一進一退であった。
医師からの了解で、ICUルームに穂香は少し入れた。
穂香はクリーンルームで消毒され、予防衣を着せられほぼ無菌の状態で、
悟の横たわるベッドに近づいた。
穂香にとって大きな驚きが・・・・それは何かのSF映画なんかで見た?
こんなに多数のチューブが悟の生命を支えている事に!
医師から無事な右腕を、触る事ぐらいは許されていたので、
穂香はその手を恐る恐る触れてみた。
“温かい、悟の手! 生きてるのね!”
“頑張って・・・絶対に死なないでね!”
そういう思いを込めて穂香は、悟の手を握り締め、
穂香の頬を悟の温かい手に擦り付けて祈った。
事故から一度も覚醒しない悟の意識、
頭部のほぼ全部を低温維持の機器で覆われていて、
それはまるでサイボーグ。
微かにそこから覗く二つの目、そして鼻と口元。
祈りを込めて再び悟の手を握り締める。
ん・・・・悟! 悟のその右手、右腕が微かに反応した気がした。
一瞬それに反応して穂香は “悟!” “悟!” って叫んでいた。
すると、悟の目が反応して穂香の方を見た!
穂香はもう一度悟の手を握り叫んだ。
手も・・・穂香の手も少しだが握り返された。
そう穂香は確信した。
そして、頭上にある多くのモニター、そして機器が一瞬早く動いた。
“わかるのね! 悟!“
“悟! ゴメンね・・・わかる穂香よ!”
“頑張って、悟! 早く良くなって!”
「穂香さん! それ以上今は刺激しないで!」
きつく叫んだのは、それを見守っていた看護師だった。
「・・・ん!」
驚いた穂香は、その看護師を見つめ返した!
看護師は、モニターを見てそれを穂香にも観るように諭した。
そこのモニターは、何か悟の危険を知らせるサインのようだ!
1分もしないうちに医師が駆けつけて来た。
そして、穂香に退室を促し数多くあるチューブの側管に、
注射針を刺した。
数十秒して脈の乱れが落ち着き、警報ランプが青に変わった。
どうやら、穂香の存在を悟が感じて、過剰に反応したらしい。
穂香の気持ちに報いるように悟がそれに異常に反応した。
それが今の悟には危険らしい。
穂香は一瞬の喜びと、多くの不安を感じてしまった。
また、私が悟の・・・・・悟の生命を危険に晒す頃になるとは・・・・
ICUルームを出て穂香は目に多くの涙を貯めて、
“悟!ごめん!”
“私って・・・・・穂香って、いつも、いつも悟を困らせる!”
“ゴメンなさい! 悟!”
そんな穂香の前に、いつの間にか結子の姿が・・・・・
結子が穂香の肩を抱くように、抱えるようにして、
「大丈夫よ、穂香さん!」
「大丈夫!悟さんは必死でね・・・・・」
「必死で穂香に答えようとしただけ!」
「結子さん!」
穂香は結子がこの場に存在している事の驚きと、
結子の温かい抱擁が穂香の心を癒した。
それは本当に暖かかった・・・・・、穂香の冷え切った心が!
「穂香さん、彼はね、頑張ってる!」
「きっと、頑張れるわよ!」
「はい! きっと!」
「さぁ・・・・・、涙を拭いて!」
穂香は、結子から渡されたハンカチで大きな瞳と、
頬をつたう涙を拭いた。
そして、
「えっ、どうして・・・・結子さんが!?」
「あら・・・・私も看護師よ!」
「・・・・・・・?」
「変かしら・・・・・私がここにいる事!?」
「・・・・えぇ、少しね!」
「今はね・・・私は看護師として働いているの!」
その話は、以前聞いた事はある。結子さんが看護師をしていた事は!
しかし、何故今ここに?
そんな疑問を打ち消してくれるように、あの指導的な看護師、
近藤愛子が近づいて来て・・・・
「あら・・・結子さんはね、以前私と一緒に働いたことがあるのよ!」
「えっ、そうなんですか!」
「そうよ、その当時は凄かったのよ! オペ室でね!」
「あっ! ごめんなさい、その当時だけじゃなく、今もね!」
結子がその褒め言葉に反応するように
「いいわよ、そんな付けた様なお世辞!」
「いいえ! 昨夜も凄かったわよ!」
「えっ! えっ! 昨夜?」
「あら・・・・昨夜結子さんも手伝ったのよ!」
その言葉は、言うなという目で愛子の目を目で制す!
「よしてよ! そんな大した事なんか・・・・」
「そんなに謙遜しなくてもいいのに!」
結子は違った意味で愛子を咎めたつもりだった。
それは、まだ何も知らない川村との連携プレイに・・・だ!
近藤愛子は、結子と穂香のこれまでの経緯を、
知らないからそれが言える。
結子は川村との関係は、今の所知られたくないのだ。
幸い穂香は川村医師の事は知らない!
そして、結子と川村との関係も・・・・・
ICUルームでは現在の所落ち着いている。
が・・・・これから先、多くの難題が待ち構えている事は、
誰も知らない。
悟の体内で脳以外は体温上昇が徐々に、
起こり初めているのを・・・・
CB&D・Cup Cap-54 Fin IKAROS




