チェリー Sec―53
チェリー Sec―53
川村実は救急救命チームに属していた。
と言うより、数年前までそのチームを引っ張っていた人物なのだ。
院長にかなり無理を言って相当激論を交わした。
産婦人科が専門だが、若い頃から救急救命の重要性を肌で感じ、
東京の日医大の救急救命であらゆるノウハウを吸収取得して来た。
**総合病院へ戻り、自らもその当時の院長に進言していた。
急激に増大する急病患者の生死は、僅かな時間差で、
生死を二分してしまう事を実感した。
東京近郊のある都市で、最終手段として救急救命で、
緊急移動には既存の救急車では無理があると力説していた。
それには、何と言ってもヘリが一番だと、
ドクターヘリの重要性を訴え続けて現在それが実現して、
多くの命を救っているのが現状だ。
救急救命で、あらゆる分野の知識を吸収、
技術を自らの腕に収めた。
だが、迫り来る年齢と視力の衰えで限界を感じ始めて、
院長にこう進言した!
そろそろ開業医として、産婦人科の看板で自立して、
それなりの医療を行ないたいと・・・・・
だが院長は川村をそう簡単に開放してくれなかった。
「君の気持ちも解る!」
「解る! だがな、後任をきちん育成してからにしてくれ!」
「・・・・・・もうだいぶ育っていると・・・・・」
「川村くん、マジでそう思っているのかね!?」
「・・・・・・わかりました!」
「何処からでもいい!」
「君に匹敵する人材を、至急我が病院に呼んでくれ!」
「何処からでも?」
「あぁ・・・・学閥は問わない、君の裁量で・・・だ!」
「それなら・・・・何とか!」
「それと・・・・・、その人物が補充されるまで・・・・・」
「君はこの病院を守る義務がある! そうだろう!?」
「わかりました!」
だが思うようにその人材が見つからず、
川村自らこの救急病棟を何かあると呼ばれていた。
昨今、救命救急に全力を尽くす! そんな人材が少ない!
それと、昔と比べ大学の履修制度が大きく変わり、
オールランドに患者を診れる、人材を育成するのが難しくなった。
それはもしかすると、大学と言うより医師になりたい人それぞれが、
大変な・・・苦しい・・・きつい・・・つらい診療科を選択しない傾向にある。
例として産婦人科医・小児科医に成りたい医師が激減した。
救急救命もその一つだろう。
他の診療科がそうでは無いとは言わないが、先に上げた医師は、
昼夜を問わず患者が押し寄せる。
食事もままならない! 勿論睡眠も・・・・だ!
日勤・宿直の連続で72時間殆ど寝れずに、
食事もカップラーメンを2分で啜る様な繰り返しで、
乗り切っているのが現状だ。
医師の少なさも大きな原因の1つであると思われる。
だからと言って、急激に増やすのに医師の能力低下は、
論外だろう。
そして、ある患者を救うべく協力要請が川村に来た。
その時は、川村新たに開業する準備に結子と県庁へ、
出向く予定で車を向けていた時だった。
川村は急遽総合病院へUターンする事となった。
結子はそれに便乗した。
それは、結子の意志でもあった。
何度か総合病院へは出向いて、ヘルプ的な事をして、
かつての実践の感を呼び戻す為に・・・・・
結子はそこで、川村の医師の技術の素晴らしさに、
改めて敬服信頼を確認した。
オペ室で驚きも・・・・・そこでオペ看として指揮、
指導的立場にいたのが、かつて結子が学んだ、
大学病院の同級生 近藤愛子だった。
それもあり、結子は悟の緊急オペの殆ど、
川村の凄さを実感した。
「貴方、今度川村先生と一緒に開業するって・・・・」
「えぇ・・・・」
「羨ましいわね!」
「・・・・・・・・・」
「川村先生・・・ってずっと看護師たちの憧れの的だったのよ!」
やっと、愛子の言っている意味が理解できた。
近藤愛子は、川村がすきなのだろう・・・・
おそらく近藤愛子も、一緒に仕事をしたかった。
しかし、それは無理な事は想像出来る。
総合病院がそれは許さないだろう。
多くの場合、勤務した病院から医師が独立する時に、
優れた看護師を一緒に・・・・だが、それは許されなかった。
院長から、条件の1つに近藤愛子はダメだと言われていた。
そして、もう一つの条件が暫く総合病院で勤務する事だ。
いい意味で結子は、愛子から多くの事を学んだ。
そして、いつかは一緒に働きたいと・・・・
頷きながら、結子は
「でも・・・・今度の医院は産婦人科よ!」
「あら・・・・私! 山本季実子医師と、働いた事があるのよ!」
「えっ? えっ・・・・それマジ!?」
「ええ、その当時は 木村季実子医師だったけどね!」
「えっ? 季実子さんご存知ですか?」
「ええ・・・・、四国のある病院でね!」
「んん・・・・そうなんですか?」
「季実子女医は、相当苦労したのよ!」
「そうなんですか!?」
結子は、何故敏子先生は瀬戸内海の海で、
自ら命を絶ったのがそこら辺にある!
そう実感した!
それに、季実子医師は結婚していたと・・・・?
CB&D・Cup Cap-53 Fin IKAROS




