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チェリー Sec―52

チェリー Sec―52


壮絶な医師と疾患との戦いが・・・・

さすがの医師たち緊張で目眩を感じる。

緊張の連続で痺れる医師たち、

時には同時に3名のそれぞれのプロ達が、

壊れかけた人体の修復に心血を注ぐ。


その中に季実子の姿も・・・・・・

それは・・・医師としてなのか定かでは無い!

 かれこれ医師は交代で6名関与している。

 

そしてそれは・・・・・医師だけでは勿論無い。

看護師、検査技師、放射線技師、生命維持装置のプロが、

それぞれの専門職の限りの叡智を集結している。

 一人の命を救う為に・・・だ!


精魂を傾けて、それぞれのプロ自身達が限りを尽くした。

後は彼の運命と言うか気力と言うか、生命力に期待するより他はない。

やるべきことは全て行った。そんな心境だろう。


任せれば良いのかもしれないが、一人の医師は何故か、

彼に対して異常なほどの頑張りを見せる。

他のスタッフが交代を申し出てもYESと言わない。


「先生! はいこれ!」

そう言って一人の看護師が、挽きたてのコーヒーを目の前に翳し、

全力投球で今もなお気力を振り絞る医師を、激励する中堅の看護師。


「オウ・・・美味そうな匂いだ!」

「有難う・・・・で、今何時だ?」

そう言いながら、爽やかな顔をした中堅の看護師を見上げる。

 「朝の、9時です!」

「そうか・・・えっ・・・朝・・・・?」


まるで、朝と夜の感覚がずれた様な言い方だ。

 「はい、気持ちの良い朝ですよ!」

その朝に、やっと規則正しくそれぞれの計器が、

それぞれの音と波形、信号を送っている。


そう言うことは彼・・・・症状は安定している・・・・・・

助かるのか・・・危機は脱したのか!

「あれ・・・あいつは?」

中堅の看護師の、入れたてのコーヒーを美味そうに啜りながら、

ある人物の所在を探す。


 「季実子さん・・・・、先ほどお帰りになりました!」

「そうか・・・!」

「アイツにもこの美味いコーヒーを・・・・」

 「はい・・・入れて差し上げました・・よ!」

「そうか・・・それは良かった・・・・」


 「でも・・・ほら・・・」

そう言って、その看護師はテーブルにまだ少し残った、

コーヒーを指差した。

「何だ、そうか、彼女には正規の仕事が・・・・」

 「その様ですわね・・・貴方と同じように・・・」

「死にそうな位に多忙ですね・・・」


そう言って、その看護師は後ろを振り返りしなやかな動作で、

颯爽とナースセンターに戻って行った。

 その看護師の後ろ姿、ナース衣でさえも彼女の見事なプロポーションを、

隠しきれないでいる。


そんな後姿にほんの一瞬の安らぎ、そして爽やかなコーヒーの香りが、

その医師を元気付ける。

 まるで、彼の奇跡の生還を待ち望んでいるように・・・・・


 程なくして、手術中の赤いランプが消えた!

穂香はその医師に駆け寄る!

「先生! 悟は! 悟は無事ですか!!」

 「うん、何とか危機は脱した様だ!」

「有難うございます! 先生本当に有難う!」


 もう穂香には、泣く涙が無くなったはずなのに・・・・

いくらでもこぼれ落ちる涙!

 傍にいる大河も大粒の涙!

「良かった! 良かった! 良かったね、穂香さん!」

 「有難う・・・大河!」

自然に二人は抱き合った!


 そんな光景を不思議に見るスタッフも・・・・

そう、穂香の彼のはず・・・・患者である悟は!

 どう見ても、穂香と大河は兄弟親戚では無さそうだ。


 躊躇しながら、チーフ医師は二人に問いかけた!

「あの・・・これまでの経過は誰にお話すれば・・・・」

 「はい! 私にお願いします!」

と、穂香が声をかけた。


「実はですね!・・・・・・・」

「現在一命は取り留めましたが、余談を許しません!」

 「あっ・・・はい!」

「実に難解な手術を、総勢6名の医師と看護師等で、全力を尽くしました」

 「・・・・そですか! 6名のお医者さんで・・・・」

「優れた脳外科医、循環器のエキスパート!」

「そして外科・整形外科のプロ軍団です!」


 穂香は恐れをなした。

こんなに凄い医療スタッフが悟に全力を尽くしたなんて、

思いもよらなかった。

「それじゃ・・・・悟は元気に・・・生活出来ますよね!」


「実は・・・・・それなんですが、脳を相当やられてまして・・・・」

「よっぽど順調に予後が進んでも、自力歩行はかなりハードルが高いです!」

 「えっ! 嘘でしょ・・・・・・・」

「よくお考えください!生きているだけでも奇跡に近いのですよ!」

 「・・・・・・・・そう・・・・なんだ!」


がっくりと気を落とす穂香!

冷静に考えれば・・・・そうなのだろう・・・・

大河が穂香に寄り添う!

今度は大河の方が多くの涙を流していた。

 こんな事って・・・・・残酷過ぎる!


しかし、その様子を遠くから見つめる鋭い目が!

“何とかして見せる! 私の腕で!”

 

細い腕に力を入れて・・・・・・


CB&D・Cup  Cap-52 Fin    IKAROS


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