チェリー Sec―50
チェリー Sec―50
オペ室の前の待合室で大河・穂香が待ち続けて、
既に12時間過ぎていた。
山本ツーリストの事務所は、留守電がかなり鳴り響いていた。
季実子は、それを受け機敏に応需していた。
幸い、この2日に添乗員としての仕事は1つで、
それも知り合いのツーリストに依頼した。
2時間前に、季実子がやって来た!
それも二人にコーヒーを持って!
それは、自動販売機のコーヒーでは無かった!
大河は不思議に思った!
そう考えると、あの時穂香と大河で同行して、
病院へ行くように促した。
そして、季実子が病院内の何処にいたのかが、
不思議に思えて・・・・
それに、あのコーヒーは?
えっ・・・・季実子はこの病院の関係者?
そう思うも、今の状況ではそんな話は出来ない!
穂香と大河は、病院へ到着してこれまでの12時間あまり、
殆ど会話らしい会話はしていなかった。
日付も変わり、太陽も昇り朝になって少しずつ病院内に、
患者の数が増えて来た。
その様子で穂香は、相当な時間が経過している事を感じた。
いつの間にか穂香は、大河に寄り掛かり軽い眠りに落ちた。
穂香は夢を見ていた。
それはやはり悟の夢だった。
穂香は悟に冷たく当たっていた。
“どうして、悟はいつもそうなの?”
“怒りなさいよ!”
“いいんだ、俺! 穂香の傍にいるだけで!”
“穂香が幸せなら・・・・俺待ってる!”
“ずっとね!”
“悟・・・・私、今好きな人が出来たから!”
“そう・・・・良かったね!”
“どうして! どうして悟はいつもそうなの?”
“俺・・・・穂香が・・・穂香に幸せになってもらえば!”
“それで・・・・いいんだ!”
“でもね! 悟 私ダメみたい!”
“どうして?”
“うん! あいつに好きな人が出来たみたい!”
“・・・・・そうなんだ! 穂香いつも我武者羅だから・・・・”
“悟! やっぱり貴方、私のこと良く分かるね!”
“もうダメなの!?”
“多分ね!”
“珍しく弱気なんだね!”
“あいつ・・・・・、いい奴なんだけど・・・・”
“私が振り回しすぎて・・・・・、引かれたみたいよ!”
“そう・・・・俺待ってるよ! いつでも穂香の事!”
“有難う・・・・・それマジに考えて、いいの?」
“あぁ・・・・・いいよ!”
“でも・・・・俺今、体が・・・・うまく動かないよ!”
“どうして?”
“うん! まるで・・・・鎖でつながれて・・・・”
“すっごく、痛い! 何だか別の扉がね”
“えっ・・・・・悟! どうして・・・・”
“うん! 穂香の顔が良く見えない・・・んだ!”
“いや! やだ! 悟、悟ほらここにいるわよ、私!”
“・・・・・・・・重い、眠い・・・・・・”
“悟! さとる!”
「穂香! どうしたの?」
「・・・・・・あっ、大河!」
「何だか、すごくうなされて・・・・」
「ほら、体中にこんなに汗が!」
「・・・ここは?」
どうやら、穂香大河の腕の中で悟の夢を見ていた様だ。
体中に、汗いっぱいかいて・・・・・
穂香は両手を合わせて、神に仏様に必死で祈っていた。
そんな事を椅子に座りながら何度も何度も繰り返して・・・
そして、今悟の手術中で病院の中で、つい眠ってしまって・・・・
それも、大河の腕の中で悟の夢を見ていた。
それがわかった瞬間穂香は自分の矛盾を感じていた。
穂香は今、大河の腕の中。
その大河が、穂香の額や胸元も、手ぬぐいで汗を拭いていてくれた。
「有難う! 大河・・・・私そんなに・・・・」
「うん! うなされていたよ!」
「それで・・・・悟は?」
「ほら・・・・まだなんだ!」
「そう、本当に大丈夫だよね!」
「・・・・うん!」
穂香はそういう事で先程の夢みたいな?
嫌な思いを吹き消そうと・・・
「あれ・・・・季実子さんは?」
「うん・・・・・先程来て・・・・・」
「・・・・・そう! 私季実子さんに迷惑かけて・・・・」
「しょうがないだろ! こんな現状じゃ!」
穂香は今朝だと言う事が、そして仕事の事も・・・・
「帰ったの?」
「何度か来て・・・・・また来るって!」
「予定が入っているでしょ! 今日のスケジュール!」
「うん、季実子さんが今日の予定は頼んだみたい!」
「そう・・・・今日の予定は1件だけだから・・・・」
「それに、事務所の留守電、季実子さんの携帯に転送していたみたい」
「でもね! 不思議なんだ!」
「・・・何が?」
「季実子さん、この病院の中に知り合いいるの?」
「どうして?」
「だって・・・・僕たちにくれたコーヒー」
「自動販売機のじゃ無かった・・・・」
「そうなんだ!」
CB&D・Cup Cap-50 Fin IKAROS




