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チェリー Sec―36

チェリー Sec―36


敏江医師は自己嫌悪感に陥っていたと思われる。

多くを自問自答して・・・・・・

 正しい事をしているはず!

あの時は、最善の処置をした!

 自ら持てる知識・・・・技術を全て注入した・・・・はず!


 だから、期待に答えれるはずだった!

ミスは無かった! はず!

 しかし,結果は・・・・伴わなかった!


 どんな努力をしても、結果が伴わなければ・・・・・それは失敗!

ミス・・そして死あるのみ!

 それが現実だ!


他の医師を待つ余裕は無かった!

待つことを・・・応援を待つ余裕は無かった!

 そんな余裕は妊婦に残されていないく、

全身状態は切迫して一刻の猶予もなかった。


 が・・・・・患者は努力の甲斐もなく、結果として・・・・

死亡した!

 敏江はカウンターショック、を続けた・・・・・

看護師の静止に、やっとの事で頷いた。


こんな挫折は、おそらく敏江医師にとって始めての経験だ!

その後は呼ばれる度に、体が震えた!

 大きな自信を無くすと、その後の医師は,

今のこの医師免許を破棄したくなる!

そう・・・現実逃避を何度も考える!


 しかし、患者は目の前にいる!

四面楚歌の状況が敏江を追い詰める!

 それを知って、ベテラン看護師が傍で見守ってくれる!

ベタテランでは無いが、結子も敏江の心の支えになった!


 結子の夢の中に、その時の光景が何度も現れる!

やはり・・・・後悔が・・・・結子は出来る事は無かったか?

 それが・・・・今も結子の心残り!


最近は特に、産科事例で民事刑事訴訟は後を絶たない。

そんな現状を知ってか、最近産婦人科医になろうという医師は稀だ。

訴えられた状況で弁護のために、自らの正当性を立証するべく手段など、

講ずる暇など皆無に等しい。


 何故なら、この医師不足の現状で診療を行ないながら、

訴訟対策に費やす時間など1分たりとも無い。

 そんな時間があればまず睡眠を・・・・が多くの医師の考えだろう!


地獄的な勤務スケジュール、それもどんどん酷くなって!

近隣の産婦人科施設が相次いで閉鎖に・・・・

だからといって敏江は、そんな泣き言は口にした事は無かった。

 敏江は、やはり人を一人死なせてしまった事への反省、

やり残した事は・・・・ああすれば・・・・・

 

そんな事が夢の中にさえ出て来る。

原告側弁護士の嘲笑にもじっと堪えていた。

週刊誌の餌食にもなった。

少しずつ医療に対する絶望感が・・・・・

 不安感が徐々に増して・・・・・


 それは日を追う毎に増してきて・・・・・

やり場の無い怒りも・・・・

 そして、敏江は選んでしまった!

自らの死を!

 医師として、絶対に選択してはいけない選択を!


 瀬戸内海の海に・・・・・

身を沈め・・・・

かつてある男性と、ダイビングで見つけた・・・・

海中にある洞窟を目指して!


睡眠導入剤を・・・・・・、

敏江医師としての経験から必要量を服用して!

自らの屍は地上に現われない自信をもって、

 海中に深く・・・・洞窟へ向かった!


苦しい、窒息・・・・酸素不足! 意識が遠のく!

これで・・・・死ねる! 完全に!

もう・・・医師に未練は無い!

終わった!


 海中深く敏江が意識が遠のく頃、

季実子は、K大学病院の産婦人科で、今まさに女児を取り上げていた。

 これは,もしかすると人の命の交換作業なのだろうか。

そんな事は無い! 無いがそれを信じるような事が実際起こるのだ!

 誰も信じるものは無い!


 しかし、その後その女児は,医学を目指す!

そして季実子の知らない場所で、着々と医学部を目指し、

優秀な成績でT大学医学部を卒業した。

 その名はM・K!


 その時の母親は看護師で、人のために命を落とした!

だがその事は季実子知らない!

 きっと、何処かで巡り会う運命と思われる!

その季実子は母親の死以後、何故か大学病院を辞めた!


 そして、産婦人科も,医師の仕事も辞めた!

その胸のうちは、季実子の心に聞かないと解らない!

 季実子は何度も母敏江の発見された海、

瀬戸内海に何度も足を運んだ!


 敏江の苦しみ、苦悩を少しでも知りたい、感じたいと!

季実子は実は、父親を知らない!

 しかし・・・・・瀬戸内海の海で、そこに佇む一人の男性を、

一度だけ見た!

 それは、敏江の妻で、季実子の父であると確信した!


 とにかく、季実子が仕事に医師を選ばない・・・

辞めた理由は誰も知らない!


CB&D・Cup  Cap-36 Fin    IKAROS


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