チェリー Sec―35
チェリー Sec―35
胎盤を剥離するにあたって敏江医師は、
頭の隅に癒着胎盤が過ぎった。
胎盤剥離中に徐々に出血が増加した。
羊水との混ざった出血量は2200mlに達した。
麻酔医が駆けつけ、大動脈内バルーンパンピングを施行。
注:心筋梗塞などで心臓が十分機能しなくなった時に、
大動脈内に風船のようなものを入れて大きくしたり、
小さくすることにより、弱った心臓(心不全)の
働きを補助する方法。
困難の末敏江医師は胎盤を摘出した。
それは、今後の重要な事態を・・・
生死の明暗を分ける大きな結果に・・・・
胎盤娩出後子宮収縮剤を再び使用するも、
依然と出血が継続!
勿論、ガーゼによる圧迫止血や、出血点にZ縫合を試みるも、
依然と止血が収まらない。
Z縫合:脆弱な組織や実質臓器からの出血部位に縫合によって止血します。
2カ所で糸を通して組織を縫い縮めるZ縫合は、
比較的広い範囲の止血に効果的!
が、その後僅か20分の間に、2,500mlであった総出血量が、
3倍以上の7700mlに達した。
それは、昇圧剤でも血圧をコントロール出来ない非常事態に!
急遽敏江医師は、濃厚赤血球6単位の輸血を開始。
その後看護師に、10単位の濃厚赤血球を大至急オーダーした。
なおも,追加で10単位を追加指示した。
僅か2時間以内に濃厚血小板20単位、
その後新鮮凍結血漿80 mlを、
10パック発注した。
この状況で,敏江自身おそらくパニックに・・・・
目の前がきっと真っ暗と推察する。
それは,いつもの敏江医師の正常な判断を奪う程の事象が!
その少し後で、看護師長が呼びかけて病院の職員から新鮮血を、
2000ml採血したものが手術室へ運ばれた!
が、敏江医師は移植片対宿主病(GVH)の危険性を考え、
その新鮮血は使わなかった。
さらに20分後血液センターから濃厚赤血球20単位が到着。
その血液を輸血終了と共に敏江医師は子宮摘出に移行した。
およそ、1時間かけて子宮摘出を完了した。
これは・・・・・当初の患者との約束が反故になる。
だか・・・命には変えられないと実行した。
摘出中に、輸血直後は一時的に血圧上昇するも、
収縮期血圧は30~60 mmHgという低値を推移していた。
敏江は子宮摘出を完了したその後、
膀胱損傷部を修復して、それを確認しようとした所 、
急に機器で測定できなくなり、血圧が触れない。
明らかに、それは心室頻拍が出現!
これまでの総出血量は羊水込みで2200mlであった。
電気ショック(AED)急遽施行するも、モニターはフラットのまま。
2度目!
そして3度目!
既に無理と知り、医師は非情にも、死亡確認を!
産婦死亡について、敏江医師はありのままを院長に報告!
敏江は医療準則に反する行為は無く通常の病死であり、
異状死には当てはまらないと判断して、
警察署への24時間以内の届け出は行わなかった。
被害者の夫も少しずつ医師の説明に疑問を感じ、
他所からの中傷もあり、被害者の夫は動いた。
それに、マスコミも嗅ぎつけ、結果として事故調査委員会が、
発足した。
産婦死亡について、敏江医師はありのままを院長に報告!
敏江は医療準則に反する行為は無く通常の病死であり、
異状死には当てはまらないと判断して、
警察署への24時間以内の届け出は行わなかった。
医院の産婦人科医はその時敏江医師一人だったので、
”院外の専門家による検証が必要!”
とする判断から県が事故調査委員会を設置した。
別の県立病院と民間病院の部長、xx県立医大講師の
産婦人科医三人が、委員となった。
医療事故調査委員会の報告書は200X年X月に作成され、
県に提出された。
この報告書は死亡の原因の執刀医の判断ミスを認め、
胎盤が子宮の筋肉に付着していることに気付かなかったこと、
通常使わないはさみを使って切り離したこと、
大量の出血が続いたのに院内の他の医師に、
応援を頼まなかったことなどを原因と指摘されていた。
xx県は医療側の過失とした上で、医賠責保険で、
保険会社から遺族への補償支払をスムーズにしようとした。
xx県調査委員会の報告書がきっかけで、
メディアが医療ミスと大きく報じ!
警察が捜査に動くことになる。
200X年X月XX日、xx県警は手術を執刀した医師を、
業務上過失致死と、医師法に定める異状死の届出義務違反の疑いで逮捕。
山本医師はX月XX日にxx地方裁判所に起訴された。
検察と被告人の医師との間で、死因について見解の相違があった。
逮捕の2、3日前、山本医師は警察に家宅捜査に入るから、
自宅待機するように告げられた。
捜査の後、山本医師は警察への同行を求められ取調室に入った。
そこで、逮捕状が読み上げられた。
この逮捕については、
事前に警察からの情報を得たマスメディアが、押しかけた中での逮捕となり、
手錠をかけられた山本医師の姿が全国に報道される結果となった。
そんな噂話が広く流布されたが、本人自身が語った初公判後の会見で、
明確に否定した。
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