裏切り
多少グロ表現があります。
初めて戦闘というものを体験してから2週間が経った。
2週間前。
僕等は宿屋に戻った後、角兎を売却した。肉の部分は宿屋の主人が買い取ってくれた。角兎の肉は強さの割に柔らかくとてもジューシーなので人気なのだという。ハルは簡単に倒していたが一般人には少々厳しい相手らしい。あの角で足を砕かれた後、生きながらにして角兎に埋め尽くされ喰われていく人もいたらしい。僕にはハルがいてラッキーだ。
宿屋の主人が上手く捌いてくれたので、皮と角は武器屋で売った。全部で銀貨1枚と銅貨30枚になったのでそこそこだろう。やはり冒険者というのは稼ぎが良いらしい。
そしてそれから2週間。
僕等は毎日毎日狩りに出かけた。と言ってもやはりデスサイズは戦闘で使おうとすると急に重くなるので基本ハルが戦い、自分は弱った魔物にデスサイズを突き刺すだけだったが。それでもハルは僕を見捨てたりせず特訓にまで付き合ってくれた。せめて自分の身くらいは守れるようになりたかったのでハルの助けはとても有難かった。そして2週間経ったハルと僕のステータスがこれだ。
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レベル 10
年齢 16
性別 男
筋力 250
体力 230
耐性 190
敏捷 200
魔力 140
魔耐 150
知力 150
スキル
言語理解、ダメージ上昇(中)、身体能力強化適性、毒耐性(弱)、水魔法適性
その他
なし
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レベル 4
年齢 15
性別 男
筋力 25
体力 21
耐性 18
敏捷 25
魔力 23
魔耐 23
知力 2569
スキル
言語理解、識字理解、毒耐性(弱)、???…
その他
???…
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ハルは沢山魔物を倒しているのでレベルの上がりも早く、ステータスもしっかり上昇している。僕等に共通している毒耐性(弱)は草原にいた、ポイズンスライムを倒していると手に入れることが出来た。どうやらポイズンスライムは常に毒を身体から気化しており、それを吸っていたためスキルが付いたらしい。スライム自体は弱かったが毒は強く死ぬまではいかないまでも、身体は動かなくなっていただろう。毒消しポーションを買っておいてよかった。初心者はポイズンスライムを舐めてかかり、毒にかかり動けなくなったところを他の魔物に喰われるまでが一連の流れらしい。この世界では気を抜くとすぐに死んでしまう。特に僕はステータスも低いのだから気をつけないといけない。
そしてハルは水魔法適性が付いた。宿屋で知り合った魔法使いに教えて貰ったらしい。実践ではまだ見せてもらっていないので楽しみだ。
問題は僕のステータス。
特に問題のないごく普通の一般人のステータス。
知力以外は。
初めの知力から約2倍になっている。これはなぜかわからないが仮定は立てられた。僕は特訓の間に街の本屋や図書館で、様々な文献や歴史書を読んだ。すると知力が大幅に上昇していた。つまり魔法やこの世界について理解を深めるごとに知力は高くなるのではないかと考えた。現にこの世界の人で本を読む人は少ない。それが知力が低いと呼ばれる原因ではないかと思う。まぁただの仮定だしあまり戦闘には関係ないから気にしていない。
それより気になるのは街の人の反応だ。
僕等が召喚されてから2週間。
この間に街の人にも勇者として召喚された9人の話は広まっている。
特に僕等2人以外の7人は帝国の強者と一緒に効率の良い狩り場に行きどんどん強くなっているらしい。少し前には強敵と言われているオーガを倒したらしい。
2週間で凄いと思う。街の人も明るくなっており勇者パーティを讃える声が相次いでいる。
ただそれに伴って僕等に対する声も上がっている。
当然だ。この世界の神に世界を救うために召喚されたというのに皇帝には従わず、教会にも従わないのだから。
まだ身の回りの人にはそういう人はいないがそろそろ危ないかもしれない。一応身バレはしていないと思うが、どこから情報が漏れるかわからない。
僕等は備えをしていた。
が、それはあまりに唐突に僕等の甘さをついてきた。
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ほぼ同時刻ー帝城
皇帝と教皇であるタイランドは人払いを済ませた部屋で話していた。
「のう…タイランドよ」
「はい、なんでしょう皇帝様?」
「勇者とその一向はどうなっている?」
「それなら猛者とともにメビスへと向かい戦闘訓練を行っています。オーガも倒したらしいので非常に順調だと」
勇者たちの前ではタイランドを仰々しく扱っていた皇帝も普段は態度がでかい。
「そうか…しかしあの逆らった2人はどうなっている?」
「あの2人は部下に探らせたところ冒険者として生活しているとか。ただ神への信仰心は微塵もなく勇者としての自覚もないそうです。街では不審に思う声も上がっており、このままではエレム様の信仰も弱くなる恐れがあります。」
「ふむ…あの2人はどうも気に食わん。儂に対する敬意というものも持ち合わせているか怪しい…タイランドよ。このままでは微々たるものではあるがエレム様への信仰心が減ってしまうのであったな…?」
「そうですが…?」
「なら彼奴らを神敵として街に知らせよう。そして奴らを捕らえ処刑する」
皇帝の浅慮さは知っていたが、これほどとは思っていなかった。今までも酷かったがこれは想定外だ。
「なっ…しかしそれはあまりに早計ではありませぬか?まだ何も問題は起こしておりませぬし…」
「そんなもの適当にでっち上げればよかろう。それに悪の芽ははやく摘んでおくべきだ。幸いにも勇者パーティはいないのだからな。直ぐにでも命令を下そう」
だめだ。
こうなった時には皇帝に何を言っても聞かない。それに意見しようものならなんのためらいもなく私を処刑するだろう。
「…わかりました。教会も同時に宣言しましょう」
「ふふっ…そうか…ははっはっ!」
皇帝は邪魔な2人を処刑することができて満足する。
教皇は乾いた笑みを浮かべる。
「………。」
しかし戸の外である人物が聞き耳を立てていたなど2人は知るよしもなかった。
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