召喚ー3
少し長めです。だんだん伸ばしていくつもりです。
ひとまず現在の状況について、みんな理解したところで、僕達は場所を移動していた。
この後、この世界の知識などを先程会った隊長さんから教えて貰えるらしい。
歩いていると、ハルが声を掛けてきた。
ハルは、生まれた時からの幼馴染だ。身長は180センチくらいあり痩せ型。姿は眼鏡をかけているので、インテリ君みたいだ。頭の良さは同じ位。しかし、見た目に対して運動能力は高く、腕っ節も強い。まぁ当然といえば当然なのだが…
ハルはヤクザの若頭である。
昔から親に言われ武道を修めていた。
そのせいもあって、学校では恐れられている。
が、ハルは優しい。
道端で困っているお婆さんがいると、登校途中でも助けてしまうほどに…
そんなハルが僕は好きだ。
親同士が学生の頃からの親友だったため、幼少期はハルとほとんど一緒に過ごした。今でもそうなのだが…
ハルのお父さんはヤクザの組長だが、とても優しく、まさにハルの父。といった感じだ。
そんなハルとはずっと一緒にいた。
今話そうとしていることも、大体分かっている。
「なぁ、ミキ。タイランドが言ってた事って…」
「うん…嘘だと思う。」
僕等が、話題にしているのはタイランドの「魔王を倒せば神が元の世界に戻してくれる」の部分だ。
僕等はオタクであり、また頭も悪くない。そのためタイランドの嘘も直ぐわかった。
僕等のよく読む異世界召喚系のラノベでは、1つのテンプレがある。それは、元の世界に戻れないという事だ。
大抵は、呼ぶだけで魔力を使い果たしてしまい、帰る事が出来ない。今回もそうだ。
またタイランドは魔王を倒せばと言ったが、なぜ魔王を倒せば神が元の世界に返すのか理由が分からない。もし、自分が神なら、返さずにそのままこの世界で人々の安全のために戦わせるだろう。
以上の理由から僕等は元の世界に帰れない。その事は召喚されたときに、薄々気付いていた。ハルもそうだろう。他のクラスメートは、どうか知らないが。
「とにかく、教会は信用出来ない。常に警戒しとかないとな。」
「うん、そうだね。ただ表面上は普段通りに。」
「了解。」
僕等は教会が信用出来ないと、確信していた。教会は何もかも折り込み済みで召喚したのだろう。結構頭が回る。
だが、警戒しとけば大丈夫だろうと思っていた。僕等は油断していた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
話している間に、着いたみたいだ。
会議室として使用しているらしい。
席に着き説明を受ける。
「私の名前はアレックスだ。よろしくたのむ。」
いかにも武人といった感じだ。40歳ぐらいだろうか?身体は鍛えられている。
「まず、君たちには職業について知ってもらおう。」
そう言い説明を始める。
この世界には様々な職業があるらしい。だが大半の人が戦士職だ。戦士は身体さえ鍛えれば、誰でもなれるかららしい。他の職業として魔法職、そして特殊職がある。さらに、戦士職の中でも、重装兵、騎士、槍兵と武器によって変わるらしい。魔法職も、治癒師、魔法使い、召喚師、付与師がある。これらは適性により変わるらしい。治癒師は回復、魔法使いは攻撃、召喚師は使い魔などを使役、付与師は補助といったところだ。ただ特殊についてはあまり分からないらしい。そもそも数が少ないのだと。また、戦士職だからと言って魔法が使えないわけではないと言う。身体能力強化などはよく使われるし、数は少ないが、魔法戦士もいる。また魔法も同様だ。あくまで適性の話であって全く使えないというわけではない。ただ相性はあるそうだ。例えば治癒師に適性のあった人は付与師の魔法は習得しやすいそうだが、魔法使いの魔法は習得しにくいらしい。
と、ここまでが職業についての話だ。今までしてきたゲームに似ていてなぜか嬉しい。ただ、特殊職が気になる。
アレックスの話は続く。
「この世界にはレベルとステータスがある。レベルの最大は100だがそこまで到達した人間はいない。ステータスはレベルが上がるにつれて高くなる。」
どうやらテンプレ通りらしい。
この世界でのトップの人のステータスが知りたい。
「ステータスはこの指輪を付けていれば、顔の前50センチほどにステータスを出現させることができる。これは任意で他人に見せる事も可能だ。」
そう言いアレックス隊長が全員に指輪を渡す。早速織田君は付けたらしい。織田君のステータスをアレックス隊長が見る。織田君のステータスは以下の通りだ。
ーー
レベル 1
性別 男
年齢 16
筋力 200 体力 200 耐性 200 敏捷 200 魔力 200 魔耐 200 知力200
スキル
言語理解、全耐性(微弱)、光魔法適性
その他
勇者の才能
ーー
アレックス隊長はとても驚いている。この世界の人間は平均して10〜15程度が普通だ。最大でも150程度しかいかない人も多々いるのだ。その中でも異常と言えるだろう。
ちなみにアレックス隊長は全ステータス500程度だ。昔から武人の家系なのも関係しているだろう。この世界ではトップクラスである。あくまで人間では、だが。
クラスメート達も高いステータスだったらしい。皆和気藹々としている。
そんな中、織田君が質問する。
「このスキルとその他はなんですか?」
「スキルというのは習得した技能などのことだ。人によって差があるが持っていない人のほうが多いだろう。後から増える事もあるが基本的には先天的なものだ。」
「その他はオススメの職業などまぁ様々だ。しかし、勇者とは…これは期待できるな。」
そう言い織田君の肩を叩く。嬉しそうだ。
僕はハルにステータスを聞いてみる。
「ハル、ステータス見せて?」
「ん?あぁこれ。」
ハルのステータスを覗き込む。
ーー
レベル 1
性別 男
年齢 16
筋力 210 体力 180 耐性 180 敏捷 160 魔力 100 魔耐 110 知力 150
スキル
言語理解、ダメージ上昇(弱)、身体能力強化適性
その他
なし
ーー
総合的には織田君に負けているが、筋力では勝っている。何故か嬉しい。
「ミキはどうなんだ?」
「そういえば見てなかった…一緒にみよ?」
「あぁ。」
そう言いステータスを見る
ーー
レベル 1
性別 男
年齢 15
筋力 20 体力 18 耐性 15 敏捷 23
魔力 21 魔耐 21 知力 1246
スキル
言語理解、識字理解、???…
その他
???…
ーー
「…。」
「…。」
二人して黙り込む。
ステータスはこの世界での一般人レベルで、まともな戦力にはならないだろう。
しかし、異常なくらいの知力の高さと、???の多さが僕を不安にさせる。
どうやら普通の冒険者生活は送れそうになさそうだ。