召喚-2
クラスメートが8人程いた。
親友の姿も確認する。
突然の事にびっくりしてしまい、立ち止まってしまう。
しかし、すぐに冷静さを取り戻し歩み始める。
まぁ異世界召喚されている時点で、驚きすぎてどうでもよくなっていたのだが…
クラスメートの場所まで行くと、すぐに皇帝の方を向く。
今は召喚された理由のほうが先だ。
それにクラスメートとは話したくない。
というか話せない。
あなたは、体験したことがあるだろうか?せっかく話しかけてくれてもろくに返事することも出来ずただ空気が重くなっていく感じを。
だから極力話さない。関わらない。
それが僕のモットーだ。
「改めてよく参られた、勇者らよ。今から教皇殿より説明がある。心して聞くように。」
皇帝がそう言うと、1人の男が出てきた。髪は白髪で年齢は70歳くらい。柔和な顔つきで皇帝よりも好ましい。
「皇帝様より紹介いただきました、エレム教教皇タイランドと申します。以後お見知りおきを。」
そう言うと、こちらを向き頭を下げてきた。
「どうか我々をお助け下さい。」
タイランドの話を要約すると以下の通りだ。
この世界には、複数の種族がいる。人間、亜人、魔人、エルフ、ドワーフ、龍人などだ。ただこれらの種族は太古の昔から争ってきた。何度も戦争を繰り返し、そのために種の数を減らしてきた。そして、ついに300年前、エルフは森へ、ドワーフへ鉱山の地下へ、龍人は山の隠れ里へ、それぞれひっそりと暮らすようになった。しかし、人間と魔人は争い続けた。亜人は捕らえられ、人間の奴隷として、使われた。始めは数の多い人間が優勢だったらしい。が、身体能力の秀でた魔人は一騎当千のごとく暴れ、今、人間は魔人に押されているのだという。いくつもの町を破壊され、兵士も沢山死んだ。高レベル冒険者達も魔人には勝てず大怪我を負っているらしい。そうした状況を打破するために、使用されたのが異世界召喚術だ。異世界の人間は過去にも召喚された事があり、魔人と渡り合えるだけの力を皆持っていたらしい。ただ召喚する時に膨大な魔力を消費するため、帝国魔術師のほとんどが、動けなくなった。賭けだったのだろう。ただそのおかげで、僕たち9人を召喚できたのだという。
「…ですから勇者様方には、我々の代わりに戦って欲しいのです。お礼ならいくらでもいたしますのでよろしくお願いします。」
そう言い、またしても頭を下げる。
皆はあまり理解していないらしい。
まぁ当然だろう。
普段からライトノベルなどで知識を持っているならまだしも、一般人にはわかるまい。
ただ、僕の他にも一般人じゃないクラスメートがいた。
僕の親友である長門 波留だ。
ハルが質問する。
「状況は理解しました。
人間が危ないという事も分かりました。しかし、俺たちは元の世界に戻れるのですか?」
一瞬タイランドの視線が揺れた。
「…いいえ。戻る事は不可能です。今は帝国魔術師の魔力が、底をついています。戻るためには20年…いや、30年はかかります。」
途端にクラスメートは、騒ぎ始める。
「帰れないってどういうことだよ!」
「勝手に召喚しておいて…!」
「つーか、召喚とか意味不明なんですけど!」
「エルフとか、ドワーフとかいるわけないじゃん、馬鹿なの?」
思い思いに怒りを吐き出すクラスメート達。怒りは止まることを知らない。
僕とハルは無言だった。
タイランドは無言だった。
そんな時、
「みんな、止めるんだ!この人達も困っていて仕方なくしたのだろう!」
クラスメートの1人が声を上げた。
彼の名前は織田 航。顔よし、頭よし、性格よしの完璧超人だ。クラスでも委員長をしており先生、生徒ともに信頼は厚い。
「けどよ…」
「帰れないって…」
「まだ分からないじゃないか。それに何か方法があるかもしれない。タイランドさん、何か知りませんか?」
タイランドは少し考えながら、
「魔人の長である、魔王を倒せば我らが主神であるエレム様が元の世界に戻して下さるはずです。」
と答える。
すると皆どこかホッとした。
「ほら、大丈夫じゃないか。皆焦りすぎだよ。」
織田が言い、皆落ち着いたらしい。
皆を見たタイランドは一瞬不敵に笑う
。
それに気付いていたのは、僕とハルだけだった。




