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クラウンクレイド  作者: 茶竹抹茶竹
【零和 拾伍章・それが汝の罪であるなら】
189/220

[零15-3・本質]


0Σ15-3


 私が聞き返すとクニシナさんは頷く。


「かつての人類の過ちに人々は理由を求めました。旧態じみた社会制度、感情や言葉や表現の在り方、道具の使い方、それらを変えてしまえば人は次のステージに立てると人々は信じたのです」


 それも進化と呼ぶのだろうか。私達には人であるが故の様々な問題があって、それを超える為に社会を変えようとした。暴力が無くならないのなら、それ自体を社会から隔離して消し去ってしまおうとした。人が暴力というものを持っている事を忘却させてしまおうとした。

 それはまるで、何処かの「聖域」と同じ様に私には思える。


「それでも世界中に悪意と悲劇は散らばってしまいました、先進国での食糧危機が終息し世界に平穏と繁栄がもたらされるまで。食糧を奪い合う為に始まった争いは様々な思惑も呑み込んでいった」


 2052年のインドとパキスタン間の戦争勃発が確かに始まりに見えるかもしれない、と彼女は言う。

 食糧を奪い合う経済戦争に武力戦争が混じり、それは巨大なうねりへと変わって水、領土、民族、宗教と様々な理由が巻き込まれていく。そして世界の隅っこだけだったのが、テロという形で世界中にも撒き散らされた。

 けれどもそれは突き詰めれば人の本質から始まっている、と彼女は語る。


「結局どうやって押し込めても人の本質は変わらなかったのです。人が人である故に私達は暴力と悪意に向き合わなければならない、それは無自覚では為され得ないと人々が考えを改めた」

「無自覚では為され得ない、ですか」


 ウンジョウさんの言葉を思い出す。無責任でも無自覚でも生きていける、それが成熟した社会だと。そして、それ故に人は繰り返してしまった。

 人々はゾンビという脅威から逃れる為に空を目指した塔へと向かった。安全で清潔な聖域で人々は満たされた生活を手に入れた。

 けれど足元の地獄を追い出し忘れても、世界は何も変わってなどいない。世界に悲劇をばらまいたのは、機械仕掛けの神による悪意だったとしても。人々はまた繰り返した。

 会話が途切れて沈黙が訪れる。クニシナさんが話を変えた。


「それとムラカサ氏の部屋からは幾つかの資料が見つかりました」

「資料?」

「彼女はとある研究者の関係者であったようです」


 その研究者の研究内容についての資料であった。食糧危機を解決させる為に人類の肝臓をナノマシンにより変異させるという研究。細胞のDNAを書き換え、肝臓の代謝を上げる事によりその変異を急激に引き起こす。変異した肝臓は取り込んだ栄養分を超超高分子化合物に変化させる機能を獲得し、それにより従来のヒトと比較し同じカロリーベースでも長い活動時間を得られるというものだった。

 そして懸念される課題として、身体での拒絶反応が起きる為に体表に変化が見られる、とも併記されている。


「……ゾンビと同じだ」


 かつて明瀬ちゃんが語った仮説。何故、絶食状態でありながらゾンビは長期間活動が可能なのかという疑問への回答。

 食料問題解決の為に、人の内臓機能を変異させようとした研究と同じ構造をしていた。


「これも誰かの祈りだったっていうのか」

「祈り……だったのでしょう。きっと何もかも」


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