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おまけの後日談1 夏季休暇の前に緊急事態のようです。(中編)

すみません…一話増えました。次でラストです。

 

…――次の日。


 「んんーっ! よく寝た! ふあーぁ…」


 両腕を、ぐーっと天井に向けて伸ばし、大きなあくびを一つ。

 いやー、簡易ベッドでも(万一に備えて、一部屋に一台折畳みタイプの予備のものがあったりする。まあ、滅多に使われる物でもないから、あまり存在は知られていないみたいだけどね。正直、私もカレンから教えて貰うまで知らなかったわ)良い布団を使えば割りと良く眠れるものだね!


 外からは…ピチチチと。鳥の鳴き声が聞こえて来ていた。うん、爽やかな朝だ!


 「えーとー、カレンは…」


 昨日。カレンには私の部屋に泊まって貰う事になり、私の部屋に泊まっていたカレン(他の理由を知らない人から見れば、見た目がカレンの私が泊めて貰っていた訳だけどね)の顔を元に戻っているかもしれない期待を込めて、見てみると――…


 (わー…可愛らしい寝顔だこと。それに、ちゃんと布団を被っている。中身が違うと、寝相も違うみたいだね?)


 …――スヤスヤと、まだ夢の中に居るだろうリリーシャの顔が見えた。


 「戻っていなかった!」


 私はガクリと項垂れたが、こうしている場合ではない!


 バッと顔を上げて。カレンには悪いけれど、今すぐ起きてもらう事にする。


 パーティーは今日の夜からだ。移動時間もあるから出来れば夕方までに。ある程度は『リリーシャ』としての振る舞いをカレンに覚えて貰わないとならない事に気がついたのだ。


 「カレン、カレン。起きて、起きて下さいませ」


 幸い、昨日今日と私付きの従者と侍女は(何気に、一人ずつ付いていたりする。一応、侯爵家の娘だからね)ルルーシャの誕生パーティーへ参加する私の準備で忙しい為、あまり干渉はして来ない。

 従者は私が書いた手紙を実家へと届けに出た為、昨日の昼過ぎからは不在だったりする。侯爵家から、すぐに折り返させるのは大変だろうから、昨日は屋敷で待機という形にし、今日実家が寄越す送迎の馬車でまた一緒に戻るよう言ってある。

 うん? 侯爵家からの返事はって? 手紙には私のサインの他にヴォルティス様のサインも貰ってあるから、オッケーなのは間違いないと思う。


 「んー…セルジュ? まだ…ねむいよぅ。んんん……あと、ごふん。ごふんで、いいから……ね?」

 「違うよ!? 私、セルジュじゃないから!? 起きて、カレン!」


 フニャフニャ、ムニャムニャ言いながらリリーシャの顔で笑わないで下さいっ!


 そして、スリスリと猫のように私の手…いや、カレンの手だった! じゃなくて!! 顔を擦り付けないでーっ!? 何この可愛い生き物!? そりゃ、セルジュ溺愛するわ!! だって、見た目がリリーシャなのに、可愛いもんね!!? て言うか、カレン! 寝ぼけて『セルジュ』言っただけ!? それとも二人は越えちゃってんの? 一線越えちゃってんのぉお!?


 …――ウン、ちょっと混乱したわ。聞かなかった事にしよ。


 「…カレン? カレンさーん? 起きて下さい! ふあっ!? それ以上擦り寄っちゃダメだから!? う〜〜っ、起きろっ!! カレン・シュテナード!!」


 何気に初めてカレンのフルネームを叫ぶと―…


 「ひゃいっ!?」


 寝ぼけていたカレン(外見はリリーシャでしてよ…)が、ベッドから飛び起きた。


 「…おはよう、カレン」

 「へ? ひゃ!? リリーシャさまっ、おはようございます!」


 あ。普通に私の部屋に泊まっていた事を忘れていたね?




 身支度、朝食を済ませて。私とカレンは私のお気に入りの場所、裏庭へと来ていた。(あの、破壊力抜群の寝ぼけたカレンについては触れないでおきました…)


 そして、間もなくヴォルティス様とセルジュもやって来てパーティーの為の打ち合わせをする事になった。


 「ん? リリーシャ。お前何だか随分と疲れていないか? 流石にお前でもあまり眠れなかったか?」

 「いえ、睡眠はバッチリ取れましたよ…」


 ヴォルティス様が私の顔を覗き込もうとしけれど『カレンの身体に、あまり近寄らないで下さいね〜』と、セルジュが間に入ってきた。


 「セルジュ。今度は貴方が近いですわ」

 「あ、失礼しましたー!」


  さて、と。


 「時間があまりありませんから、説明させて頂きますわね。カレン、迷惑をお掛けしますが宜しくお願い致します」


 カレン(見た目、自分だから変な感じがするけど)にペコリと頭を下げる。


 「うっ、が、頑張りますっ!」


 両手にグッと力を入れ、握り拳を作りながら頷くカレンに、私は『リリーシャ』として、これやっとけば大丈夫だから! 後は何とかなるから! と。(口に出してはいないよ)振舞い方を教えた。




 「はい! それじゃリハ行きまー…ではなくて。先程お教えした事をやってみましょう! では、ヴォルティス様も宜しくお願いします」

 「あ、ああ。わかった」

 「それでは…」


 私はスウッと大きく深呼吸をして――…


 「まあ! リリー姉様っ! お久しぶりですわっ!」

 「こらこら、ルルーシャ。はしゃぎすぎだぞ? ヴォルティス殿下もいらっしゃるんだ、ちゃんとしないと駄目だよ? 殿下、失礼致しました。本日は妹の誕生日パーティーにお越し下さりありがとうございます。…ほら、ルルーシャもご挨拶を」


 私はルルーシャの役を演じる。セルジュは私の隣に立ち、義兄の役を演じてくれている。


 ちなみに台本がある訳ではなく、恐らくこういう感じの会話が繰り広げられるだろう、と予想をしての練習だ。

 義兄については妹の近くに居るか分からないけど、もしかしたら居るかもしれないという事も考え、セルジュに任せてみたんだけど義兄の口調そっくりだ。(やっぱり『真愛』をプレイ済みなのか?)


 それにしても。セルジュが何だかちょっと楽しそうに見えるのは気のせいだろうか?


 「はぁい、お兄様。あっ、失礼しました。ヴォルティス殿下、この度は私の誕生日パーティーに足をお運び下さりありがとうございます。今日はどうぞ楽しんで行って下さいませ」

 「あ、ああ。その、二人共そんなに畏まらなくて良い。今日の主役はルルーシャ嬢なのだからな。誕生日おめでとう、ルルーシャ嬢」

 「おっ、おめでとう! ルルーシャ! そのドレスとっても可愛らしいわ! ル、ルルによく似合っているわ!」

 「ありがとうございます、ヴォルティス殿下。姉様もありがとう! 姉様のドレスもとても素敵だわ!」

 「それでは、私達はハーシェル夫妻にも挨拶をしてくるとしよう、リリーシャ」


 あ。ヴォルティス様、公式行事モードだ。流石に公の場でいつまでも『俺様』言ってるのは痛いもんね。(学園や私達の前では『俺様』のままだけど)


 「は、はい。殿…ヴォルティス様。ありがとう、ルル、また後でね。あっ! そうそう、学園の友人で貴女に紹介したい方達がいるのよ。手紙にも書いたけれど、可愛いルルを見せたくて!」

 「うふふ。可愛いだなんて、私照れちゃうわ! 姉様が紹介したい方達? どんな方達かしら? 楽しみにしているわ! 姉様」

 「ええ、少し待っていて下さ…待っていてね?」

 「そ、それでは行こうかリリーシャ」

 「は、はい。で…ヴォルティス様」


 うーん。ヴォルティス様とカレンは何だか、すっごく固く見えるけど本番(本物の誕生パーティー)では、上手くやってくれる! と、信じたい。と言うか、この様子ではヴォルティス様もカレンをフォローする余裕ないだろうなー。


 ここで私はパンパンッと手を叩いた。はい、カーット! って、感じです。


 「はい! とりあえず台詞だけは大丈夫そうです! 大体こんな感じになると思いますわ。ですが、ヴォルティス様もカレンも意識しすぎですから、もう少し自然にお願いします」


 二人は少し疲れた表情で頷いた。


 「それで、ハーシェル様。僕達はどうします?」


 ルルーシャ様への『カレン』と僕の挨拶も練習しておきますか? とセルジュに問われて。


 「うーん。練習はしなくても大丈夫でしょう。それより、ルルだけではなく…近くに居れば兄様にも二人を紹介する事になると思うから、その練習をしておきましょう」






 ハーシェル家へ向かうまでの数時間。念入りに打ち合わせ(と言う名の演技指導?)は続きました――…。


ここまでお読み下さりありがとうございます。

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