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おまけの後日談1 夏季休暇の前に緊急事態のようです。(前編)

時期的に最終回から数日後の話になります。

 それは、もうすぐ夏季休暇という時期のある日の事だった。


 今居る場所は食堂のオープンテラス(校舎裏の次に好きな場所だったりする)で、私とヴォルティス様、カレンとセルジュの四人で席についているのだけど――…








 あー…今日も太陽が眩しいなー。気温も高いし、こんな日はアイスとか食べたいよねー。あ、それかアイスティー飲みたーい。


 「おい、リリーシャ。姿勢が悪いぞ。それに阿呆みたいな顔をするな!」


 ペンッと。いつもよりは抑えられていたけど、頭を叩かれた。誰にって? ヴォルティス様に。


 「いったぁ…」


 私は頭を擦りながら。ヴォルティス様をジロリと睨んだ。


 「少しの逃避位、見逃して下さいませ」

 「今は、そんな場合じゃないだろう!」

 「て言うか、今。彼女カレンの頭を叩きましたよね? 僕のカレンの頭を叩かないでくれます? 王子」


 おおぅ。黒い! 笑顔の裏に黒いオーラみたいなものが見えるよ、セルジュ。あ。今、セルジュが『カレン』と言った事については、間違いではなかったりする。


 「む。すまない。つい」


 そんな様子をオロオロしながら見ていたのは、ここまでで、まだ言葉を発していないリリーシャだ。そう『リリーシャ』だ。


 ん? リリーシャは、お前だろって? うん、まあ…そうなんだけど。


 「あ、あのっ! 皆さん、とりあえず落ち着きましょうっ! ねっ?」


 眉を下げ、困り顔で言葉を発したのはリリーシャだ。


 まあ…正確に言えば、現在リリーシャの中の人となっているカレンだけど。


 「そうですわね。まあ、冷たいお茶でも飲みましょう。喉も乾いてきましたし」



 そして―…


 「おーまーえーはー! 呑気すぎる! 何故そんなにも余裕があるんだ!?」


 またもや、ヴォルティス様から叱られているのは見た目は美少女のカレン。そんなカレンの中の人がリリーシャだったりする。


 「ヴォルティス様は暑苦しいですわね。いえ、余裕はありませんわよ? ただ喉が乾きを訴えているものですから。ねぇ、カレン? カレンも喉が乾きますわよね?」

 「えっ、ええと。そう、ですね?」


 …――そう。私とカレンは、何故か朝起きた時点で人格が入れ替わってしまっていたのである。






 あ。頼んだお茶が来たようだ。ズズー。ぷはー、生き返るね!


 「だから、音を立てて飲むんじゃない! しかも今のお前の姿はカレン嬢だからな?! そこのところ気をつけた方が良いぞ!」


 やばっ! そうでした、そうでした!


 「コホン。ごめんなさいね、カレン。うっかりしていましたわ」


 だら〜っとまでは行かないけれど、それに近い体勢を取ろうとしていた私は背筋を伸ばした。


 「い、いえ。何だか自分の姿で謝られるというのは不思議な感じです」

 「私も、仕草が可愛らしい自分を見るというのは何だか不思議ですわ」


 そう言いながら。お互い顔を見合わせて『本当に困りましたね』と笑ってしまった。


 「あれ? お茶を音を立てて飲むカレンとか、珍しくてかわいー…いやいや! 王子、睨まないでくれます? あくまでも可愛いのはカレンですからね!?」

 「…解っている。俺様も先程、大人しい見た目のリリーシャに少し心を動かされ掛けていた」

 「複雑、ですねぇ」

 「全くだ」


 ウンウン、聞いているこちらとしても複雑だ。


 「それにしても、本当に何が原因なのかしら? 困りましたわね」


 頬に手を添えて首を傾げる。実は、明日は妹のルルーシャ(ちなみに母の名前はララーシャだ。レレーシャとかロローシャは居ない…筈。それにしても、名前が適当すぎやしないか制作スタッフ!)の誕生日パーティーがある為、姉である私は勿論だが、私の婚約者としてヴォルティス様も顔を出してくれる事になっているので、明日は私の実家に行く事が決まっている。


 そんな時に起きてしまった緊急事態。こんな状態で、どうやり過ごすか…もしくは、何とか元に戻れないかを、話し合っていました。うん、前置き長くなったなー。


 「わ、私には無理ですっ、リリーシャ様のフリなんてできません!」


 ふるふると頭を左右に振るカレン(外見は私)に、ヴォルティス様が優し気な笑みを浮かべながら『そんなに気負う必要はない。俺様もフォローしてやる』とか言うものだから。


 「チッ」


 あ。今の舌打ちは私じゃないよ。セルジュね、セルジュ。


 「まあ、気持ちは解るけど…うーん」


 いっそのこと、私の友人達にどうしても可愛い妹を見せたかったのだとか何とか理由をつけて、カレンとセルジュもルルーシャの誕生日パーティーに招待してしまうというのはどうだろう?


 まあ、とりあえず今は――…


 「距離が近すぎますわ、ヴォルティス様」

 「むぎゅ」


 ヴォルティス様の顔面を手のひらで押して、リリーシャ(中身カレン)との距離を離しておいた。


 そして、ヴォルティス様の顔面を押したカレン(中身リリーシャ)の手のひらは今、横で無言のまま、ゴシゴシとセルジュがハンカチで拭っていた。(地味に痛い。そして、無言怖いわ!)

 『セルジュは何をしているんだろう?』とでも言いたげに、キョトンとした顔をするリリーシャ(中身カレ…もう、いいか!)に。

 私は今考えた事を提案してみたところ、了承を得る事ができた。

 それからすぐ。ハーシェル家に急ぎ、招待客を二名追加の旨を書いた手紙を出した。まあ、今更二人くらい増えても問題はないだろう。


 もしも、明日までに元に戻れたにしても。カレンやセルジュさえ良ければ、パーティーに出てもらうのも楽しそうかな? なんて思った。(ルルーシャは、まだ社交界デビューはしていないし、内輪のパーティーだから、そんなに気取る必要も無いし!)


ここまでお読み下さりありがとうございます。もし宜しかったら後編も、お付き合い頂けたら有難いです。

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