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乙女ゲームは、別のところで始まっていたようです。

次でラストの予定です。

 ヒロインは既に別の攻略対象と、くっついていました。   

                           完



 って、いやいやいや!終わってないよ!ちょっと、動揺していたよ、私。


 まさか、庶民の特待生(ヒロインの幼馴染みだね)と、くっついているとは――…!

 もう既に恋人になっているって事は、ヒロインも転生者? 転生者なのか!?







 それは、暑い夏の季節が近づく、日差しが眩しい午後の時間帯の事だった。


 授業が休講となった為。私は昼休みから、お気に入りの場所で本を読んでいた。

 校舎裏の端の方なんだけど、大きな木があるから寄りかかれるし、丁度人目にも触れなくて落ち着けるんだよね。



 それで、冒頭さっきの続きになるんだけど。



 まあ、私には関係なさそうだし、転生者かそうでないかに関しては、どっちでもいいか…と、私は思った。驚いたけど。凄く驚いたけど。


 この庶民の…って言うの長いな。実は幼馴染みルートと隠しキャラルートでは、リリーシャは殆ど関わりがなかったりする。

 逆に第二王子と義兄のルートでは、ほぼ関わってくる。それはもう『いい加減ウゼェなこの女』と言う位に。


 幼馴染みルートならば、せいぜい序盤辺りで『あら? ここは庶民臭いですわね? まあ! 貴女が庶民の方でしたの? あまり私の近くには寄らないで下さいませね。庶民臭が移ったら困りますわ』とか嫌味を言う位。リリーシャは途中で、いつの間にかフェードアウトしていた。


 その代わりに別の悪役が、それぞれに居るのだけど上手く行っているのならば、良かった良かった。


 別に私はヒロインの事を嫌ってはいないし。当然、序盤(入学時ね)から嫌味を言ったりもしていない。

そもそも、探したりもしなかった訳だけど。(いや、ヒロインがもし、よくある悪役ヒロインやら、転生者のお花畑電波で、逆ハーや、第二王子もしくは義兄狙いなら向こうから近寄ってくるだろうと思っていたんだよね)


…――なんて事を。


少し先の場所で、イチャコラとラブシーンを繰り広げている、爽やかな雰囲気のイケメンと、守ってあげたくなるような美少女を見ながら思い出していると。(まあ、ぶっちゃけヒロインと幼馴染みの二人なんですけどね)


 頭上から小声で『おまっ、何を覗き見しているんだ!? 下品だぞ!』と、第二王子が頬をほんのり赤く染めて私に注意してきた。

 しかも、ベシッと私の頭を叩いてきやがった。後で覚えてろ。


 ちなみに私が居る場所は、ヒロイン達が居る場所から死角になっているので問題はない。(見つかるか見つからないかの意味で言うのならだけど)

 ただ座って読書をしていただけなんだけどなー。


 『…別に好きで見ていた訳ではありませんし、流石に外で行為には及ばないと思いますよ? まあ、万一に始まりそうになったら帰ろうとは思っていましたけど。他人のを見る趣味などありませんし…と言うか、私の方が先に居たのですよ? それに殿下こそ、いつからいらしたのです?』


 ヒソヒソと話しているせいで、第二王子との距離が近い。第二王子は木に片腕を付いて屈み込むような姿勢で私と話している。

 おいおい。これ、誰かに見られたら誤解されるんじゃないの?


 あっ。一応、婚約者だったね。


 『今だ。お前が俺様との約束の時間になっても来ないから探しに来てやったんだ』


 そう言えば。今日はこの前、私が全勝したボードゲームの再戦を申し込まれていたんだっけ?


 『それは、失礼しました。探しに来て下さりありがとうございます、殿下』


 そう言うと。第二王子は一瞬、目を点にした。


 『…なんです?』

 『あ、ああ。お前が俺様に礼を言うとか珍しいと思ってだな』

 『私だって、お礼位言いますよ』


 コイツは私の事を何だと思っているんだ。


 『…まあ、いいです。それでは、戻る事にしましょう。ああ、そうだ。探しに来て下さったお礼にハンデを差し上げましょうか?』

 『いらん! 俺様はそんなの(ハンデあり)で勝っても、全く嬉しくない!』


 私は開いたままの本をパタンと閉じて、立ち上がろうとした…その時。


 『あら? 殿下、少しそのままで。頭に葉っぱが付いていますよ』


 ちょっと間抜けに見えなくもない。小さく笑ってから、第二王子の頭に手を伸ばすが届かない。


 『もう少し、屈んで頂けます?』

 『ん? ああ、わかった……え!?』


 そう返事をし、第二王子が屈もうとした時。ズルッと。木に手を付いていた第二王子が、その手を滑らせ、バランスを崩し、私に覆い被さるように倒れ込んで来る様子に、私は思わず目を瞑ってしまった。



 ドサッ!!



 草の上に倒れ込んだ音、ヒロイン達に聞こえていないとイイな―…


 少しばかり逃避していると、至近距離で眩い金髪と澄んだ碧眼の持ち主が、目をこれでもか!と言う位に見開いたまま、私の事を見下ろしている。

 ついでに顔色は真っ赤です。ちょっとでも、どちらかが動けば口と口がくっついてしまいそうな距離。


 「なっっ!?!!?」

 「………あの」


 おいおい。貴方は、ゆでダコですか。


 「な、ななななんだ!?!!?」

 「………さっさと退いてくれます?それと。私の胸の上に置いている手も退けて下さいます?」


 第二王子は、この言葉に対し、ぎこちなく目線を自分の腕から手へと持って行き、その先にナニがあるのか気がつくと。

 ビクウッと痙攣でも起こしたかのような反応をして、身体を起こしたのと同時に手を離した。


 「すっ、すすすすすまないっ!?!!?」


 自分よりパニック状態の人が居ると、自分は冷静になるってアレ、案外当たってるなぁなんて思いつつ。草の上から、私も身体を起こした。


 うーん。顔を真っ赤にして、訳の解らない事を叫んでいる第二王子。ふむ、ちょっとからかってやろう!私も、黙っているのは何だか気恥ずかしいし!


 「やーだぁ! もう、第二王子ったらエッチー! 恥ずかしくって、私お嫁に行けなーい!」


 両腕で自分を抱き締めるようにし、クネクネと身体を動かしてみる。

 

 第二王子は普段のように『ふざけるな!』とか『気色悪い真似をするな!』などと言い返してくる事はなく、視線をそらしたまま『…すまなかった』とだけ言い、走り去って行ってしまった。


 「ええー…何だ、あれ。やりすぎたかな?」


 そんな第二王子の背中を見送りながらの独り言に、返事が返って来る事は――…


 「うーん。そっか、そっか。王子は無自覚だったのか。となると、今は複雑な心境だと思いますよー?」


 …――あったようだ、返事。


 え? 誰? 今までの見てたの? は、恥ずかしいわ!


 「だ、誰!?」


 振り向いた先に居たのは――…


 「ハーシェル様。初めまして、ですね。さっき僕達の事も見ていましたよね? ですので、見てしまった事に関しては、お互いに黙っていましょうね?」


 おおう。ヒロインの幼馴染みにして、何故か既にヒロインと、くっついているイケメン――…


 「あ、申し遅れました。僕はセルジュ・マーロと申します」


 …――うん、知ってるよー。ゲームの画面越しに、よく見てたよー。わー、本物(?)カッコイイなー。





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