討たれた英雄
これもまた夢で見たものを小説風にリメイクしました
ガッツリバトルですね
ではどうぞ
目の前にいたのは、この世界を崩壊へと導いた張本人だった。
見た目年齢は40をすぎ、衰えふているのかと思えばそうではなく。
突然現れたかと思えば、重い鉄の剣を難なく振り回し始め襲ってきた。
大切なものを守るためにとった剣は木製。
得体の知れない力を持った男と、2人を守るためにその剣を抜いた女。
剣を交え力を避け、交戦し、今に至る。
(な、なんなんだよあいつ。変な力……見えやしない)
数メートルの距離をとって無駄に重い剣を構える。
おかしな力を使う男はあいも変わらず笑みを浮かべてそこに立っている。
辺りは既にガラクタと瓦礫の山とかしていた。男が全て力をぶつけて壊したのだ。
下敷きにならないように避けるのは至難の技だった。
「なんなんだよお前!」
体制を低くしながら叫ぶ。その周りには緑色の気味の悪い幼虫のような生き物が徘徊している。
「何って、なんでもないさ。俺はただ、君を殺したいだけ。君は俺には勝てない」
不敵な笑みを浮かべてそういうと、男は傍の巨大な幼虫もどきに手を伸ばし、
「見ているといい」
そういうと幼虫もどきの体内に手を突き入れる。すると幼虫の体が黄緑色からオレンジがかった赤い色に変化。
その様子に思わず目を見張った瞬間、男はその変色した幼虫を引きちぎり口の中に入れたのだ。
「っ!」
その行動が、何を意味しているのか、はっきりとは理解できなかった。しかし、止めなければ取り返しのつかないことになる、そんな感覚が体を貫き、女は走り出していた。
硬い木製の剣を、下からなぎ払うように構えながら疾走する。
その間に、男に食われた幼虫もどきはまるで吸い込まれるように男の口の中に入り込んで行く。
(っ! 間に合えっ!)
全てが吸い込まれる前に、女は男のすぐ目の前まで走り込んだ。
瞬間、走るスピードは緩めずに、下段に構えていた剣を上に薙ぎはらった。
——ッッッ!!
す
すると視界いっぱいにあちらこちらで徘徊していた幼虫どもが速いスピードでこちらに襲いかかってこようと迫ってくる。
「くそ!」
一番最初に襲いかかってきた幼虫を剣で切りつけ、その動きを止めずに後ろ回し蹴りで次の奴を蹴り払う。
体制を低くし、自慢の筋力で空に跳躍。上から襲いかかろうとした一匹を上から切りつけ地面に叩きつけ、後ろを取ろうとしたに匹を振り返りざまに一閃。
そうして数を減らしては行くものの、もともとの数が数なだけにキリがない。
標的である男は女が苦戦を強いられているその奥で悠々と高みの見物を決め込んでおり、そこまでの距離も遠い。
後ろには2人。前には数え切れないほどの幼虫もどき。
仮にここを動けば後ろの2人が危ない。かといって、こいつら全員を始末している体力もない。
「全く。しぶといですね。さっさと死ねば良いものを」
「ふん!おまえのいいなりに、なってたまる、っかよ!」
目の前の幼虫をなぎ払い、跳躍して幼虫の上に一度着地。そこから大きく飛び上がり、上段の構え。
「っはぁぁぁっ!!」
降下の力と合わせて思い切り振り下ろすが、受け流される。
剣を右下に振り下ろされる形になった女はそのまま下段からの攻撃。しかしこれも受け流されてしまう。
そんな風に、こちらから仕掛けても受け流されてしまうという交戦がしばらく続いた。
「どうした。これでは退屈しのぎにもなりはしない」
「くっ! だまっ……ガハッ!」
次なる攻撃を食らわせようとした女の腹に、男の蹴りが炸裂。避けることもできずに、女は遥か後方まで蹴り飛ばされた。
「もういい。お前相手にこれ以上時間を割く意味はなくなった。かつて最強を誇ったという英雄、少し期待してはみたが、口ほどにもなかったな」
「なにを……」
「お前には、やはりここで死んでもらったほうがいいな」
そう言うと、いつの間にいたのか、その傍にいた幼虫に手を伸ばす。
「なっしまっ!?」
「最後だから、お前にいいことを教えよう」
驚く女を尻目に、幼虫の体内に手を突き刺してゆく。
「俺は神なんだよ。この世界に落とされた神」
突き刺された幼虫の体内が、妙に遅く赤色のような、オレンジょような色に変色していく。それはまるで、この世界の色を表しているかのような禍々しさ。
「俺はこの世界の管理者だった。しかし、戯れに争いを起こした罪として、この世界に落とされた。力も、記憶も、何もかもを奪われて」
しかしそれだけには止まらず、今まで以上にその色は幼虫の体内全てに広まってゆく。
男は話す口を止めない。
「俺はずっと気づかなかった。自分はこの世界の生きる『人』なのだと思っていた。しかし、違ったんだ」
幼虫の体が少しづつ膨張して、元の体の倍以上の大きさに膨張していく。
「ある日俺は気付いたんだ。俺は堕神なのだと、この世界の創造者なのだと。この世界を作ったのなら、どうしようと俺の自由なんだと」
膨らんだ幼虫は男の手により口に運ばれ、そうして『吸収』されていく。
男の口はふさがっているはずなのに『男の声』は止まらない。
『だからおわらせてやろうと思ったんだ。この世界の人間世界存在全て。どちらにしても壊すつもりでいた、そう大差はない。そして』
「お前達が最後だ」
突然、突風のような感覚が全身を包んだ。
重力、圧力、そんな感覚に近い力の波動。
ビリピリと肌がしびれる。やっとの思いで立ち上がっていた女は、その力の大きさに、目を見開いていた。
ドクンドクンと脈打つ鼓動が、やけにうるさい。全身から汗が噴き出す。
身体中が血の気を失い、心なしか体が震えていた。
「そ……そんな……」
構えた剣の先は誰が見ても震えていて、つぶやいた声には覇気なんてものは微塵も感じられなかった。
「そんな……こん……こんなの…………勝てるわけが……」
男はそんな女を楽しそうに見つめ、鉄の剣をわずかに持ち上げる。
通常の神経をしていたなら、この時点で剣を構えていただらう。しかし彼女は凝視したまま動く気配を見せない。
戦意喪失してしまっていたのだ。
(こんな、ここまでの力の差で……どう勝てって……言うん)
故に、男が高速で接近していることにも気付きはしない。
ハッと気付いた時には自分の首にぎらりと光る剣が突きつけられ、男はその耳元で一言囁く。
「お前の、まけだ」
女の意識はそこで暗黒に包まれた。
その後、その世界がどうなったのか、2人はどうなったのか、知る由もない。
世界最強と謳われ、大戦争を勝ち取った英雄は、一人の男に討ち滅ぼされた。
一人の堕神によって世界は滅び、英雄は淘汰され、人類は滅びた。
世界は再生に向け、堕神は新たな世界の管理者によって滅ぼされた。
彼女がたった一人の生き残りとして目覚めるのは、当分先の話になるだろう。
それはまた、別のお話。
見ている最中や起きた直後は興奮がぬぐえず、そのままの勢いで弟にダイブしました。
結果たんこぶが増えました。ぐぬぬ。
ありがとうございました。