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にくい相手の死について

いつも邪魔ばかりしてうっとおしかったはずの人間が突然死んだ。

言いたいことも言えなくなった女の子の叫び

あいつが死んだと、私のもとに知らせが来たのは、少し遅くなってからだった。


 どうしてっ!?


 遅い知らせ。

 どうして。そんな疑問しか頭の中に入ってこない。

 息をきらして走る。

 どうして自分はこんなに走っているのだろう。

 あんなやつが、死んだって……。

 浮かぶのは疑問。

 吐き出されるのは苛立ちから来る悪態。

 信じられない。

 人間不信に陥っているからなのか、人の言葉が信じられない。

 これは嘘だ。

 あいつが死んだ等と。嘘に決まっている。

 あんな、ゴキブリみたいなやつが早々死ぬわけがない。

 また私をからかって遊んでいるのだろう。

 そう思うのに、体は止まらず、気づいたら葬式が挙げられているといわれていた建物の扉を勢いよく開け放っていた。

 一番最初に入ってきたのはお経だった。

 自分が嫌いな低い声で、何を言っているのかわからないことをひたすら言い続けている。それが扉が開け放たれるとぴたりとやんで、御坊は驚いたように後ろを振り返っていた。

 しかしそんなことに気をやる余裕はなかった。


 本当だった。


 そこに、どうしてか白黒の写真が大きく広げられて、花に包まれて幸せそうな笑顔を浮かべている。

 そんな写真を見て現実だと思い知り、頭の中は真っ白になり、立ち尽くしてその光景を見つめた。

 なんだよ。これ。

 いっぱいに目を見開いて、声もでないまま葬儀に出席していた親族やあいつの知り合いであったろう人々の白い視線に囲まれていた。

 しかしそんなことに気を使う余裕はない。

 まるで引っ張られるようにぎこちなく、一歩踏み出す。

 あんなに嫌っていた相手の、葬式。

 本来なら両手を上げて万歳三唱で喜んでもいいはずなのに、今あるのはひたすらの虚無感。

 それと……

「ちょっと、きみ。そんな恰好で入るところじゃない。帰りなさい」

 横から紺色の服を着た誰かが声をかけてきた。

 誰でも出席してもいいはずの葬式でも、さすがに黒い服ではない自分を入れることは許されないらしい。

 けれど、やはりそれも無視して歩み寄る。

 周りの視線を一身に受けながら、おぼつかない足取りで人々のあいまを、ゆっくりと。


なにが、おこった?

ついこの間まで、憎たらしいほど元気だったくせに。

この人達は何。

この写真は何。

この花は何。

どうしてあんたは、そんなところによこたわっているんだ。

あれだけ痛めつけておいて、やりたい放題やったくせに。


なんで死んでんだよ!!!!!!!


「っ!」

 理沙は息を詰まらせながら、近くにあったパイプいすをひっつかみ、遺影がある場所に向かって思い切り投げつけた。


なんかこういうのいいですよね

ありがとうございました

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