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一日目その二

 非常に複雑な作りとなっている王宮の奥。

 クリスを監禁しているのとはまた違った、侵入者を通さないような目的で作られている区画の最奥部。


 衛兵長はひたすら奥へ向けて歩いていく。すでに国王が普段いる場所よりもさらに奥にいるにも関わらずだ。


『雲行きが怪しくなってきたわね』


 わざわざこんな場所まで衛兵長を呼び出すというのはよほどのことだ。

 外部に絶対に聞かれたく会話。それも目撃者すら排除したいような勢いだ。こうなると、この先で得たい情報を根拠に相手を問いつけるというのは無理だろう。

 メイはそもそも他人には見えないから説明のしようがないし、証拠を得ることもできない。


 もう少し開けた場所であれば、偶然にも会話を聞いていた人がいたで通るかもしれないが、ここまで来られるとそれすらも難しくなってくる。

 どうしたものかと考えつつもメイは衛兵長の背後を追いかけ続ける。


 この区画の一番奥にある部屋はメイですら立ち入ったことのない場所だ。

 その部屋が使われるのは通常、国家レベルの緊急事態が発生したときだ。国王の身が危ないため、それの護衛と指揮命令系統を王宮が中心になるように置くという二つの目的を同時に達成するための施設だ。

 ただ、少なくともメイが生まれてから現在までそのような事態は発生していないので全く使われていないはずの場所だ。


 衛兵長は各部屋を真っすぐと通り抜けて、その部屋がある通路の入り口の扉を開ける。


 メイもそれについて行こうとするが、突如として見えない壁に阻まれてしまった。

 そもそも、メイは霊体であるゆえに壁など簡単にすり抜けられるのだが、それができないときというのも少なからず存在する。

 それは部屋に単純に霊をよけるような仕掛けがされているか、もしくはその先に何もない状態が一定以上続くかのいずれかである。


 後者についてはそのシステムがよくわからないので何とも言えないが、前者については驚くほど簡単な理論だ。

 結局のところ、その霊体がどのような意識を持っていたところで仕掛けられた結解などからすれば、どんな相手だろうと、はじくべき悪霊でありその思想など全く持って関係ないということだ。


 その理論に当てはめれば、その仕掛けははただ単に人間の道具として淡々と仕事をこなしているに過ぎない。

 先ほどまでは壁を抜けられ、人の目に触れないという利点を存分に発揮していたメイであるが、さすが王宮の最奥部にある緊急区画というべきなのか、そういったものに対する対策までしっかりと取られているようだ。

 歴史の上では敗戦色濃厚な将軍が自らの死と引き換えに悪霊が敵将を襲うように仕向け勝利を収めたという戦いが少なからず存在してる。


 そのほかにも想像上の話ではないかと言われているレベルとはいえ、死霊使い(ネクロマンサー)と呼ばれる職業の人間も存在しているとされている。それほどまでにこういった手は脅威であるのだ。

 そうなると、こういった仕掛けはそういった相手を想定してのものなのかもしれない。


 理由はどうであれ、メイはそれ以上進むことはできないのでおとなしくその周辺で誰かが出てくるのを待ってみることにした。

 この先にある部屋の出入り口は二か所あるのだが、王宮側に出ようとすると、今いる場所から出るのが最短なので犯人が王宮内部の人間である場合、この場所から出てくる可能性が高い。少なくとも、話が終われば衛兵長が再びこの場所を通るだろう。


 メイは通路がよく見えるような場所に移動して、通路から誰か出てこないか監視をし始めた。

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