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久しぶりの自室

 その後、あの部屋から続く廊下の最後にたどり着くまで何度かトラップに引っかかりそうになったのだが、メイからもたらされる情報と衛兵たちの護衛を合わせることによって何とか無傷で抜け出すことができた。

 最初は衛兵たちに当たらないように作動していたトラップが後半になって全員を巻き込むような勢いへと変化していったのは、おそらく最初のところで衛兵が命を狙っているという疑心暗鬼を生ませたうえで、クリスが一人で行動し、勝手に罠にはまるようにとたくらんでいたのだろう。

 そして、仮にメイが何かしらの理由から衛兵たちと行動をずっと共にした場合や姫が死んだことでそれを知らせようと表に飛び出そうとしたときに目撃者を消すという意味合いも込めて、まとめて処分するつもりだったのかもしれない。


 改めてそのことを考えて見ると、ぞっとするものがある。もしも、あのまま全員が死ぬようなことになっていたら真相究明も何もなくなってしまうからだ。

 そんな考えもあってか、クリスは慎重に部屋の中に足を踏み入れる。


「……部屋はさすがに大丈夫か……」


 いくら相手がクリスを殺したがっていても、自室で堂々とというのは少し考えづらい。というよりも、あの廊下のトラップですっかりと亡き者にできると思い込んでいる可能性もある。

 そう考えれば、この部屋にまでわざわざトラップを仕掛けていないというのはある意味で納得がいく。


 クリスは少しずつ周りを確認しながらベッドに到達すると、そこに腰掛けて深く息を吐いた。


「まったく、何がどうなっているんだか……」


 クリスは小さな声でつぶやく。

 現状が理解できないわけではない。


 王宮の中に自分が邪魔だと思っている人物がいる。それも、それなりに権力を持つ人物だ。


「あの……」

「大丈夫よ。今日は休みでいいわ。自分の部屋に戻るなり、ここで過ごすなり好きにしていいわ」


 いつの間にか横に控えていたアニーが声をかけるが、クリスはその言葉を遮るようにして自分の意向を伝える。

 アニーは一瞬、戸惑いを見せるが彼女はすぐにクリスの部屋の中にある椅子に腰かけた。


「あなたも物好きね」

「えぇ。あなたが例え誰であろうと、私はあなたの専属メイドですので」

「そうですか。好きにしてください」


 そういうと、クリスはゴロリとベットで横になる。


 疲れた。それが待った先に浮かんだ感情だ。

 王宮に戻ってからいろいろとありすぎた。この小さな体ではそれらを受け止めるだけで精一杯だ。


「メイ。申し訳ないけれど、話を聞くのは明日でもいい?」

『今すぐっていうほどの緊急性はないから大丈夫よ』

「ありがとう」


 そのままクリスはゆっくりと目を閉じる。


 本当に疲れた。今日までいろいろとありすぎた……


 今回の件があまり先延ばしにしてもいい問題ではないことは重々承知しているのだが、だからといってこのまますぐに対処に当たれるほどクリスは強くなかった。

 誰かが体に毛布を掛けてくれる感覚を感じながら、クリスはゆっくりと深い深い眠りに入った。

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