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メイの報告

 王宮の奥の奥にある監禁部屋。

 そこに閉じ込められたクリスとアニーはそれぞれ互いに別の壁に向かって座っていた。


 あの後、クリスは自分が今の立場に至るまでの経緯……要は自分の正体が本来のクリスと精神が入れ替わってしまった魔王でその原因を探るために今回の騒動を起こしたという話をしたのだ。

 その話のあと、アニーは少し考えたいといって自分がいる方とは逆の壁に向かって今に至る。


『ねぇさすがにあの話はまずかったんじゃないの?』


 この部屋に来てからすっかりと沈黙を保っていたメイが声をかける。

 彼女はクリスがここに閉じ込められてから、人から見えないということを利用してちょこちょこ部屋を抜け出して位偵察していたようだが、アニーがいることに配慮してこれまで話しかけてこなかった。メイとしても真実をクリスが明かしてしまったことで話しかけやすくはなったのだろう。ただし、表情を見る限りそのことをあまりよく思っていないようだが……


「ここまで巻き込んでおいて何も話さないわけにはいかないでしょう。もっとも、そう簡単に納得できるとは思えないから、彼女には考える時間が必要でしょうし……そろそろ報告を……ずっと話したかったんでしょう?」

『もちろん用意しているわよ。まさか、こんなタイミングになるとは思わなかったけれど……』


 メイは小さくため息をついた後に懐から何かを取り出して自身の前の前に持ってくる。おそらく、紙に触れられないので、代わりに用意した何かしらの記録装置だろう。

 彼女はそれを少し見てから口を開く。


『……そもそも、今回の脱走について城内ではあまり話題にはなっていないみたいね。箝口令が敷かれて誰にもしゃべられていないのか、はたまた騒動に巻き込まれたくないからと、だれもが触れたがっていないかのいずれかが考えられるわ。近衛兵があれだけ関わっている以上、脱走自体が伏せられているとは考えられずらいしね。ある意味でそこらへんはアンズの狙い通りなのかもしれないわね』

「狙い通りっていうのは何者かによって脱走の事実自体握りつぶされる可能性をつぶしたかったという認識でいいの?」

『えぇ。それで間違いないわ』


 どうやらアンズの方が一枚も二枚も上手のようだ。

 確かにあのまま普通に脱走して、国王側が何かしらの理由をつけて近衛兵に知らせず、自分の信頼できる部下のみを使ってクリスの暗殺を謀るなどといった事態があれば事件の真相は完全に闇の中だ。それは、王宮の状態が比較的落ち着いているという時点で王宮サイドがあまり問題を表にしたくないというのが現れている。


「さて、これからどうしようか。いっそのこと、ここから脱獄でも試してみる?」

『それはやめて置いた方がいいと思うわよ。確かにこの部屋には食事を持ってくる時以外兵士は来ないけれど、部屋の外には常に見張りの兵が待機しているから。部屋から出られない以上、抱き込みも難しいでしょうし、食事を持ってくる近衛兵も小さな入り口から食事をこちらに向けて入れるだけだから、会話なんてできないでしょうし……』

「はぁおとなしく解放されるまで待つしかないか……」


 クリスはこれからどうするかと考えながら、深く深くため息をついた。

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