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再び王宮へ

 勇者の姉と話をした後、結局三人は何もすることはできずにクリスが王宮に戻る期限が来てしまった。

 三人で王都を見ている間にいくらか気分は落ち着いたか、どうも帰る気には慣れない。


 前に脱走したときと同様にしっかりと拘束され、町の中を歩く。とは言っても人払いの魔法はいまだに効果を発揮しているため、その姿が市勢に目撃されることはない。ごく一部を除けばだが……

 相手としても逃げないことはわかっているのだから、ここまでする必要はないと思うのだが、ここについては国王の思惑があったりなかったりするのかもしれない。


 とりあえず、あの森の中と比べてあっさりと王宮へ帰れるのでいろいろと心配しなくても済むのはいいが、この様子だとまたしばらくは部屋に軟禁されるだろう。いや、それぐらいならまだしも地下牢にぐらい入れられても文句は言えないかもしれない。


「クリスティーヌ姫」


 そんなことを考えているとき、衛兵長がクリスに声をかけた。


「……何ですか?」

「……あなた様は何がしたいのでしょうか? こんなことをして、城下に出てまでほしいものは見つかりましたか?」


 その言葉は軽く皮肉めいてクリスには聞こえた。

 あとで捕まえていいからといって王宮を飛び出して何も持っていなかったらその疑問にたどり着くのは当然だろう。

 クリスはにやりと笑みを浮かべて、彼の質問に返答する。


「あなたが知ってどうするの?」

「それは当然ながらそうかもしれませんが、いえ、私の個人的な興味で聞くべきではありませんでした」


 軽く謝罪の言葉を語った衛兵長はそそくさとクリスから離れる。

 彼に対しての興味を失した彼女は小さくため息をついて顔をあげる。


 結果として、今回は勇者の姉の話を聞けたぐらいで大した前進はなかった。

 黒幕もわからず仕舞いであるし、これといって新しい話が合ったとは言い切れない。収穫はかなり少ないとみていいだろう。


 ただし、その中でも勇者の姉の証言は大切なので記録はしっかりと残してあるのだが……


 こうなると、問題は王宮の誰がクリスティーヌ姫を葬ろうとたくらんだかという点だろうか?

 仮に国王だとすると、現在進行形で自分の身が危うい問いことになるが、冷静になって考えてみるとその可能性は低いように感じる。

 メイが国王の振る舞いに対して違和感を感じたということはないし、そもそも魔王が中に入った姫など危なくてそばにはおいておけない。

 そうなると、次に考えられるのは国王に近しい権限を持つ者。例えば、クリスが妾の子供だからといって嫌っているほかの王族だったり貴族たち、各大臣たちだ。


 彼らは王宮の名前のみで手紙を出すことも可能だし、伝令兵を独断で勇者のもとへ送ることができる。勇者を激励するものだとでも言えば、だれもそれを咎めないだろう。

 そういう意味ではあの話でかなり候補を絞り込めたともいえるかもしれない。


 あとは魔王と姫の体を入れ替えられるような魔法を使える人物を探せばいい。


 そう考えると、なんとなく展望が見えてきたような気がする。


「……さて、王宮に帰ったら早速資料整理と行きますか」


 周りの兵には聞こえず、ただしメイにだけは聞こえるぐらいの声量でクリスがつぶやく。

 やや前方を浮いていたメイが小さくうなづくのを視界に収めると、クリスは真っすぐと前を見据えて王宮へと連行されていった。

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