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勇者の姉の話(前編)

 王都の端にあるスラム街の一角にある勇者の姉の家。

 家主である勇者の姉とクリス、アンズ、メイの四人が入っただけですでにいっぱいいっぱいのこの家の中は重苦しいほど重い沈黙に包まれていた。


 当然だろう。勇者の姉からすれば、突然三人に押しかけられたわけだし、クリスたちからすればどうやって切り出すべきかと慎重に探らざるを得ないような来訪理由があるあるからだ。


「……だんまりね。変な魔法使って、人の家に強引に押しかけてきた人の態度じゃないともうのだけど」


 そんな中で一番最初に口を開いたのは以外にも勇者の姉であった。

 その言葉通り、不快感を隠すことない彼女は人差し指で机をトントンと叩き続けている。


 そんな彼女の言葉に答えるような形でクリスが口を開いた。


「……失礼しました。今日、ここに来たのはちゃんと理由がありまして……」

「そう。だったら、それを早く話してもらえるかしら。私が答えられる範囲で対応するわ」


 タイミングが悪かったのか、はたまた突然の訪問があまりに気に入らなかったのかわからないが、勇者の姉はいらいらとした様子を隠す気配がない。

 だからといって、もう一度城を抜け出してなんていうわけにはいかないのでクリスは意を決して話し始める。


「私がききたいのは勇者は結局誰であったのか。そして、王国側は魔王である私と王女であるクリスの精神が入れ替わるように仕組んだのかどうかです。ここで聞いたことは口外しないと約束しますのでどうか真実を聞かせてもらいたいといったところで……」

「そういう堅苦しいのはいいわ。そうね……せっかくここまで来たのだし、これほどのことまでやっているのだから話してあげましょうか。勇者が何者だったのか……まぁもっとも、私が真実を話していることは保証しませんけれど」


 勇者の姉は表情こそあまりよくないが、とりあえず話には応じてくれるようだ。

 ただ、その話の内容が必ずしも真実でないとされる以上、多少のウソが混じったり、不正確なことがあったりはたまた、都合の悪いことは話さないということもあるだろう。

 まんまと話をうのみにしないように気を付けなければならない。


「よし。それじゃ話を聞きましょうか」

「そうですね。それではちょっとずつ話していくのでおとなしく聞いていてくださいね。どこから話しましょうか……」


 思ったよりもあっさりと話しがきけそうだ。

 それこそ、何か裏があるのではないかとすら思えてくるぐらいにあっさりとだ。


 どのあたりから話そうかなどとつぶやきながら思案する勇者の姉からできるだけ視線を外さないようにしながらアンズやメイの様子をうかがってみる。

 メイは不審そうに首をかしげていて、アンズは相も変わらず無表情で状況を見つめているといった状態だ。


「さて、事の始まりはクリスティーヌ姫が魔族に連れ去らわれたことが発覚した一週間後……王都近郊にある町の宿屋でのことまでさかのぼるわ……」


 経緯はどうであれ、勇者の姉はゆっくりとした口調で語り始める。

 その一語一句を聞き逃さないようにとクリスもメイもアンズも彼女の言葉に意識を集中させ始めた。

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