王立図書館の司書
王立図書館の中は見た目通りに広大であり、内部にいくつもの魔法で拡張した後を見つけることができた。
メイがいうにはこの図書館では約十人の司書が働いているそうなのだが、この館内でその姿を見つけることはできない。というよりも、図書館が広大すぎて数十人では足りないのではないかとすら思えてくる。
メイがいうにはそれでも事足りているから、これ以上の人員増員はないだろうとのことだが、これだけ歩き回って一人も出会わない時点で人員不足だといっても過言ではないのではないだろうか?
それはもちろん、こちらから行くと予告したわけでもないし、司書たちにもそれぞれ仕事があるだろうから一概にそうだとは言い切れないのだが、それでも一人も見かけないというのは少々問題な気がした。
「はぁ……目的の本も司書も全く見つからないじゃないの」
『まぁまぁそういわずにおとなしく探そうせばいいでしょ?』
もちろん、司書にだけ頼ろうとして本を探していないわけではない。
一応、本棚においてある本はざっとチェックしているし、似たようなジャンルの本がおいてあれば、そこの本棚は重点的に調べている。
しかし、この王立図書館は図書館を名乗る割にはあまり分類分けされておらず、だれか個人の書庫のように自身の持ってきた本を順番に置いていったというような印象を受ける。または、ジャンル分けしておいているが、本が追加されてその本棚に置けなくなったら近くとか関係なしに空いている別の本棚にもそのジャンルの本を改めて置いていったというところだろうか?
「おや、これはこれはクリスティーヌ姫様ではございませんか。図書館へようこそ。何がお探しでしょうか?」
そんなことを考えているクリスに誰かが声をかけた。
クリスがその方向へと振り向くと、そこには赤い髪が特徴の少女が立っていた。身長、体系ともに非常に小柄でパッと見ただけでは子供にすら見える彼女は困惑するクリスを前に小さく笑みを浮かべて自己紹介を始めた
「えっと……」
「あぁこれは失礼。わたくしは王立図書館の司書を務めさせていただいておりますメルと申します。以後お見知りおきを。あなた様の話はメイド長からよく伺っています」
メルと名乗った司書はぺこりと頭を下げる。
「それで、どのような本をお探しでしょうか? もし、何かあれば微力ながらお手伝いさせていただきます」
胸に手を当ててそう申し出た彼女はクリスの前に歩み寄る。
そして、彼女は小さく首を傾げた。
「というわけでして、クリスティーヌ姫がお探しの本について何かあればお申し付けくださってもよろしいでしょうか? もちろん、拒否されても結構でございます」
「拒否はしないわ。といってもちゃんと書名がわかっているわけじゃないのだけど……」
「えぇそれでもかまいません。できうる限りご助力いたしますので」
笑顔でそう告げた彼女にクリスは一瞬、メイの顔をうかがってから答える。
「……そう。だったら、昨年の魔王討伐に関する記録が書かれた本はあるかしら? できる限り多くのモノを見たいのだけど」
「はい。わかりました。それではご案内いたします」
メルは笑顔でそう答えてから図書館内を歩き始め、そのあとに続くようにしてクリスとメイも図書館の奥へと進んでいった。




