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勇者の姉の持論

 今、目の前にいるクリスティーヌがその皮をかぶった魔王であると見破った勇者の姉は不敵な笑みを浮かべたまま手に持ったティースプーンをクリスの首元に向ける。


「それで? 私の考え方はあっているのかしら、魔王さん?」

「……なっ何を根拠に私を魔王だなんて……」

「根拠を述べてほしいと。えぇもちろん問題ありません。それではゆっくりと話をしていきましょうか。魔王城で“私が”あなたと対峙したあの日から……」


 勇者の姉はそう言って、不敵な笑みを浮かべる。

 それに対して、クリスは努めて表情を崩さないように努力をする。それに一つ彼女の言葉の中で気になるモノがあった。

 “私があなたと対峙した”という一言である。


 そもそも、魔王と戦ったのは勇者であり、その姉である目の前の彼女は直接戦っていないはずだ。なのに“私が”という表現はさながら彼女が当事者であるかのようである。

 しかし、余分な発言をして彼女に魔王だと見抜かれてしまっては元も子もないので魔王は黙って様子を見守る。


 二人の間に微妙な緊張が生まれ、倉庫の中に置かれている時計の針の音がやけに大きく響き始めた。


 そんな中で勇者の姉は自身ありげな様子で口を開く。


「さて、まずは私があなたを魔王だと疑った根拠。これに関しては魔力のパターンが挙げられます。ご存知ですか? 人の容姿が一人一人違うように魔力のパターンは人によって固有であり、それは決して同じになることはない……まぁ普通は観測できないほど微妙な違いなんですけれどもね……」


 目の前に座る勇者の姉が自身の目を指差した。


「あくまで“普通は”です。でも私は違う。私は一人一人微妙に違う魔力パターンを観測し、解析し、記憶することができます。それを使ったうえで私は“あなたと魔王が同一人物である”と断言しているのです。しかも、何かしらの魔法を使っている痕跡が見られないのであなたがとっている方法は変化ではなく、憑依の類。すなわち、あなたがクリスの体をのっとっているというそういう結論に至りました。また、魔王との決戦の時に魔王からクリスティーヌ姫の魔力のパターンは感じていました。もちろん、このことは国王様に報告済みです。この意味、分かりますよね? そうそう、補足説明を加えればあの方は最期の最期まで私のこの能力については知りませんでした。まぁ王宮の人間にばれるのを恐れてコソコソと王族とは接しないようにしていたあなたは知るはずもないかもしれませんが」


 長々と持論をのべた彼女の前でクリスは状況を呑み込めないでいたいた。

 国王が入れ替わりのことを知っていた? いや、そんなことあるわけがない。そんな考えから、クリスは慎重に口を開く。


「あっあなたは何を言っているのですか? 大体、私が魔王だと知っていたら、とっくの昔に処刑されているはずですよね?」

「くすっあははっ」

「何がおかしいの!」

「あははははははははははははははっ! バッカみたい!」


 クリスの返答に勇者の姉は腹を抱えて笑い転げる。

 その様子はまるで面白おかしい喜劇を見ているようにも見える。


「あははははははははははははははははは! まさかこんな簡単に引っ掛かるなんて! あなたってホントバカ!」


 ひたすら笑い声をあげる彼女を前にクリスはわけもわからず、混乱してしまう。

 今の会話で何を間違えたのだろうか? そろろもそも、どこが引っかけだったのだろうか?

 状況があまりにもわからず、ただただ困惑するクリスの前で勇者の姉はただただ床の上で転げ回りながら抱腹絶倒していた。

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