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さらに奥へ

 暗い真夜中の倉庫の奥の奥。

 いくつかの扉を抜けて中へ入っていくと、この倉庫の広大さを改めて理解する。


 この倉庫の奥にしまわれたモノなどこの先何十年も使われないのであろう。


 現に倉庫にあるものの保存状態もお世辞にも良いとは言えないような状態に見える。


 この中を詳しく探ってみると、歴史的な発見があるかもしれないと一瞬、思ってしまうがそれも無駄な徒労に終わるだろう。

 見つけたところであの国王が何かをするとは限らないし、なによりも発見させる確率の方がどう考えても低い。


 そもそも、こんなところで歴史的な発見ができるのなら、今頃こんなことになどなっていなかったはずだ。


 クリスは小さくため息をついて、自分の歩く前をランタンで照らす。


「それにしても、どこまで行くの? そろそろ一番奥でしょ?」

『その一番奥。この倉庫の最奥部に用があるのよ。とりあえず、行けばわかるわ』

「はいはい。仰せの通りに」


 とにかく、メイは一番奥まで行ってほしいらしい。

 クリスはランタンを持ち直してさらに進んでいく。


 しばらく床を歩いていると、木の床を歩くとき独特のギシッという音が石をたたくコツンコツンという音に変わる。


 ランタンで足元を照らしてみると、足元の床が途中で木から石に変わっていることを確認できた。


 その変化に何の意味があるかわからないが、深く考えるようなことでもないのでクリスはそのまま前へ前へと進んでいく。


「それで? この倉庫どれだけ広いのよ?」

『そうね……私もちょっと把握して切れていないのだけど、私たちが目指す最奥部は一番奥にあるとびらを抜けた先にある階段を下った地下だっていうことは事実ね』

「地下って……ココって確か二階だよね?」


 クリスが確認すると、メイはすぐにうなづいた。


『えぇ。だから、ここから階段で倉庫の一階部分に降りて、そこからさらに隠し戸を通って地下一階、さらにその中にある隠し扉を通れば地下二階の目的地よ』

「いや、遠すぎでしょ!」


 あまりにも予想外すぎる返答に思わず声を荒げてしまった。


 もっとも、この王宮が無駄に広いなどという事実はとっくの昔に把握しているが、いくらなんでも一つの倉庫に対してそれほどの面積というのはいかがなものであろうか。それも、わざわざ二階から入り隠し扉が二つもあるとくれば、もはや何か隠しているのではないかと疑わざるを得ないレベルだ。


 冷静に考えてみると、メイの求めているものというのもそう言ったたぐいなのかもしれない。


 国王または王族の誰かが隠したモノか、はたまた彼女自身がしまったものか……最初の“そういえば”という言葉を考えると真っ先にその可能性にたどり着くことができた。しかし、残念ながらすぐにそこにたどり着けなかったのはある意味悔しく感じた。もっとも、それが正解かどうかなど答えが出ていない以上わからないのだが……


 そんなことを考えながら歩いていると、ようやく階段がある扉までたどり着くことができた。


 重い扉を開けて中を照らしてみると、暗闇に吸い込まれるように螺旋階段が存在しているのが確認できた。

 クリスは壁に手を当てて足元に注意しながら階段を降りはじめる。


『クリス。足を踏み外して下にいる誰かとぶつかったりしないように気を付けてね』

「あなただけには言われたくないわよ。というか、こんな時間こんな場所に誰かがいることなんてないでしょ?」

『冗談よ冗談。なんだったらマカロンでも用意する?』

「しないわよ」


 そんな風に会話を交わしながらクリスは一階へと降りて行った。

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