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王女と倉庫

 メイド長を伴って自室に戻った後、クリスはこっそりと周りの様子を確認した後に部屋を出た。

 さすがに時間が時間なので見回りの衛兵以外は誰もいないし、衛兵に会ったところで“ほどほどにしてくださいよ”と苦笑いを返されるぐらいでとがめられることの方が少ない。さすがに前みたいに王宮の外に出たり、それに相当するような行動をとっていれば話は別であるが……


 最近では夜中に王宮内を散歩しているぐらいでは何も言われない。いずれは、お忍びで町にこっそり出ることも咎められなくなるではなかろうか?


 メイ曰くもともとこれに近い状況があったとのことなので自分が特段何かをやったというわけではない。

 最初こそ、相手の顔と名前がなかなか一致しない故にメイの助けを借りていたが、最近ではそれもだんだんと必要なくなってきた。


「……クリスティーヌ様。夜の散歩もほどほどにしてくださいよ。我々以外に見つからった面倒ですよ?」


 そんなことを考えている間にさっそく衛兵に話しかけられた。

 “しょうがないお方だ”とでも言いたげな苦笑いを浮かべた彼の注意にクリスは笑顔で返す。


「はい。わかっています。ただ、少しだけ取りに行きたいものがありまして……」

「そうですか。お一人で大丈夫ですか?」

「えぇ。問題ありません。あなたは、通常通りに仕事をしていてください」

「かしこまりました。お気をつけて」


 衛兵が頭を下げて、立ち去るのを確認するとクリスは再び倉庫をめざす。

 途中、何人かの衛兵と会ったりしたのだが、それらも堂々と潜り抜け、クリスはようやく倉庫の入り口に到着した。


「それで? 何を取ればいいの?」


 クリスは扉をあけながら尋ねる。

 幸いにもこの部屋には鍵がかかっていないので中に入るのは容易だ。


 こんなに警備がされていないところに何があるのだろうかという疑問も込めてメイに尋ねる。


『奥まで言ってちょうだい。一番奥』

「はいはい」


 彼女に指図されてクリスは部屋の奥へと進んでいく。

 昼間、掃除で入った時は外からの明かりで明るかったこの場所であるが、この時間になると真っ暗で手元にあるランタンの明かりだけがあたりを照らす。一言で済ませばかなり不気味なのだ。


 昼間では何とも思わないような置物も夜の闇の中にあるととても怖いものに見えてしまう。


 クリスはなるべくそれらを意識しないようにしながら奥へ奥へと進んでいく。

 やがて、倉庫の一番奥の壁に到達すると、改めてクリスはメイの方を見た。


 彼女は言葉を発することなく、向かって左の方を指差すのでクリスはそちらへ向けて歩き出した。


「……それで? 何を取りたいの?」

『それはついてから教えるわ。というよりも、実際手に取ってみないとわからないというのもあるけれど……』

「ふーん。手に取ってみないとわからないね……」


 彼女が何を探しているのか知らないが、出してみるまで分からないというのはほぼほぼ興味本位だろう。もしくは何か見覚えのあるモノなのに中身を覚えていないといったあたりかもしれない。


 クリスはその後もメイの指示に従って迷路のようになっている倉庫の奥へ奥へと入っていく。


 あの短い掃除時間によくこんな奥まで言ったものだと思うが、冷静に考えてみれば彼女は棚の上を飛んで行けるのでそんなことは関係ないだろう。

 さすがに奥の方になってくると、掃除の手も行き届いておらず暗闇でもわかるほどほこりっぽくなってきた。


 やがて、一番奥にある扉にたどり着くと、メイはそこの扉を開けるようにと言った。


 ギギッという音を立てて扉を開けると、クリスはさらにその奥へと踏み込んでいった。

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