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宴もたけなわ

 色々とあったが夕方から始まった宴は夜中になり無事に終わろうとしていた。

 中には酔っぱらってしまっている者、宴で気分が向上して普段では考えられないであろう行動をとっている者までいるが、彼らが後日どうなるかどうかなど知ったことではない。


 せいぜい、自分の行いを思い出して顔を赤面させるぐらいだろうか?


 それにしても、あの余興は……いや、彼の名誉のためにもこれに関しては語るまい。


 そんな中、クリスはいったんバルコニーに出ただけでその後はずっと会場内にいた。しかも、極力目立たないように自分の席もしくは会場の端っこでおとなしくしていた。

 自らの兄妹のこともあるが、それ以上にトラブルを起こしたくないというところがあった。


 当然ながらトラブルを起こせば目立ってしまうし、何よりも周りに迷惑がかかる。もちろん、何か意図的にトラブルを起こしたりはしないが、それでも何も起きないという保証はない。


 とにかく、このように人が多いところで何かが起こるのはごめんだ。それは、メイも言っている。


 ただでさえ、バルコニーで貴族の知り合い(?)の顔を忘れていたのだ。会場内をへたに出歩けば、そういうタイプのトラブルが再び発生する可能性がある。

 ただそれだけだというのになんだかとても緊張していた。


 それがようやく終わるのだ。


 国王が長々とあいさつを述べる中、クリスはそれを半ば聞き流すようにして席に座っていた。

 最後に王族や貴族とともに一般民衆が帰っていくのを見送り、続いて貴族が帰っていく。


 最後に王族だけが取り残されると、会場内にメイドたちが入ってきて会場の片づけを始めた。


 クリスも帰ろうとしたが、他の王族が帰るまで待ってほしいとメイに呼び止められたため、その場にとどまる。

 彼女曰く毎年そうしているのだという。理由については教えてくれなかったが、それなりの理由があるのだろう。


 まぁそれについてはメイに尋ねないでおくことにする。聞いたところでろくな理由はなさそうだ。


 どうせまた、王宮内での自分の地位がどうのこうのという話になるのだろう。


 普段だったら別にいいのだが、今日はそういったたぐいの話を聞きたくない気分だ。

 だから、クリスは何も言わずに王族たちが退室していくのを待っていた。


 やがて、最後の一人が退室していくと、使用人たちがクリスの周りに集まり始めた。


『クリス。そのままおとなしくしていてください』


 頭上のメイからすかさずそんな声が飛んだ。

 何が起きているのかいまいち理解できないが、とりあえず彼女の言葉に従いその場にとどまる。


「クリスティーヌ姫」


 メイド服を着た黒髪の女性……メイド長がクリスの前に躍り出る。


「はい。なんでしょうか?」

「本日はまことにお疲れ様でした。使用人一同、片づけ途中ではありますが、例年通りあなた様と過ごすことを望んでおります」


 メイド長が深々と頭を下げると、使用人たちもそろって頭を下げる。


『毎年、こうして宴のあとは使用人たちの打ち上げがあるんですけれど、私もそれに混じっているんです。まぁ気軽に楽しんじゃってください』


 メイはそういうと、クリスの下を離れて天井近くまで浮上する。


 クリスは彼女を呼び止めようとするが、多くの使用人たちの目がある中でそれをするわけにはいかない。

 クリスは考え込んだ挙句、小さく息を吐いてから使用人たちに語りかける。


「今年も参加させていただきありがとうございます。みなさん、今日は立場など忘れて楽しみましょう」

「はい!」


 緊張したが、どうやら挨拶は間違えなかったらしい。

 天井に目を向けると、メイは満足そうにうんうんとうなづいている。


「それじゃ! 私たちも楽しみましょう!」


 メイドのうち誰かがそう言って、使用人たちの打ち上げが始まった。

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