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宴の始まり

 暦の上では春の始まりとなるこの日。

 王宮の外の気温はまだまだ低く、春はまた遠そうな雰囲気であるが、王宮の中ではそれを先取りするように王宮内では春の到来を祝う宴が始まろうとしていた。


 普段は民衆が立ち入ることが許されていない王宮内にはすでにたくさんの民衆であふれていて、普段はない活気に満ち溢れている。

 クリスは会う人会う人にあいさつをしながら勇者の姿を探す。


 必ずしも彼がこの宴に来るという保証があるわけではないが、彼と接触するならば皆が会場に集められて宴が始まるのよりも前の方がいい。

 宴が始まってしまえば、自分自身は席から離れられないし、その席のすぐ横には国王の姿がある。


 一応、宴の前後……民衆がいる間は近衛兵が常に近くにいるのだが、彼らは買収済みなので問題ない。ただし、王宮を抜け出すためではなく、勇者と個人的に話がしたい。彼がいたら離れてくれ。と言ったぐらいなので仮にすぐ脱走するとすれば要注意だ。


 会場となる中庭を通り過ぎると、次は先ほどとは別の建物へと入っていく。


 基本的にこの宴の間は王宮に住む人たち個人の部屋をのぞけばほとんどの場所へ入れることができ、王宮の内覧会も兼ねている。だからこそ、数日間をかけて王宮を隅々まで掃除していたのだ。


「クリスティーヌ様。勇者様は見つかりそうですか?」


 建物の入り口で警備をしていた近衛兵が声をかける。


「いえ、まだ見つかりそうにないわ」


 クリスは短く彼の質問に答えると建物の中へと入っていく。


 この建物は主に兵士や住み込みの使用人などの宿舎として使われている建物で建物の大きさとしては一番小さい。

 しかしながら、王宮のどこへでもすぐに行けるようにと、王宮のど真ん中にある中庭のすぐ横に建てられているので立地としては最高なのだろう。


 クリスは普段、入ることのないその宿舎の中を勇者を探すという大義名分の下探索していく。


 そのことからわかると思うが、クリスはもしかしたらいるかもしれない。という程度の考えでこの場所を探索しているのだ。

 まぁ理由はなんにしても、王宮内はほぼすべて開放しているのだから、勇者がいないという可能性はない。


『こんなところに勇者がいるのかしら?』

「さぁね。探してみないことにはわからないでしょ?」


 メイはこんなところまで探すのかと若干怪しがっていたが、念には念を……ではなく、しつこいようだがただ単純に興味があるから行きたいだけだ。

 魔王城ではもちろんのこと、ここでも普段ならば兵士や住み込みの使用人の生活の様子など見る機会はないのでいい勉強になると思ったのだ。


 クリスが狭い廊下を歩いていると、そこにいる民衆も兵士たちも深々と頭を下げる。


 王宮の外に出たときに気軽に話しかけてくれる人たちもさすがに王宮内だからか自分の姿を見るなり、深く頭を下げる。

 まぁクリスもこんなことで外に遊びに行っていたことが露呈しては仕方がないので他の民衆にしているのと同じように笑顔で手を振ってこたえる。


 ただ、後ろにいるメイとしてはいつ、民衆……特に子供が気安く読んでこないかどうかとひやひやしているようだが……


 そんなメイの心情など知らないふりをして、廊下の奥の方へと歩いていくと、クリスの視線にある人物の姿が入ってきた。


『勇者だ!』


 頭上を飛んでいたメイが叫ぶ。

 それと同時にクリスは勇者めがけて半ば駆け足で飛び出していた。


「勇者様!」


 クリスは少し離れたところを歩く勇者に声をかけた。

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