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森の中の野営地

 山のふもとで捕まったクリスは厳重に警護されながら王宮へと連れて行かれた。

 それは一国の姫であるということ以前に再びの逃亡を防ぐという意味合いが強いだろう。


 クリスは何度も周りを見て、脱走を試みるがそれがわかっているのか周りの兵士たちにはまったく隙がない。

 しかしながら、この森は広大だ。行きと同じく帰りもそれなりの時間がかかるはずだ。


 その間に休憩等々挟むはずだから、そこの隙をついて脱走。今度は森の外……王都方面を目指す。それがメイの頭の中で描かれている計画だ。

 その内容に関してもきっちりクリスに伝えてある。


 この計画の要となるのはいかにして隙を見抜くか、そしてそのチャンスを生かすかにある。


 今回は最初とは違い兵士に囲まれているところからのスタートなのでこっそりといなくなるよりもとにかく逃げ切ることに考えをシフトするべきだ。

 いずれにしても大切なのはタイミングだ。


『……とまぁそんなことを考えていた時代があるわけでして……』

「他人事みたいに言わないでよ」


 現在、クリスは兵士たちが野営している場所の真ん中にある木に縛られていた。

 どうやら、彼らとしてもクリスのさらなる脱走を防ぐためなら何でもするということなのだろう。そのこともあってか相手が王女だとかそんなこと関係ないといわんばかりにきつく縛られている。


「ちょっと、跡が付いたらどうするのよ?」

「問題ありません。そこを含めて国王より許可がおりております」


 クリスの抗議に隊長と思われる人物が返答する。


「どこまで許可を得ているのですか?」

「……国王様は生きていれば状態は問わないと……ただし、必要以上に傷をつけるなとは言われていますが……」

「必要以上にって……この状態は必要?」

「はい。事前に必要かと聞いたうえでやっております」


 クリスの額を一筋の汗が伝う。このまま本当に脱走した場合、状況がどんどんと悪くなっていくのではないかという予感からだ。

 どうあっても殺されることはないだろうが、それでもクリスの自由が奪われていくのだろうし、移動中も縛られたりするような可能性がある。


 そう考えると、とりあえず王宮に帰るまではおとなしくしておいた方がいいのかもしれない。


 そんなことを考えながらメイの方を見ると、彼女は静かに首を横に振った。


『何を考えているか大体想像がつくから言うけれど、逃げるなら王宮につくまでが勝負だっていうのが私の考え方よ』

「そうなるわよね……」


 クリスは必死に頭を回転させて、この状況から抜け出す方法を導き出そうとする。

 まず、力づくというのは一番とってはならない手段だ。中身は魔王でも体は女性であるクリスなので屈強な兵士たちを強行突破できるとは到底考えられない。

 そこまで考えたところでクリスはある考えに至った。


「……あのーちょっといいですか?」


 クリスはあくまで控えめに近くにいる隊長らしき男性に声をかける。


「なんでございましょうか?」


 そのことで何やら言いにくいことかと察したのか、隊長はクリスのそばにより声をひそめる。


 クリスは少し時間をおいてから彼の目を見て用件を告げた。


「あの……少しお花を摘みに行きたいのですけれど……」

「わかりました。それでは縄を解きますので少々お待ちください」


 隊長はさすがにこればかりは仕方ないといわんばかりの口調と表情でクリスの縄を解く。


 メイもクリスの意図を読み取っているのかその状況を空から静観していた。


「それでは、どこへ行きましょうか?」

「……そこらへんの茂みに行きますのであなたたちはここで待っていてください。もっとも、女性のそのような姿を見る趣味がおありなんてことはありませんよね?」


 そう言って、ついて来ようとした隊長を制止した後、クリスは野営地から茂みの方へと歩みを進めて行った。

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