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森の中の朝

 翌朝、森の木々の間からさす朝日で目を覚ましたクリスはゆっくりとその上体を起こす。

 呆然とした頭で周りを見回すと、真っ白な壁と天井、床のところに寝ていて、入り口とみられる小さな穴から光がさしているようだ。


 少し周りを見回して、自分が寝ていた場所の横で寝息を立てているメイの姿を認めて、初めて自分が王宮の外に飛び出したのだと思いだした。


「はぁ今日は無事に起きれたか……」


 別に見つかったら死ぬとかそんなわけではないが、ボソッとそんなことをつぶやいてしまう。

 思い切って王宮を飛び出してしまったが、恐らく捕まれば最後、これまでよりも不自由な生活が待っていることが目に見えている。


 一番の理想としては、国王が無関心を貫いて捜索を一切行わないということ。そうなれば、下手なことをしない限り連れ戻されることはない。


 そうなれば、クリスは王宮の事情に干渉することなく、このまま過ごしていくのだろうか?


 基本的にはどこかに隠れていて、時々必要なものがあれば町に出る。

 しばらくはそれでいいだろう。


 クリスはそんなことを考えながらかまくらの外にでて、大きく伸びをする。


「今日もいい天気……ただ、冬に飛び出したのは間違いだったかな……せめて、温かくしてからにすればよかったかも……」

『……森の中に飛び出すんだったら冬になんて勧めないわよ。まったく……まぁ春になったらそれはそれでめんどくさいんだけどね。それにこの天気も若干厄介ってところかな』


 いつの間に起きたのか、メイがクリスのすぐ上空に現れる。


「森に飛び込んだことはともかく、天気が厄介ってどういうこと?」

『足跡よ。雪が降らなきゃ消えないじゃない』

「えっ……あっ」


 ここまで来て、ようやくメイの発言の真意を理解できた。

 確かに雪が降れば対して移動できないし、そのほかにもさまざまなリスクが発生するが、雪の上に残っているであろう足跡を上から覆い隠してくれるという利点がある。

 そうなれば、森に入ったという証拠はなくなり、捜索はより困難になるだろう。


 クリスは早々にかまくらを崩して、その雪を昨日のたき火があった場所の上にかぶせる。


「だったら、移動するしかないわね」

『まっそうなるでしょうね』


 足跡で追跡されるリスクは街中だろうが、森の中だろうと変わらない。

 さらに付け加えれば森の中では他の足跡があまりないためにより追跡されるリスクを含んでいるのだ。


 クリスは念には念をと他の場所を確認してから少し急ぎ足でその場を後にした。


『クリス。どうする気なの?』

「どうするもこうするも、すでに捜索隊が出ているとしたら足跡が追われている可能性があるんでしょ? だったら、一刻も早く捜索隊を引き離した方がいいはず……そう。そのはずよ」


 クリスは自分に言い聞かせるようにそう言いながら足早に森の中を抜けていく。

 メイは相変わらず現在地を確実に確認しながらクリスの背中を必死に追いかけて行った。




 *




 昼ぐらいになると、真っ青な空に徐々に黒い雲が広がっていく。

 それに気づいたクリスは足を止めて空を見上げた。


「……降ってきそうね」

『うん。まぁ降ってきたときは恵みの雨ならぬ恵みの雪ってところかな……もっとも、捜索隊が森の中に入る前だったらっていう前提だけど……早いうちにかまくら作っておいたらどう?』

「それもそうかもね……」


 クリスはメイの意見を受け入れて足を止めてかまくらを作り始めた。

 そうしているうちに空からふわふわとした雪が降り始めた。


「まさしく恵みの雪ってやつね」


 クリスは両手を広げて、空を見上げそんなことをつぶやいた。

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