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王宮の外の森

 夜風が冷たい冬の真夜中。

 王宮の裏口に続く細い道にいつもよりも暗めの色の服に身を包み少量の荷物を抱えたクリスの姿があった。


『まさか本当に実行するとは……』


 それをあきれたような表情で追いかけるのはいつも通りふよふよと宙に浮かぶメイだ。

 彼女はなんだかんだと文句を垂れながら、次はあっちへ曲がり、そこはまっすぐと道案内をする。


 口ではそんなことはできないと言いながらも心のどこかで期待を寄せているからだ。

 こういったとき、練りに練った計画よりもこういった思い付きの方がうまくいくこともある。


 そのことを知っていたメイはあえて協力しているのだ。もちろん、失敗した暁には爪の甘い計画ではうまくいかないと学ばせる意味もあるのだが……


 結局のところ、メイからすれば計画がうまくいこうが行かなかろうが、どちらでもいいのだ。

 どうあがいたところでしばらくは戻れないだろうし、戻った時にどんな状況になっていたとしても文句を言うつもりはない。

 だからこそ、あくまで彼女のしたいように行動させるのだ。


 そんなことを考えている間にクリスはあっという間に王宮を抜けてすぐ裏にある川にひそかにかけられている木の板を渡っていく。

 おそらく、クリスが姫ではなく非力な女性でなければ間違いなく下の川に飛び込むことをお勧めする。


 それは当然、泳ぎ続けるだけの体力があれば王都までたどり着くのに一番手っ取り早い方法だからだ。


 もっとも、畑仕事をしたときの様子からしてそのような体力はなさそうなので黙っているというのが大きいのだが……


 ともかく、誰にも見つかることなくクリスは王宮を抜け出し森の中に出る。

 普段使っている脱出口はすぐに王都に出れるのだが、近衛兵に見つかる可能性が否定できない。


 単なる散歩ではなく脱走という意味で徹底的に見つからないということを徹底するとこのようなルートになるのだ。


『クリス。大丈夫?』

「うん。何とか……でも、結構な道ね……」

『でも、見つからないように王都まで抜けたいんでしょ?』

「うん。まぁそう……」


 言いながらクリスが足を止める。


「そうだ。しばらくここにいない?」

『はい?』


 クリスからの提案にメイは思わず首をかしげてしまう。


「ほら、王都まで行かなくてもこのあたりだったら隠れられるかなって……」

『いやいやいや……』


 ここは確かに森の中だ。

 しかし、古くから山の向こうから敵が攻めてくるのを想定して山の中に分け入る訓練もしているのだ。このルートを知っているか否かなど関係なく間違いなく捜索の手が及ぶはずだ。


 いや、しかし。しかしだ。


 もしかしたら、逃亡したのが姫となれば逆にこのような場所まで探さないかもしれない。


 もしかして、クリスはそこまで計算したうえで……


「なんというか野宿とか楽しそうだし。とりあえず、寝る場所探そうか?」


 色々と期待外れだった。

 メイは大きくため息をついてクリスの背中を追いかけていく。


 逃亡とかそういうの以前に遭難するのではなかろうか?


 メイはクリスの背中を追いかけながらそんなことを考えていた。


 そんな心配をよそにクリスは草木をかき分けて先へと進んでいき、メイはあとで遭難しないためにちょくちょくと星を見て方角を確かめながらついて行った。

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