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次なる刺客

 アンドレとゲームを終えた私は、これまでと同じように慎重に慎重にダンジョンを進んでいた。


 そうして、いくらかの時間が経過した時、私は再びアンドレの時と同じような扉の前に立っていた。


「……これまでの流れだと、きっとこの先に次の刺客がいるのね」

『そうね。でも、進まないと』

「うん」


 サラの身に何があったのかは知らない。しかし、あれほどの悲鳴を上げるほどのことだ。きっと、無事ではないだろう。


 しかし、それでも進むという選択肢をとった以上は立ち止まるわけにはいかない。


「……入るわよ」

『うん』


 クリスは扉に手をかけてゆっくりと押す。


「待っていたわよ。魔王様」


 すると、語尾に音符でもついていそうなぐらい嬉しそうな女性の口調で出迎えられる。


「……あなたは勇者の……姉?」

「違う違う。私は勇者そのもの……そう。強いて言うなら女勇者。もっとも、男だと偽って生活していたし、そのあたりのもろもろは姉さんと違って魔法でごまかせていたから、仲間も含めて誰一人としてこの事実は知らないけれど」


 勇者本人を名乗る少女は小さく笑う。


「……となると、あなたとは初めましてになるのかしら?」

「えぇ初めましてですね。魔王様。本来なら、私が討伐しているはずなのに今日まで生き延びている感想はいかがですか?」


 見た目こそ、クリスが対峙した勇者の姉そのものだが、こちらを見てにやりとした笑みを浮かべているその姿は、姉とはまた違う印象を与えるには十分なものだ。


「それで? そんなあなたは私と何をしようっていうわけ?」

「おや。質問はなしですか?」

「いろいろと気になることはあるけれど、私たちは前に進まないといけないから。それに、どうせ、あなたにいろいろ聞いたところで、“あの方”とやらの意向で動いているだけなのでしょう?」

「あらよくお分かりで。そうなると、アンドレたちからいろいろと聞き出そうとしたみたいね。まぁいいわ。せっかくだから、ゲームをしてあげる」


 そういいながら、勇者は木刀をクリスの前に投げる。


「勝負は簡単。その木刀で標的となっている的をひたすらたたくの。そして、先に的を壊した方の勝ち。衛兵の訓練手段としてよく用いられるゲームよ」

「あら、それはそれは……力の差を考えればずいぶんとこちらに不利なゲームを仕掛けてくるのね」


 相手は曲がりなりにも勇者だ。それなりに訓練も受けているだろう。


 それに、(おそらくではあるが)仲間たちに裸を見られても性別を偽れるような魔法を使えるということは魔法の方もたけているのだろう。


 こう考えると、ほんらいの魔法の体で挑んだとしてもかなり厄介な相手だったかもしれない。


「あぁその辺のハンデはちゃんと考えてあるわ。私は的を三つ壊して一回の勝利。あなたは私が的を三つ壊すまでに一つの的を壊せばいい。それでも不満なら、的の継続使用を認めるわ」

「継続使用?」

「そう。あなたが負けたときは次の勝負でも同じ的を利用できる。さらに、私はたたき始めるまで少し……1分待ちましょう。これでどう?」


 あまりにもこちらに有利な条件が提示され続けて、クリスは少なからず困惑する。

 ただ単に自分の力を過信して、いるのか、そもそも勝つつもりがないのか……


「一応聞いておくけれど、私が勝った場合は何が得られるのかしら?」

「それは、この先に進む権利よ」

「じゃあ負けたときは?」

「そうね。私は慈悲深い方だから、素直に死んでもらおうかしら。私が本来使うはずだった勇者の剣で」


 勇者がにやりと笑ってクリスの姿を見る。


「わかったわ」

「そう。だったら、木刀を手に取りなさい。あなたが木刀を手にして、的をたたき出した時点でゲーム開始よ」


 こうして、少し異なる形ではあるが勇者と魔王の対決は幕を開けた。

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