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アニー帰還する

 アニーが調査に出てから一ヶ月。

 完璧主義者なメイド長とともに過ごしたこの期間は長いような短いようなと言ったもので、いろいろと礼儀作法が改善された……ような気がする。気がするだけで、おそらく専属メイドがアニーに戻った瞬間に元の自由奔放な生活に戻るのは眼に見えているのだが……


 ともかく、今日は待ちに待ったアニーが帰還する日だ。


 少女Xの騒動以降、厳しくなる一方の王宮の警備だが、クリスはそういったものをかいくぐってメイド長とともに王宮の入り口に立っていた。


「いよいよですね」

「えぇ。あの子はどのくらいビックになって帰ってくるかしら?」


 メイド長とそんな会話をしていると、遠くの方に小さな人影が見え始める。


「あれじゃないですか?」

「そうね。間違いないわ」


 クリスはその人影に向けて手を振る。

 すると、その人影も手を振り返しながら近づいてくる。


「アニー!」


 クリスが走り出す。

 それと同時に向こうの人物も走り出し、それはやがてアニーの姿になる。


「クリス様! 大変お待たせ致しました」


 再会するなり、アニーはクリスの前で深く頭を下げる。


「いいのよ。せっかくだから私の部屋へいらっしゃい。そして、いろいろと話をしてちょうだい」

「はい!」


 すぐ近くにメイド長がいるということもあって、二人は表向きの目的にあった話をし、そのまま王宮の中へと入っていく。


「アニー。明日からは仕事ですよ」

「はい」


 そんなアニーにメイド長も声をかけ、三人で談笑をしながらクリスの部屋へと向かった。




 *




 クリスの部屋に戻った後、クリスはメイド長に“二人きりで話がしたい”と言い、人払いを依頼する。

 メイド長もそのあたりについてはあまり意味は深く考えなかったようで、あっさりと了承し、そのまま部屋から出ていった。


「……それで? どうだった?」


 万が一にも外に人がいる可能性があるのでクリスは声を潜めてアニーに話しかける。


「そうですね。あの二人についていくつか不自然な点があることがわかりました」


 そこからアニーは調査結果の説明を始める。


 クリスはその報告を真摯に聞き、時々質問をする。

 アニーはアニーでよく調べているようで、その質問に的確に答え、またクリスが期待していた以上の答えを返す。


 それを一時間ほど続けた後にクリスは小さくため息をついた。


「……とりあえず、うまいこと人事省に探りを入れてみるのがいいかもしれないわね」


 一連の報告を聞いて、クリスが真っ先に調べるべきだと思ったのは二人が雇われた当時の採用担当者だ。

 少女Xもしくは勇者が協力者を内部に送り込む場合にその人物が確実に王宮内に入れるように手引きをするのは採用に関してある程度の権限がある人物とみて間違いないだろう。そうなると、不自然に速かった二人の採用も納得がいく。


「黒いローブの人物も気になるけれど、まずはどうやって探りを入れるかね……」


 もし、敵への協力者が一人や二人だった場合は問題ないのだが、仮にあの二人について問い合わせたときに人事省という組織自体が敵の手中に落ちていた場合が一番厄介だ。


 クリスがどこまで情報をつかんでいるかということを知られてしまうし、何よりもあの二人を怪しんでいるという事実が敵に知られてしまう可能性がある。


「……さて、どうしたものかしらね……」


 クリスは悩ましげな声を上げて、窓の外へと視線を送る。


「そうですね。こっそりと侵入というわけにもいかないでしょうし、仮にそこで証拠をつかんだとしてもこちらが不利になるのは明白ですからね」

「……そうね」


 クリスはアニーの言葉を聞いて今一度ため息をつき、小さくうなだれた。

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