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クリスの部屋に入れる人物(後編)

「……あの……私をおよびとのことだったのですけれど……」


 そんな一言とともに一人目のメイドが入ってきたのはメイド長が部屋を出てから実に十分後のことだ。

 そんなに早く来るとは思っていなかったクリスは紅茶を片手に持ったまま動きを止める。


「思ったよりも早く来たのね」

「偶然、隣で休憩中でしたので……それで、その……ご用件というのは?」

「あぁそこに座って。ちょっと、話が聞きたいだけだから」


 クリスがそうやってメイドに座るように促している間にアニーが彼女の背後に回って、扉の鍵を閉める。


「えっえぇと……これは……」


 そんなアニーの行動にメイドは少なからず動揺を見せる。当然だろう。部屋に招き入れられるなり退路をふさがれたのだ。動揺しない方がおかしい。


「大丈夫。安心して。あなたに危害を加えようっていうわけじゃないわ。だから、まずは座ってちょうだい」

「はっはぁ……」


 クリスに再度促されると、メイドは戸惑いながらも椅子に座る。


「さて、あなたを呼んだ用件だけれど……」


 そこからクリスは適当な理由をでっちあげて、メイドから部屋に入るのはどんな時かという内容で質問をしていく。もちろん、それだけを聞くと不自然なので主に担当している仕事についてや勤務に対する不満など怪しまれない程度にほかの質問を混ぜながら話を進めていく。


 それに対して、メイドの方は大して怪しむ様子もなく緊張しながら返答をする。


「なるほど。ありがとう。次の人を呼んで頂戴」

「はっはい」


 メイドは終始緊張したまま部屋を出る。

 そのメイドと入れ替わるようにして入ってきたのはクリスの部屋の周辺の敬語をしているという衛兵だ。


「今回、およびなのはどのようなご用件でしょうか?」

「あーえっとね」


 衛兵からの質問に対して、クリスは先ほどのメイドにしたようなのと同じような質問を彼にぶつける。


 それに対して、衛兵は挨拶の時と同様はきはきとした口調でしっかりと答えを返してきた。


「……なるほどね。ありがとう。次の人を呼んでみらえるかしら?」

「かしこまりました」


 一通りの話が終わると、衛兵はしっかりと頭を下げてから立ち去っていく。


 その後も、クリスは次から次へと話を聞いていき、すべてを聞き終わる頃にはすっかりも陽も暮れて夜になっていた。


「はぁ有力な手がかりはなしか……」


 それぞれの面々が行った証言をまとめた紙を見ながらクリスは深くため息をつく。


『でも、当初よりは人数は絞れたんじゃない?』

「そうね。話を聞いた10人のうち、8人は私が帰ったあとも部屋に入ったことがあると証言している」

『つまり、その8人について素性を調べて……』


 メイが8人の名前が記されたリストに手を伸ばそうとするが、クリスはそれを制す。(とはいえ、メイの体はクリスの手をすり抜けてしまうのだが……)


「いえ、調べるのは入っていないと証言した2人の方よ」

『どうして?』

「どうしても何も。私の部屋にあまりよろしくない目的をもって入ったのに素直に“入りました”っていうとは思えないからよ。まぁもちろん、私がそう思うと考えたか、それとはまた別の目的があって、部屋に出入りした理由も不自然でなければ話は別だけれど……」

『あぁそういう見方もあるのか……』


 クリスの推論にメイは素直に納得できたのか、はたまた納得したふりをしているのかわからないが、とりあえず一定の理解は得られたようだ。


「よし。それじゃ2人の素性を徹底的に調べるわよ。アニー」

「はい。かしこまりました。2名についてメイド長と衛兵長にデータの開示を要求してまいります」


 クリスの言葉だけでなんとなく話の流れを察したらしいアニーは深く頭を下げてから部屋から出ていった。


「さて、私たちは私たちで動きましょうか」


 そんな彼女の背中を見送ったクリスもまた立ち上がり、メイとともに部屋の外へと向かった。

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