表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
132/160

アンズの見解

 王立図書館の一角にある四人掛けのテーブル。

 それを囲むような形でクリス、アニー、アンズの姿があった。


「……なるほどね……でも、これだけだと何の魔法か特定するのは難しそうね」

「やっぱり?」

「こんな切れ端でわかるわけないじゃない。まぁ魔法陣であることは確かでしょうけれど」


 黒い紙を穴が開くほど見つめているアンズであるが、彼女をもってしても、これがなんの魔法かまでは特定できないらしい。


「せめて、どういう系統の魔法か推測がついたりはするの?」

「……そうね。今、これを見てわかることと言えば、あまりよろしくない魔法が使われているということかしら?」

「というと?」

「黒い紙を使った魔法陣だからよ。おそらく、何かしらの呪いをかけるようなものね。もしかしたら、体の入れ換えとかそういうものの可能性も否定できないわ。ただし、それをやろうとすると双方の体毛が必要だから、両勢力に今回の件で協力している人間かいる。ということになるけれどね」


 結果は予想以上に深刻だった。

 仮に両勢力の協力が必要な類いの魔法だったとすれば、それは魔王城側の人間も疑わなければ、ならなくなる。もっとも、先の戦いで生き残った魔族など皆無に等しいのだが……


 そんなことを考えながらクリスはアンズの顔を見る。


 そういえば、以前メイがアンズのある姿を目撃していた。


 確か“あの姫を闇に葬り去る”だのなんだの物騒なことを言っていたはずだ。あの時はすっかり、アンズが主犯なのかと思ってしまったのだが、マミのところで示された黒幕は勇者である。この矛盾はいったい何を意味しているのだろうか?


「ねぇアンズ。一つ聞きたいことがあるんだけど」

「何かしら?」

「前に私が監禁されていた時……あなた、王宮に来てた?」


 クリスの問いに対して、アンズは一瞬動きを止めてから口を開く。


「あぁあの時メイに見られていたものね……でも、私はあなたをどうこうするとは言っていないわよ」

「……どういうこと? でも、メイが聞いたのは姫を」

「それ以上は言わないでちょうだい」


 メイの言葉を伝えようとした瞬間、クリスの口はアンズの手によってふさがれた。


「いきなり何をするのよ」


 それが解かれると同時にクリスが文句を言うが、アンズは不機嫌そうな表情を浮かべて睨み返す。


「あなたこそ、ここがどこかわかっているの? 私を殺す気?」


 そこまで言われて、ようやくクリスは自分の発言の危うさに気が付いた。


 ここは王立図書館だ。このような場所でアンズが姫を闇に葬るといっていたなどといえば、アンズはおろかクリスたちも拘束され、最悪処刑されるなんてこともあり得る。


「全く……あなたって昔っからそういうところあるわよね。思ったことをすぐ口に出すというか……それでいて、余分な仕事が増えて、ぼやくまでがお決まりの流れになっていたわね」

「あーそうね……王宮に来てからもそんな感じだし……」

「そうみたいね」


 そこまで言うと、アンズは先ほどとは打って変わってくすくすと笑い声をあげ始める。


「まぁとりあえず、この魔法陣についてはできる限り、調査してみるわ。あと、間違っても私はあなたの敵に回ったりはしないわ。むしろ、あなたの味方よ」


 しばらく笑い声をあげていた彼女はそれだけ言い残して、立ち上がってその場を離れる。


 その手にはしっかりと例の切れ端があった。


『……ねぇあのまま渡してもよかったのかな? あの紙切れ』

「さぁね。でも、私は彼女の言葉を信用するわ。あなたが聞いた言葉の意味が気になってしょうがないけれど……」


 その言葉のあと、クリスも立ち上がり王立図書館の外を目指して歩き出す。


 それから少し遅れるような形でアニーとメイも移動を始める。


「次はどうしますか?」

「使用人をあたるわ。まずはメイド長から私の部屋に入る可能性がある人物を何人か調べてもらいましょう」

「かしこまりました」


 そのような会話を交わしながら三人は使用人の休憩室へと向かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ