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城での作戦会議

 城に戻ったクリスはさっそく作戦会議……というわけにもいかず、メイド長から長々と説教を受けていた。

 要約すれば、そうポンポンと城を抜けられては困るという内容なのだが、対外的にちゃんと叱ったというイメージを付けるためのアピールに近いものとみて間違いないだろう。


 現に内容はどことなくフワフワとしていて、一般論的なことを並べただけだからだ。実際問題、メイド長はクリスの脱走を見逃してくれているわけだから、こういったところに落ち着くのはおかしくはないだろう。


「……というわけですから、今度からはこういうことはしないでくださいね」


 形だけとはいえ、実に一時間に及ぶ説教が終わる頃にはクリスもアニーもすっかりとくたくたになっていて、少しふらつきながら部屋へと戻ろうとする。


「あぁそれと……」


 しかし、メイド長から声がかかったため、二人は歩みを止た。何事かと思い振り向いてみると、メイド長は二人に近づいて耳元へと顔を寄せた。


「外に出て収穫はありましたか?」

「ある程度は」

「そうですか。それはよかったです」


 短い会話を終えた後、メイド長は何事もなかったかのようにその場から立ち去っていく。


「なんとかなったわね……」


 そんなメイド長の背中を見送りながらクリスは深くため息をつく。

 いくらメイド長が相手とはいえど、確固たる証拠もなしに犯人は勇者だ。みたいな話をするわけにはいかない。普通に考えれば、信じられない話である上にその情報をどのようにして手に入れたか説明する必要が生じるからだ。


「それでは部屋に戻りましょうか」

「そうね。部屋に戻って作戦会議をしましょう」


 そんな会話を交わした後、クリスとアニーは部屋へと向かった。




 *




 王宮の中にあるクリスの部屋。

 しっかりと人払いをした上で、厳重に閉じられた扉の向こうにあるその部屋は重い空気に包まれていた。


「それにしても、困りましたね。相手は勇者ですよ」


 そんな中、最初に口を開いたのはアニーだ。


「たしかにそうね。相手は勇者。表向きには国を救った英雄だもの。そう簡単に糾弾できるものではないわ」

『まぁ相応の証拠は必要になるでしょうね』


 それに続くような形でクリスとメイも口を開く。


「まずは証拠集めでしょうけれど……どうやって集めたものかしらね。いっそのこと、勇者に接触してみようかしら?」

「それはやめた方がいいかと。相手に感ずかれる可能性があります」

「まぁそうか。あれほど計画を練っていたら、接触は危険かしら……いや、でも手はないことはないと思うけれど」

「姫として救出のお礼ですか? おそらく、勇者の姉が出てきますよ」


 アニーの言うことはもっともかもしれない。

 実際に姫を救出した(ことになっている)のは彼女である以上、その方が自然だからだ。仮に勇者本人が出てきた場合、こちらとしては勇者じゃないと彼を糾弾することすら可能になってしまう。


 そう考えると、呼んだところで出てくるのは勇者の姉であることはほぼ確定だろう。

 そうなると、アニーとメイドに扮したクリスで王宮内で勇者についての情報を探ると言うのもありかもしれない。しかし、それはそれでリスクがあるように感じてしまう。


「あのー」

「なに?」


 長い間うつむいて考え込んでいたから心配されてしまったのか、目の前に座るアニーから声がかかる。


「あのですね。勇者のことを知ってそうな人に心当たりが……」

「それ、ほんと?」

「はい。実はメイドの中に勇者が城から発つまでの間、勇者の世話を担当していた者がいまして彼女なら勇者の人となりぐらいは把握してるかと……」

「なるほどね。ありがとう。早速向かいましょう」


 クリスは椅子から勢いよく立ち上がり、アニーの手を引いて部屋を出る。


「とりあえず、使用人の休憩室に行きましょうか」

「はい。それがいいかと」


 その会話のあと、クリスはアニーの手を引いたまま使用人の休憩室に向けて歩き出す。


『ちょっと、待って! 置いてかないで!』


 それから、少し遅れるような形でメイも部屋を出て使用人の休憩室へと向かった。

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