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聞き込み調査

 マミの工房を出たクリスたちは勇者が黒幕であるという証拠を探すために勇者について調べることにした。といっても、やれることは聞き込みぐらいで、時間も限られていることから、もしかしたらあの事実を裏付ける……もしくは否定する何か証言があるのではないかという希望もはっきり言って持っていない。


 しかし、だからといって何も行動せずにおとなしく城に帰るのはクリスの中の何かが許さなかった。だからこそ、少しでも行動を起こそうと考えた結果がこの聞き込み調査だ。


 ただ、その結果ははっきり言ってボロボロだ。


 町の人たちの中で有名なのは勇者の姉の方であり、肝心の勇者について知っている人間はとてつもなく少ない。さらに言えば、その人となりを知っている人といえば皆無だ。

 勇者の姉に直接聞くという方法もなくはないのだが、それについては勇者当人に伝わってしまう可能性があるため、なるべく避けたい方法だ。


『それにしても、情報がないわね』

「こればっかりは焦っても結果は出ないでしょうし……地道にいくしかないわね」


 今、手分けをして情報収集をしているため、この場にいるのはクリスとメイの二人だけだ。


 アニーが少しでも有力な情報を得ていればと思うのだが、おそらくあちらも似たような状況だろう。


「あぁすみません」


 それでも、クリスは周りの人に話しかける。

 商店の店先に立っている人、買い物をしている客、町で走り回っている子供たち……


 誰に聞いても有力な情報は得られない。むしろ、遠ざかっていくような気配すら感じる。


「……こう考えてみると、何者なのかしらね。勇者って……」

『あまりにも謎が多いわね。というよりも、勇者の姉は知っていても勇者本人を知らないっていうのはいくら何でも不自然な気もするわ?』

「誰か……というか、勇者本人がそうなるように何かしら施している可能性があると?」

『それは捨てきれないんじゃないかしら?』


 確かにここまで関与の可能性をまったくにおわせてこなかった勇者だ。仮に彼が主犯だとすると相当巧妙に事実の隠蔽を図っているに違いない。

 そうなると、このような聞き込み調査で情報が得られるとは考えにくいという結論に達してしまう。


「……仕方ないわね。いったん、城に戻って方策を考えましょうか」


 できればもっと長い間、聞き込みを続けて情報を集めたいところだったが、現状ではそれが無駄になりそうだ。

 そう判断したクリスはどこかで聞き込みをしているであろうアニーと合流するためにあらかじめ決めておいた集合場所へと向かう。


「聞き込みは完全な空振りか……」

『誰も勇者について知らないっていうことが分かっただけでも収穫だと思いましょう。そうじゃないと、心が折れそうだから』

「それもそうね」


 二人でそんな会話を交わしているうちにクリスたちは集合場所になっている広場にたどり着く。

 広場ではすでにアニーが待機していて、二人の姿を確認するなりぺこりと頭を下げた。


「……アニー。そちらでの収穫はあった?」


 クリスが尋ねると、ある種の予想通り彼女は首を横に振る。


「申し訳ございません。何も得られませんでした」

「……あぁまぁそれはこっちも同様だから……そろそろ、おとなしく帰りましょうか」

「帰るのですか?」

「そう。いったん帰って、体勢を立て直そうかなって……このままだらだらやっていても結論にはたどり着かなそうだし……」


 クリスの意見に対して、アニーは納得したのかしていないのか、あいまいな笑みを浮かべて頭を下げる。


「かしこまりました。それではお城へと戻りましょうか」

「えぇ。そうしましょう」


 彼女がどうしてあいまいな笑みを浮かべているのかわからないが、城に帰ることに同意してもらっているのなら問題ないだろう。


 そう判断したクリスは城に向けて歩き出す。


 アニーとメイはそれから少し遅れるような形で城へ向けて移動し始めた。

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