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映し出されたものとは

 工房の地下にある隠し部屋。

 そこの奥までやってきたクリスとメイは目の前の画面をじっと見つめる。


 ブオンというやや鈍い音がした後にぼんやりとどこかの部屋が映し出される。


「これは?」

「あなたが王宮内で監禁されていた時の映像ね……適当に近くの部屋に焦点を合わせてみてるんだけど、うまくいったら誰か映るんじゃないかしら……と、誰か来たみたいよ」


 マミの言葉通り、部屋の入り口の扉が開き黒いローブをかぶった人間が入って来る。


「……あれが黒幕?」

「設定があっていればね……黒幕のはずだけど……」


 肝心の顔が見えない。

 そう言いかけたとき、その人物はローブを取り払い、その姿を現した。


「……これって……勇者の……姉のほう?」


 その人物を見たクリスがぽつりとつぶやく。


「いや、たぶん弟の方ね……」


 しかし、マミはあっさりとその正体が弟の方……つまり、本物の勇者であると見抜く。


 だが、クリスにはどう頑張ってみても自分が実際に戦った勇者の姉にしか見えない。


「どうして弟の方だってわかるの?」

「……なんとなくよ。しぐさとか顔つきとか……あの子の姉はいつも自信に満ち溢れていてこんな表情をしないわ」


 指摘されて改めてみてみると、確かに画面の中に映っている勇者の表情はどこか自信なさげでおどおどしている。

 そんな会話の後、クリスたちが画面に視線を戻すと、画面の中の彼は何やら手紙を書いていた。


「ねぇあの手紙って拡大できる?」

「できるわよ。ちょっと待ってて」


 マミが何やら操作をすると、勇者の手元の手紙が拡大される。


「えーと……例の計画については首尾の通りに……って書いてあるみたいだけど……」

「例の計画っていうのはあなたの暗殺計画かしらね?」

「そうだとしても、どうして勇者が? だって、魔王を倒す自信がなくて姉にとって代わられたぐらいなのに……」


 状況だけ見れば、勇者が今回の件に一枚かんでいるのかもしれないが、どうにも納得できない。


「本当に勇者なのかしら……聞いてた話通りの性格だとしたらこんなことしなさそうだけど……」

「いや、でも裏の顔って言うことはあり得るかもしれないわよ。ほら、よく表向きはいいことやってるけれど、裏では……みたいなことがあるじゃない」


 確かに表向きの顔がそのままその人の性格とは限らない。

 しかし、だからといってひ弱で姉にとってかわられるような人物が実は黒幕だったなどということがあるのだろうか?

 そうなると、勇者の姉を脅していたのも魔王と姫の体を入れ替えたのもすべて彼の仕業だったという可能性すら出てくる。


 そんなことなど本当にあるのだろうか?


 そんなことをして、彼にどのような利点があるのだろうか?


「いずれにしても、勇者について調べた方がよさそうね。この情報が正確かどうかの見極めもそうだけど、この映像だけでは決定的な証拠にはならないわ。せめて、犯人である証拠ぐらいはつかまないと……」


 クリスがそういう頃には映像はゆっくりとぼやけ、そのまま消えていく。どうやら、必要な情報は示されたようだ。


「それじゃ帰りましょうか」


 映像を見て、満足したのか、もしくはこの場から早く立ち去りたいのかマミがそういいだした。


「えぇ。これ以上ここにいても仕方ないし、行きましょう」


 クリスとしてはもう少しこの場にいたいような気もしたが、何かがあるというわけでもないのでそれに素直に従うことにした。

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