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マミの証言(後編)

「……これが私の知っていることの顛末。クリスが王女だって知ったのはずっと後だったから、しばらくの間は都合がつかなくなったのかという程度で考えていたの……まぁあなた達が知りたいのはその先なのでしょうけれど……」


 一通り話を終えたマミはじっとクリスの姿を見据える。

 そして、どこか申し訳なさそうな表情を浮かべているその姿を見て、小さく息を吐いた。


「……そういう表情ができるなら大丈夫そうね……クリスをさらったこと、少なからず気にしているみたいだし」


 言いながらマミは立ち上がり、クリスの方へ向けて手招きする。


「……ついてきて頂戴。案内してあげるわ」

「わかったわ」


 クリスはそれに答えてから立ち上がり、マミの背中を追いかけ始める。

 その時、クリスはアニーの方をちらりと見たのだが、彼女はここに残るという意思を表明するかのように首を小さく横に振ったので彼女を残してクリスは工房の奥へと歩みを進める。


「……実はこの工房、どういうわけか隠し扉とかそういった類のギミックが多いのよ。もともとこの建物を建てた人がそういうのが好きだったとか、裏で何かをしていて隠れ家にしていたとかいろいろ言われているのだけど……とこれね」


 マミはしばらく壁を探るような動作を見せたあと、棚と棚の間にあるレンガを押す。

 すると、ゴーという大きな音と共に壁がゆっくりと横に向かって開いた。


「すごいわね……」

「えぇ。始めにこれを知ったとき、私も驚いたわ」


 完全に扉が開き切ってからマミは扉の向こうにある階段を降り始める。

 それに続くような形でクリスもそれに同行するメイも階段を降り始める。


 地下へと続く階段はまるで地の底の底に続いているのではないかと思わせるほど真っ暗で先が見えない。


 そんな不気味な階段をマミは手元のロウソクの灯り一つで降りていく。


『ねぇクリス。マミに“私がさらわれるまで姫だって知らなかって本当? 気づいているものだと思っていたわ”って伝えて』


 頭上に浮かんでいるメイに言われ、クリスはその言葉をそのままマミに伝える。

 それに対してマミはいったん立ち止まってから振り返り、クリスの頭上に視線を移した。


「……それに関しては本当よ。正直、私はあんまりクリスの正体とかについて考えていなかったもの。あなたがそういうっていうことは調べればわかるようなことだったのかもしれないけれど」


 それだけ言うと、マミは再び前を向き階段を降り始める。


 カツカツと石の段を靴がたたく音を聞きながら、クリスはこの先には何があるのだろうと思いをはせる。


 おそらく、この話の中でここに案内されたということは、一連の事件に関する何かがあるのはほぼ間違いないだろうが、それが何であるかまでは到底わからない。


「……ねぇどこまで続いているの? この階段」

「そうね。まだ半分も行っていないとだけ答えておくわ」


 階段を降り始めてから十分は経ったように思えるが、まだ半分にも到達していないのか……


 クリスはまだまだ続くという長大な階段を想像して、思わずため息をつく。


「……そういったことに関しては私じゃなくて、これを作った人に行ってちょうだい。まぁすでにこの世にいないけど」


 マミのその言葉を最後に再び暗い空間には足音のみが状況へと戻る。


 三人は暗い階段をどこまでも降りていった。

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